というわけで、裁量労働制が非正規雇用の二の前にならないように、まずは実態調査で明らかになったネガティブデータを紹介します。
■「裁量労働制」の職場と「一般」の職場を比較
- 1日の平均労働時間:裁量「8時間44分」、一般「8時間25分」
- 1日3時間超の残業をする事業所の割合:裁量「1.2%」、一般「0.4%」
■裁量労働制の「適用者」と、「非適用者」の比較
- 1日の睡眠時間:
適用「6時間9分」
非適用「6時間10分」 - 深夜の時間帯に仕事をする:
適用「あまりない」34.2%が最も高く、次いで「全くない」31.1%
非適用「全くない」52.8%が最も高く、次いで「あまりない」29.1% - 時間に追われている感覚:
適用「よくある」28.8%、「ときどきある」49.2%
非適用「よくある」27.2%、「ときどきある」47.9% - この働き方をこれから先も続けていけるか不安:
適用「よく思う」13.9%、「ときどき思う」31.7%
非適用「よく思う」13.6%、「ときどき思う」35.6%
■裁量労働制に対する意見(適用者)
「今のままでよい」34.1%が最も高く、「特に意見はない」28.4%、「制度を見直すべき」28.0%
■見直すべき問題(専門型、企画型別)
- 専門型:「健康やワークライフバランスへの配慮」51.7%、「裁量の確保」44.1%
- 企画型:「対象者の範囲の見直し」46.6%、「健康やワークライフバランスへの配慮」45.9%
これらは報告書の一部を抜粋したものですが、当初から予想されていたとおり裁量労働制が労働時間を増やす可能性が示唆されています。裁量労働制推進派は「自分でコントロールできる分、効率化できる」としていましたが、必ずしもそうとは言い切れない結果です。
また、「時間に追われている感覚」を適用、非適用ともに3割程度の人が感じている点は、制度の問題ではなく「職場の問題」として捉えるべき。さらに、「この先続けていけるか不安」と、適用、非適用共に、半数近くが「ある」と答えている点も注目すべき「職場の問題」です。
つまるところ、どんな制度を作り、取り入れたところで、会社側が「働く人」が元気にイキイキと働ける職場づくりをしない限り、意味がない。「裁量労働制の拡大こそが生産性の向上の鍵」という言説は、会社の「アリバイづくり」のようなもの。
今の生産性の低さは、「人」を起点する思考性が会社側に欠けていることが、そもそもの問題なのです。
みなさんのご意見、お聞かせください。
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image by: StreetVJ / Shutterstock.com