辛坊治郎氏が“死と隣り合わせ”の70日間ヨット航海で悟った「真の孤独とは何か?」

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ヨットでの太平洋単独横断に挑戦し、無事にゴールすることができたジャーナリストの辛坊治郎さん(65)。日本へ向けて再び「Kaorin V(カオリンファイブ)」に乗船し、アメリカ・サンディエゴを出航しました。そんな辛坊さんが自身のメルマガ『辛坊治郎メールマガジン』の中で70日間の長旅の中で悟った「孤独論」について紹介。一人旅を経験した後だからこそ語れる深いメッセージです。

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日本へ向けサンディエゴから出航

暇人S
先週号でお伝えしたように、無事辛坊さんサンディエゴに到着、6日間の停泊を経て、現地時間22日早朝6時、再び日本に向け出航いたしました。

その短い停泊期間で、日本から来た私と「Kaorin V」のクルーメンバーでもある鍋谷氏、オレゴン州ポートランドからわざわざ来られた古野電気の関根氏、さらにはサンディエゴの皆様の協力で全ての修復作業を終え、日本出航時とほぼ同じ状態で、旅立ちました。

おかげさまで、「思い出のアノ番組」の原稿、無事手に入れました。ただ少々不安もあります。その辺りは後ほどお伝えするとして、まずは、新連載からお楽しみください。

新連載 65老年漂流記

太平洋横断を終えて、サンディエゴにいる時、よく「二か月間も(本当は69日)一人きりで寂しくなかったですか?孤独じゃなかったですか?孤独をどう紛らしたのですか?」と聞かれた。

聞く気持ちは分かる。

確かに日本で普通に社会生活を送っていて、二か月間も誰とも人に会わずに過ごすなんてあり得ない。引きこもりの青年だって、食事の際やトイレの際に家族と遭遇する事くらいあるだろう。

私の場合、太平洋の真ん中にいる間は、「半径数百キロ以内に人間は私一人」という状況が何日も続いたわけで、それが人間社会ではあり得ない事だというのは確かだ。

しかし、孤独は一人でいて感じるものではない。

二人でいる時、「目の前のこの人は、私といて楽しいんだろうか?気をつかって、話を合わせてくれているだけではないか?」なんて感じ始めると、とても孤独になる。

三人でいる時、自分以外の二人が楽しそうにお喋りしているのを見ると、「俺は邪魔なんじゃないか」と思う。

たとえ百人のパーティーに参加していても、ざわめきや笑い顔で埋め尽くされる会場の壁際で一人でワイングラスを持って立っていると、いたたまれない淋しさに包まれることがある。

これに比べて一人でいることは決して孤独ではない。

多くの引きこもりの人々は、世間や家族の目線とは裏腹に、一人で部屋にいる時が一番孤独で無いのだと思う。

船内の私も同じだ。半径数百キロ、もしかすると数千キロの範囲内に私しかいないとしても、私は少しも孤独ではなかった。

むしろ、これほど人の存在を身近に感じたことは人生でかつて一度もなかったのでは?と思うほどの豊饒な時間だった。

船内で一人でいる時、常に「ここで死ぬわけにいかない。それは大切な人々に取り返しのつかない傷を与えることになる。」そう考えていた。

安全に船を目的地に付け、大切な人々に健康で元気な姿を見せて声を聴かせることが船の中にいる私の最大の目的であった。私は今までの人生の中で、これほど濃密に自分以外の人々の事を考えた事が無かった。

風速毎秒30メートル以上の暴風がうなりを上げ、船内のあらゆるものが空中を飛び交うほどの揺れの中で、私は大切な人の事をずっと考え続けていた。一人でいることは孤独ではないのだ。

以下次号。

辛坊さん_0625

暇人S

以上全て原文のままです。お気づきですよね。いつもと文体が違う。。

これは本人の弁ですが、航海中、サン・テングジュペリの「人間の大地」を三回も読んだため、文体が頭から離れなくなり、自分の文体に戻せなくなったとのことです。

さらに、「以下次号」とありますが、船の修理に忙しく、この先の原稿は出航した22日の時点で辛坊さん全く手をつけていません。

随時、衛星電話で連絡を取り合いますが、さて、次号はどうなるのでしょうか?

(この記事はメルマガ『辛坊治郎メールマガジン』2021年6月25日配信分の一部抜粋です。続きはご購読の上、お楽しみください)

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image by: 辛坊氏提供

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