先日掲載の「驚くほどの人口減。『橋下維新』が破壊した大阪から逃げ出す人々」では、大阪の人口を減少に転じさせた橋下徹氏の「失政」を暴いた、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。大村さんは今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、同記事に維新支持者と思しき方々から寄せられた「反論」を、データを提示し完全論破。その上で、医療や教育などの行政サービスを大幅に低下させた「橋下維新」を強く批判しています。
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※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2021年7月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
今の大阪では子供を産めない!
前回、筆者は大阪は東京に次ぐ経済圏なのに、橋下氏が知事になって以降、人口が減っているということを述べました。この記事はネットニュースで配信されたくさんの方にリツィートされました。
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が、維新の会の支持者と思しき方々から猛烈な反発も受けました。「こいつのいうことはデマだ」とのことです。そしてご丁寧にも、この記事の発信元のまぐまぐにまで抗議が寄せられました。私としてもこれは捨ておくことができません。
なので、今回、この10年で大阪は本当に人口が減っているのか?どういう人たちがどういう形で減っているのか?をデータで明らかにしたいと思います。
筆者が前回述べたのは次のようなことでした。
- 橋下氏が知事について以来「10年の間」大阪は人口が減り続けていること
- それは東京、愛知、福岡などには見られない現象であること
- 大阪は橋下府政以降、急激に高齢化しており、これもほかの大都市には見られないこと
- 若年層が大量に大阪から脱出していることが考えられること
これに対して、維新の支持者さんたちの反論の根拠は次の
ようなことです。
- 2020年は大阪府は人口が増えている
- 大阪の人口減は少子高齢化によるものだった
しかし、2020年だけを切り取ってこの10年の流れを無視するのは意味がありません。筆者は橋下氏が知事になって以降の十数年の話をしているのです。特に2020年は、新型コロナにより人の流れが停滞していており、人口動態が通常とは異常な数値になっていました。この年だけ切り取るのは、ナンセンスです。
また少子高齢化は東京も愛知も福岡も同じであり、それでもこの三都市はこの10年間、人口が増え続けてきたのです。大阪だけが人口減となり高齢化が加速しているのは、ほかの3都市に比べて若者が流出しているのは間違いないことなのです。
大阪府が2020年に増加した人口というのは、4,000人足らずです。しかし、橋下府政以降の十数年で、大阪府では4万人もの人口が減っているのです。
また大阪府は、この十数年の間、毎年、数万人単位で外国人が増加しています。2020年も、もし外国人の増加がなければ人口は減少しているのです。そして東京、大阪、愛知、福岡の4大都府県において、2010年以降、日本人の人口が減っているのは大阪だけなのです。
2010年から2019年までの「日本人」の増減
東京都 +60万人
愛知県 +8万人
福岡県 +1万人
大阪府 -9万人
このように、2010年から2019年まで、大阪では日本人が9万人も減っているのです。大阪は日本人にとって「住みにくい大都市」になっているのです。
ちなみに橋下府政以前は、大阪府でも日本人の人口は増加していました。「日本人が大きく減る」という大阪の人口動態は、橋下府政以降のことなのです。
なぜ大阪は出生率が急激に下がったのか?
維新の支持者のみなさんは、「大阪の人口が減っているのは社会減ではなく自然減である」「だから若い人が大量に流出しているというのはデマだ」と主張されています。「社会減」というのは、転入よりも転出が多くて人口が減る現象のことです。一方、「自然減」というのは、出生数よりも死亡数の方が多くて人口が減る現象のことです。
確かに、大阪は「社会減」はかろうじて生じていないので、「自然減」が人口減少の要因にも見えます。が、東京、愛知、福岡も、自然減は生じていますが、それを社会増が上回っているので、人口が増え続けてきたのです。しかし大阪は、自然減をペイできるほどの社会増がなかったので人口が減ってしまっているのです。
また大阪のこの自然減の多さこそが、大阪の失政を如実に表すものなのです。大阪の自然減はただの自然減ではありません。大阪の自然減には「実質的な社会減」も含まれているのです。
というのも、大阪は東京、愛知、福岡に比べて出生率が低いのです。しかも、この十数年、急激に下がっているのです。下のデータを見てください。
人口1,000人当たりの出生数(2018年)
大阪府 7.6
愛知県 8.4
福岡県 8.3
東京都 8.0
全国平均 7.4
大都市というのは、若者が多いので必然的に結婚数、出生数もほかの全国平均よりも大きくなるのが通例です。しかし大阪の場合、出生率は全国平均とほぼ変わらないレベルまで落ち込んでいるのです。
もともと大阪府は出生率が低かったのかというとそうではありません。この十年で急激に低下したのです。橋下府政が始まった直後の2008年は、大阪の出生率は8.96でした。東京は8.45であり、大阪の方が東京よりも0.5ポイントも高かったのです。それがこの10年の間に、東京と大阪の出生率が逆転してし東京よりも0.4ポイントも低くなってしまったのです。この10年の間に一体何があったのか?というほどの大幅な低下です。
これは大阪の子育て環境が悪化したという何よりの証拠でもあります。
そして出生率、出生数が低下したということは、単に子供の数が減ったというだけの話ではありません。大阪の夫婦だけが急に意識が変わったわけではないので、子供を生む予定の若い夫婦が大阪から脱出したケースが増加していることが考えられるのです。
そして若い夫婦が大阪から脱出すれば、人口は「社会減」だけじゃなく、「自然減」も生じさせてしまうのです。子供を産む予定の若い夫婦一組が、大阪から出ていった場合、数字の上では2名の転出というだけのことです。しかし、この若い夫婦は1人以上の「自然増」を予定していたわけなので、実質的には3人以上の人口減をもたらしているのです。これが大阪の人口が減っている大きい要因でもあるのです。
だから、「大阪は自然減が大きいから人口が減っているだけ」という維新の支持者さんたちの言い分は、まったく意味をなさないのです。大阪の「自然減」は本当の自然減ではなく「失政による実質的な社会減」が多く含まれているのです。
そして子供を産む予定の若い夫婦一組が大阪から転出すれば、実質的に「若年層が3人以上減る」ことになります。それが結局、大阪だけが急激に高齢者の割合が増加している大きな要因なのです。
前回お伝えしたように、大阪ではこの十数年、大都市とは思えないような急激な勢いで高齢化が進んでいます。それは出生率が下がり、子育て世代が大阪から減っていることが最大の要因なのです。
東京と大阪の高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)
東京都 大阪府
2005年 18.5% 18.7%
2010年 20.4% 22.4%
2015年 22.7% 26.1%
2020年 23.0% 28.0%
国勢調査データより
大阪の出生率の低下は明らかに政治の責任
橋下氏が知事になった2008年以降というのは、大阪は人口は増える要素ばかりがありました。東日本大震災によって西から東への人の流れが停滞しました。また2010年以降、中国人観光客の激増によってインバウンド需要も激増しました。大阪は、インバウンド需要において、東京よりも大きな地の利がありました。中国から来るとき、大阪は東京よりも近くしかも京都に近接しているので、中国の爆買い客にとっては大阪は非常に魅力的だったのです。特にクルーズ船で中国から来る場合、横浜まで行くのと、関西の港まで行くのとでは、2日程度の違いがあります。だから、大阪はインバウンド需要で大きく潤っていたのです。
にもかかわらず、大阪府は人口を減らしているのです。このもっとも大きな要因は、行政力の低下だと考えられます。
子育てというのは、その地域の自治体の行政力が問われる分野なのです。出産を予定している夫婦は、医療、保育、学校等々、人生でもっとも行政サービスを受ける機会が多いからです。そういう子育て世帯が、大阪から脱出したり、子供を産むのを断念したりするということは、自治体にとって「最悪の評価」であり、これほどの不名誉なことはないはずです。
橋下氏や維新は、この十数年、各種の補助金を廃止するなど医療や教育などの行政サービスを大幅に低下させました。それが新型コロナ禍において、日本で最悪の死者を出した要因だと、前回述べました。が、新型コロナ禍以前から、大阪の行政サービスの低下はすでに、住民生活に大きな打撃を与えていたのです。
また維新の会や、その支持者さんたちは、「大阪の財政を再建させるためには仕方がなかった」という言い訳をすると思われます。が、赤十字病院らの数億円の補助金を廃止する傍らで、万博に大阪市と合わせて400億円も支出するようなことをしているのだからまったく言い訳にはなりません。「そういうことをすれば出生率が下がって当たり前」というようなことを橋下維新は行ってきたのです。
次回は、大阪の「偽りの財政再建」と「維新の会と竹中平蔵氏との癒着」について述べたいと思います。
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