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日本が「衰退途上国」の道から脱却するために優先すべき“4つの産業”

衰退途上国への道を辿る一方だった日本ですが、ここに来てようやくこれまでの過ちを認識し、方向転換の舵を切る準備が整ったようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、先日経産省が発表した成長戦略を「国家指導の産業政策」として高く評価。さらに日本の置かれた状況を抜け出すためには国家の全体戦略を立てることが重要として、優先すべき4つの産業を挙げています。

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日本は米国同様の統制経済・国家資本主義へ

日本も米国同様な統制経済・国家資本主義になったようである。経産省の発表した成長戦略が、国家指導の産業政策で、まるで昔の通産省の政策になっている。今後を検討する。

6月20日までの緊急事態宣言は、北海道、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡、沖縄も含めると10都道府県。6月20日までのまん延防止等重点措置延長は、埼玉、千葉、神奈川、岐阜、三重。このうち、沖縄の感染拡大が継続している。あとは減少方向になってきた。

そして、ワクチン接種は、現状では1日80万回以上の接種で、着実に6月中旬には1日100万回になるだろう。五輪も順調に開催できると思われていたが、尾身会長が、五輪について「今の状況でやるのは普通はない」と断言した。開催するなら最小の規模で行うべきであるとした。

今、菅政権は、五輪を開催したという実績が必要であり、規模は関係ないし、1日接種100万回という実績ができればよいので、ここは尾身会長の言葉を尊重して、無観客で最小化して開催して、五輪後の感染者数拡大を避けたほうが良いと思う。

それと、ワクチンの大量輸出をEUがなぜ許可したかという理由を菅首相は述べていないが、EUが日本に輸出量の6割を割いた理由は五輪開催に資するためである。EU自体もワクチンが足りない中、大量輸出したのは、IOCの助力があったことを述べるべきである。

恐らく、65歳以上へのワクチン接種が終われば、死者数は劇的に減るはずだ。ワクチンが手に入り、接種が順調のためであるが、EUの大量輸出に感謝するしかない。

しかし、五輪後感染者数が増加すると、選挙で負ける可能性が出る。選挙が近いので、後ろ指を刺される政策はしないほうが良い。特に影響力のある尾身会長の意見を聞かないで、そうなったとなれば、致命傷にもなりかねない。

ここは安全サイドで行動したほうが良いだろう。あと少しで正常化することは見えている。その後に経済活性化政策をすればよいからだ。

この頃の菅首相の行動は、安倍前首相の意見を聞き、その意見をもとに政策運営をしているので、院政に戻った感じになっている。

その基本は、経済より命を大切にして、国民の不安を無くして、その上で、経済を活性化させることであるが、その優先順位を菅首相も理解し始めたことが大きい。

菅首相は気持ちが顔に出る。その顔は自信を取り戻してきた。やっと、菅首相の良さが出てきた感じになっている。菅首相は自分の考えをごり押しすることで、周りが動くタイプのリーダーであり、安部前首相は、皆の意見を聞いて、それを選択するというタイプのリーダーであった。

この2つのタイプのリーダーの相互尊重で、政策が回ることが一番良いが、やっと、菅政権でその形ができ始めている。菅首相は自分の意見に反対する人に怒るが、その反対を利用することも考えたほうが良い。

菅首相とそれを応援する安部前首相・麻生財務相という組み合わせが当分よいはず。そして、2024年再度トランプ大統領になったら、安倍さんの首相復帰が一番、日本にとってよい。

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経産省の「経済産業政策の新機軸~新たな産業政策への挑戦~」は、このコラムで主張していた産業政策を行う方向であり、2012年に主張していた金融緩和で資金を作り、その金で産業政策を行うべきであるとした提言をやっと実行するようだ。

黒田日銀の金融緩和は良かったが、アベノミクスの成長戦略は、ほとんど機能しなかった。それは安倍首相が各省庁の意見を入れてしまい優先順位がはっきりしなったことによる。

この点、梶山経産相は、日本の衰退が企業競争力の衰退で起きていることを認識していることが大きい。菅政権で梶山さんを経産省のトップにしたことは成功だと思う。

国家が中心に新機軸を立てて、それに民間資本も集めて産業力を強化することになるという。昔の通産省のように国が主導することになる。民間だけでは、国内競争で疲弊してしまい、国際的な競争力を失うことを経産省もやっと理解したようである。

そして、大きいのが、そのような国家主導経済を米国も実施することで米国から非難されないで、実行できることである。

政府による市場の創造で、政府もリスクを負う「起業家国家」、クラウド・インなどの理念のもとに、意欲的な目標設定、産官学連携、規制・制度見直し、国際標準化推進、民間資金の誘導、国際連携等、イノベーティブな社会環境の整備に向けて政策ツールを総動員すると宣言している。

そして、財政出動で大規模・長期・計画的というからすごい。

その1つとして、半導体分野の自給を目指して、資金を入れることになる。

もう一度、日本の置かれた状態を見ると、衰退途上国の道を歩んでいる。人口も減少して、最先端産業の企業力も弱り、徐々に日本の企業が劣後になっている。

この状態を抜けるためには、国家の全体戦略を立てて、優先順位を決めていくしかない。

国の安全保障上では、

  1. エネルギー確保
  2. 食糧確保
  3. 資源確保
  4. デジタル化:世界から遅れている

で、この4つの産業優先順位が高い。特に半導体はIT化・AI化・制御化で、その重要な装置に必要で、重要な資源である。人口減少社会では、納税者が減り、行政の効率化が必要になる。そのテーマの中心がデジタル総合政府の構築になる。

4つのうち、産業規模では、エネルギー産業が一番大きい。このエネルギー産業は転換点に来ている。脱炭素経済に移行するために、早急に確立することが必要な産業である。

日本では、太陽光発電・風力発電・地熱発電・水力発電の4つで、行くしかない。

そして、太陽光発電のパネルを奈良県の面積分置ければ、日本の今の家庭用総電力を賄えることはわかっている。しかし、夜の時間帯に使用する分は、電池にためる必要がある。そのため、総コストが大きくなる。このため、分散した家単位で電気の自給が焦点になる。

それと、自動車がEVになるために、そのガソリン分の電気は見込んでいないことと、工場分、交通分の電気が必要になる。この分の電気を豪州の砂漠で発電して、日本に水素の形で持ってくることになる。

水素をアンモニアなどに加工して持ってくる方が輸送コストが安いので、そのような仕組みも作る必要がある。この全体系を国が主導するべきである。

後の2つについては、次回で述べる。次回は植生文明の時代が来るという私の構想を再度説明する。

さあ、どうなりますか?

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image by: yoshi0511 / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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