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徹底した媚中ぶり。国益ガン無視の二階幹事長が潰した中国非難決議

以前掲載の「親中どころか媚中。米国も警戒する二階幹事長に握られた日本の命運」でもお伝えしたとおり、そのあまりの中国との距離の近さゆえ、米国から名指しで警戒されているという自民党の二階俊博幹事長。そんな二階氏が、与野党合意済みの中国非難決議を葬り去った「暴挙」が物議を醸しています。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、国会が人権侵害非難さえできない日本は、中国にますますつけ込まれると強く批判。さらにこの二階氏の行動を、G7の共同歩調に逆行するようなふるまいであると指弾しています。

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与野党合意したはずの中国非難決議を葬った二階幹事長

「ものすごい人数が収容所で洗脳、拷問などの人格を破壊するような扱いを受け、何百万人もが強大な監視機関におびえながら暮らしている」(BBCニュースより)

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはこのほど、中国政府がウイグル族やカザフ族などイスラム教徒の少数民族に対し、集団拘束や監視、拷問をしていたと主張する報告書をまとめ、国連に調査を要求した。

いかに中国の巨大マーケットで自国の企業が稼いでいようと、各国政府は、もはや、中国のふるまいを見過ごしてはならない。

6月13日に閉幕したG7サミットにおける共同宣言で、各国首脳は以下のごとく、この問題に言及した。

「中国に対し、特に新疆との関係における人権及び基本的自由の尊重、また、英中共同声明及び香港基本法に明記された香港における人権、自由及び高度の自治の尊重を求める」

新疆ウイグル自治区などの少数民族や香港の民主活動家に対する、習近平政権の人権弾圧をやめるよう、強く求めた内容だ。ドイツやイタリアなど経済の中国依存度が高い国も、米国に同調した。G7の足並みが乱れるのを期待していた中国政府は「中国を中傷し、内政に干渉するものだ」と反発した。

一方、6月16日に閉会した日本の国会では、ウイグル、チベット両自治区などでの人権侵害を非難する決議案の採択が見送られた。自民党、立憲民主党、国民民主党の政調会長レベルで合意したのに、最終段階で、自民党の二階幹事長が文案にOKを出さず、幻の決議案となったのだ。

立民の泉健太政調会長は「与党の皆さまは責任を持って、この国会で手続きをやっていただくことを強く求めたい」と述べていた。

そもそも、この決議は自民党の有志が昨年11月に議連をつくり準備を進めてきたものだ。その後、賛同する野党議員が加わって超党派議連となった。立民や国民は6月10日に、維新は9日に、決議案の党内了承手続きを終えたのに、自民、公明両党では難航をきわめた。

二階幹事長と、その「懐刀」と言われる林幹雄幹事長代理は誰もが知る親中派。公明党は、創価学会の池田大作名誉会長と故周恩来氏の仲から続く中国との友好関係をなにより大切にしているという。いずれも、習近平国家主席の怒りを買うようなことはしたくないのだ。

国際外交舞台では菅首相が中国の人権問題を盛り込んだ共同宣言にサインし、国内では与党の幹事長が人権侵害非難決議を反故にする。個人的心情も絡んだこの種の政策のブレは、日本の政治の信頼性を損なう。なにより、厳しい対中国姿勢を強める米国から見て、不透明、不合理と映るだろう。いずれ日米間の大きな問題になりかねない。

ただ、中国の巨大マーケットに依存する日本企業の経営者のなかには、二階氏が決議案を握りつぶしたことに、ひとまず胸をなでおろしている人も、さぞかし多いだろう。

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日本は、G7諸国の中で唯一、中国への制裁措置に参加していない。中国政府の報復を恐れる経済界に配慮しているからだ。

二階氏がなぜ中国と親しい関係を築いてきたかというと、中国との経済関係を重視する自民党支持者が多いからにほかならない。

企業からごっそり献金を集める自民党の親玉が、「日中に春を」と再三にわたって中国を訪問し、習近平主席らお歴々の大歓迎を受ける。二階訪中使節団に参加する経営者は、その人脈に驚き、ひざまずく。日本の経済界は、いつまでも中国にもたれかかり、言いなりになっていて、いいのだろうか。

企業は中国進出するなら技術移転を覚悟せねばならなかった。技術を守ろうと思えば、中国市場をあきらめるほかない。厳しい要求に屈し、数多くの企業が撤退するなか、莫大な利益を手にした一部の日本企業は中国抜きに事業が成り立たなくなり、経済大国として自信をつけた中国政府の言いなりになる体質が出来上がった。国会が人権侵害非難さえできないようでは、ますますつけ込まれるだろう。

経済の脱中国依存という面で、近頃、政府がやったことといえば、工場の日本国内回帰を支援する政策くらいなものだが、それとて効き目はない。

昨年4月、中国などの海外生産拠点を国内に回帰させる企業に補助金(予算規模2,200億円)を給付するという募集をした。1,700件をこえる応募があったが、政府の目的通り中国から撤退した企業はほとんどなく、大部分は補助金を中国での事業展開のために使ったという。募集条件等に抜け道があったのだろうが、日本政府の本気度にも疑問が残る。

同じようなジレンマはEU諸国も抱えている。中国は米国を抜いてEUの最大の貿易相手国となっている。対中依存がとくに著しいのがドイツの自動車産業だ。ベンツSクラスを買う中国の富裕層が増え、コロナ禍で国内消費が落ち込んだドイツ経済を下支えしている。イタリアはそもそも「一帯一路」の加盟国である。

しかし、日本と違ってEUの対中姿勢には変化の兆しが見られる。中国との投資協定を凍結したのが、その一つだ。

もちろん、背景にはアメリカの動きがある。トランプ政権のマイク・ポンペオ国務長官が中国共産党のウイグル弾圧を「ジェノサイド」(集団虐殺)と非難し、バイデン政権のアントニー・ブリンケン国務長官も同じ見方を受け継いだ。

そして、EUは今年3月、米、英、カナダとともに中国共産党当局者らへの制裁を発動したのだが、中国政府が報復措置として実施した対EU制裁があまりに厳しかったため、EU議会が激しく反発した。

そのため、昨年末にEUと中国の間で投資協定が大筋合意したのに、EU議会における審議が停止されてしまった。

中国で事業をするには、合弁会社を設立したり、技術移転をしたりしなければならない。この協定は、そんな制約を解除するなど、EUに有利な内容になっている。それを凍結してまでも、EUは中国を非難する姿勢を示したのだ。

中国にとって予想外の事態だった。慌てた習近平主席の発言が以下のように伝えられている。

国営新華社通信によると、習氏は先月末の共産党の会議で、対外情報発信の強化を図るよう訴えた。習氏は「自信を示すだけでなく謙虚で、信頼され、愛され、尊敬される中国のイメージづくりに努力しなければいけない」と語った。(中略)近年の中国外交は批判に対して攻撃的に反論し、「戦狼外交」という呼称が定着した。戦狼外交は国内で支持を得ているが国際的には反中感情を高めた。習氏はこの状況の打開を狙っているもようだ。

戦狼外交がそう簡単に引っ込むとは思えないが、こと中国に対しては、少々強気に出たほうが効果がありそうだ。

それにつけても、日本は中国にいいように振り回されているような気がしてならない。

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「中国のハワイ」と呼ばれるリゾート、海南島。コロナ禍で海外旅行が制限されるなか、巨大免税店モールのあるこの地に人々が集まっている。中国人が中国国内で免税ショッピングを楽しめる「離島免税」政策が、一気にブレークしているのだ。

モルガン・スタンレーは、21年からの3年間で、これまで海外に流れていた中国人の買い物額のうち、毎年約1,000億ドル(約10兆9,000億円)が中国国内に還流されると予測しているという。

日本の免税品扱い企業も海南島に進出し、国内売上の落ち込みを埋めているが、逆に言うなら、ポストコロナのインバウンド需要は回復どころか、衰退が懸念され、ますます中国依存が強まりそうな気配である。

いまや日本企業も中国との関係を見直さざるをえなくなっている。西側諸国と歩調を合わせるべきか、それとも中国共産党を必要以上に刺激しない従来の方策をとり続けるのか。

政府がそれをはっきりさせなければ、中国依存度が高まる一方になり、挙句の果てに米国市場を失う恐れすらある。「ユニクロ」の綿製シャツが、新疆ウイグル自治区の強制労働をめぐる輸入禁止措置に違反したとして、米当局に輸入を差し止められたのはその象徴的事例た。

従来の対中政策をとり続けるうえでは、二階幹事長の果たす役割は大きかった。だが、将来を見渡したとき、人権侵害非難決議案を握りつぶすなど、G7の共同歩調に逆行するようなふるまいは、果たして国益にかなうのであろうか。政治家も企業の経営者も、中国への向き合い方について、長期的視野で再考するべきではないか。

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