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元国税が指摘する「医療崩壊」のウソ。病院のカネ儲け主義が日本を弱体化させる

2020年には100歳以上のお年寄りが初めて8万人を超えたものの、「世界一の寝たきり老人大国」などと揶揄されることも多い我が国。その数200万人とも言われますが、なぜこれほどまでに増加してしまったのでしょうか。今回その原因を解説してくださるのは、元国税調査官として専門家の目線で紹介する「ギリギリまで節税する方法」や「最新の税金情報」等と並び、さまざまな社会問題をシビアな目で分析し考察する記事が人気の大村大次郎さん。大村さんは自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で今回、寝たきり老人を「量産」する日本医療界の闇を白日の下に晒しています。

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※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2021年8月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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国民を幸福にしない日本の医療システム

このメルマガで何度かご紹介しましたが、日本の医療システムというものは非常にいびつです。日本の病床数の約80%は民間病院にあります。国公立病院の病床は約20%しかありません。

これは先進国としては異常なことです。イギリス、ドイツ、フランスなどの先進国ではほとんどが病床の大半は国公立病院なのです。アメリカは国公立病院の病床数はそれほど多くはありませんが、しかし病床の大半は教会や財団などが運営する「非営利病院」です。

そして、新型コロナで日本の医療は、欧米の数分の一、数十分の一しか感染者が出ていないのに、たびたび医療崩壊に瀕しましたが、この要因も「公立病院が少なすぎる」ことなのです。

大阪で医療崩壊が起き、日本で最悪の死者を出したのもこの「公立病院が少なすぎる」ことが大きな要因です。大阪では、公立病院を「独立行政法人化」するなどで削ってきました。「独立行政法人も公的な病院に変わりはない」と反論する方もいます。しかし、それは大きな間違いです。確かに独立行政法人は、公的な補助を受けていますし、一定の公的な義務も負いますし、一定の自治体のチェックも受けます。

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が、純然たる公立病院と違って、国や自治体が経営全般を担っているわけではありません。原則として病院の経営は「独立行政法人」自身が責任を持つことになるのです。だから「商売にならないことはしない」ようになるのです。むしろ体質としては民間病院に近いものなのです。

自治体の方も、経営の面倒を全部見るとお金がかかるから、「独立行政法人化」をしているわけです。言ってみれば「生活の面倒を全部見る」のをやめて「一定の金額だけ渡すから後は自分でなんとかしろ」ということです。

独立行政法人病院側としても、自治体からもらっている補助金分の義務は果たしますが、それ以上のことはしないわけです。経営優先にならざるを得ないのです。

新型コロナでも、純然たる公立病院であれば、自治体が指示すれば全面的に動きます。しかし独立行政法人の場合は、自治体の命令を聞く義務はありませんから、経営の算段の方が優先されます。新型コロナのようなリスクが高い患者は受け入れたくないのです。

そのため大阪は東京よりもはるかに人口が少ないにも関わらず、病床が不足し、入院できずに亡くなってしまう方が続出したのです。

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医療は営利になじまない

ところで、なぜ日本で民間病院が多いのかというと、これも何度かご説明しましたが、日本では最強の圧力団体と言われる「日本医師会」という団体があるからです。この日本医師会は医師の団体ではなく開業医の団体で、開業医の利権を頑強に主張してきて来たために、こうなったのです。

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が、いくら日本医師会の圧力が強いといっても、政治がしっかりしていればこういう異常なシステムにはならなかったはずです。

政府は、この数十年、公立医療を削減し、民間医療を増やすという政策を施してきました。大阪の場合も、この国の方針をまともに実行したという面もあるのです。

国としては、財政赤字を減らすために金のかかる公的医療を減らし、民間の競争原理を導入し、医療費を削減しようというつもりだったのでしょう。

しかし産業の中には、営利を取り入れることによって発展する分野が多々あります。というより、産業の大半は営利を取り入れた方が発展します。しかし、営利を全面的に取り入れると人を幸福にしない方向に行く分野もあります。その代表格が医療なのです。

というのも、医療機関が「儲けること」を第一に考え始めると、非常にヤバいことが起きるのです。

「儲けること」の基本は、原価や労力をいかに少なくし、いかに売上を多くするかです。医療がその方向に向かえば、とんでもないことになります。「楽して儲けられる患者をつくる」ということになるからです。

「治療にそれほど労力はかからないけれど治療費をたくさんもらえる」そういう患者を、医療機関が故意に増やすことになるのです。

だからこそ、欧米では公的医療機関の割合が高いのです。

民間病院の割合が高い日本の医療は、実際にそういうヤバい方向に行っているのです。その最たるものが「寝たきり老人」です。日本の医療機関では寝たきり老人などを増やして入院させ、多額の医療費を稼いでいることが多いのです。

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なぜ日本は寝たきり老人が多いのか?

実は先進国の中で日本は寝たきり老人が異常に多いのです。日本では寝たきり老人が、200万人いると推計されています。これほど、寝たきり老人のいる国は、世界中どこにもないのです。というより、欧米の先進国では、医療機関などには「寝たきり老人」はほとんどいないのです。日本が高齢者大国だということを考慮しても、この数値は異常値なのです。

そのカラクリも、せんじ詰めれば「医療の儲けの構造」につながるのです。なぜ、日本にこれほど寝たきり老人がいるのか、というと、日本の医療現場では点滴、胃ろうなどの延命治療が、スタンダードで行われているからです。

自力で食べることができずに、胃に直接、栄養分を流し込む「胃ろう」を受けている人は、現在25万人いると推計されています。

これらの延命治療は、実は誰も幸福にしていないケースも多々あります。寝たきりで話すこともできず、意識もなく、ただ生存しているだけ、という患者も多々いるからです。

親族なども、もう延命は望んでいないという場合であっても、日本の場合、一旦、延命治療を開始すると、それを止めることが法律上なかなか難しいのです。

想像してみてください。自分が、自力で食事も排泄もできず、意識もない状態でただただ体だけは機械で生かされ続けていることを。ほとんどの人は、そういう状況は嫌なはずです。

「自力で生きることができなくなったら無理な延命治療はしない」ということは先進国ではスタンダードとなっています。日本がこの世界標準の方針を採り入れるだけで、医療費は大幅に削減できるはずです。

なぜ日本はそれをしないのでしょうか?先ほども言いましたように、この延命治療が、医療の儲けのシステムの中に組み込まれているからです。日本は民間病院が多いので、楽して高収入を得られる延命治療をしたがります。そして延命治療で儲かっている民間の病院たちが政治家に圧力をかけ、現状の終末医療をなかなか変更させないのです。

新型コロナ禍では、症状が悪化しても入院できなかったり、入院できてもICUなどが不足し高度な治療を断念するケースも多々生じています。新型コロナなどリスクの大きい患者の受け入れなどは、民間病院はなかなかしたがらないからです。その一方で、誰も幸福にしない延命治療が延々と続けられているのです。

日本の医療システムは、本当に助けてほしい時に助けてくれず、助けがいらないときに余計な助けをするのです。この「国民を幸福にしない医療システム」は根本的に改革しないとならないのです。

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