日本では不可能。フランスで「ワクチンパスポート」が利用拡大の訳

 

【サーチ&リサーチ】

* ギリシアは、観光地の島々で優先的にワクチン接種を進め、欧州内外からの観光客呼び込みを狙っているとの記事(2021年3月1日付)。カステロリゾ島は住民の8割が2度の接種を終え、島は「コロナフリー」を宣言。欧州連合に対しても「ワクチンパスポート」導入を提案。イタリアやスペインは前向きだと。ドイツやフランスはこの時点では消極的。

* 《朝日》は、ワクチンパスポートの必要性を条件つきで訴える塩原俊彦高知大学准教授(行動経済学)による論考を掲載。塩原氏は、ワクチンの接種希望者を増やすために政府が採りうる政策7つのうちの1つとして、「条件付け」を挙げ、「特定の娯楽への参加や、公的資金で運営されている医療サービスや学校への訪問をワクチン接種済みであることに条件づける」として、次のように言っている。「いわゆる『ワクチンパスポート』をひもづけして、ワクチン接種者とそうでない者とを区別しやすくすることで、接種者を優遇するのである。もちろん、『差別』につながるとの猛反対が出るだろうが、少なくとも海外旅行などではワクチンパスポートが採用されるのは確実だろう」と(2021年4月12日付「論座」)。

* その後、EUは「デジタル証明書(ワクチンパスポート)」を導入。デルタ株の急増などへの懸念も残る中、夏のバカンスに向けて観光が本格的に再開。「ワクチンパスポート」が始まった(2021年7月10日付)。

* そして、今日の記事の中でも説明されていた、マクロン大統領のテレビ演説(7月12日)が行われる。「マクロン仏大統領は12日、病院や介護施設などの職員に接種を義務づけると発表した。8月には、カフェやレストラン、病院、美術館、長距離列車などの利用にも、接種か陰性の証明の提示が必要となる」(2021年7月13日付)

* 14日の記事には、強化される「自由の制限」についての詳しい内容。「マクロン氏は「全国民の接種を目指さなければならない。それが普通の生活に戻る唯一の道だ」と強調。状況が悪化すれば、対象者拡大も検討するとした。さらに「ベラン保健相は、9月15日までに接種しなかった病院などの職員は『働けなくなるし、給料も払われない』と警告した。PCR検査を原則有料にする方針も、接種に向けた圧力の一環だ」という。

●uttiiの眼

フランスの感染者数は580万人。死者は11万人に上る。新規の感染者数も、デルタ株が広がるに連れ、およそ4,000人を数えている。世論調査では72%が医療関係者への接種義務化に賛成し、全国民の接種義務化に賛成する人も58%に。

今日の記事はマクロン政権の方針に反対する人たちの存在感の、それなりの大きさを反映するものだろうが、基本的な流れはマクロン氏の対策を支持している。

日本でワクチン接種の義務化が議論されるとしたら、それは、五輪によって感染拡大が加速し、東京都を中心に「医療逼迫」の状況が誰の目にも明らかとなった時だろう。そうならないに越したことはないが、昨日日曜日に新規に確認された感染者数は1,700超。前の週の日曜日を大きく上回っている。

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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