アフガン首都は陥落寸前。それでも米国がタリバン勢力を殲滅せぬ無責任

 

そのような動きを感知しているのか、もしくはすでにアメリカ政府からのお墨付きを得ているのか、タリバン勢力は一気にアフガニスタンの主要都市を守る政府軍に対して攻勢をかけ、北部地域のコントロールを手中に収めました。

そうすることにより、タリバンは隣国タジキスタンなどとの交易ルートを握り、麻薬を含む収入源を確保すると同時に、交易の要所を掌握したことで、周辺国からカブールへの物流もコントロールできるポジションに就いたとも言えます。

同時に、北部同盟をはじめとする反タリバンの民兵組織を一掃し、支配を完全なものにするという狙いも叶えやすくなることも意味します。

しかし、獰猛で有名な北部同盟のドスタム将軍が亡命先のトルコから帰国したとの情報もあり、今後、北部同盟のコントロールを握るものと思われ、彼と北部同盟が、今後、ガニ大統領率いる政府と組んでタリバンに対することになるのか、または、タリバンと組んで現政府にとどめを刺すことに加担するのかによって、今後のアフガニスタンにおける情勢は大きく変化します。要注目です。

以前にもお話ししましたが、アフガニスタンの周辺国は挙って、アフガニスタンの混乱を抑えるべく、中央アジア・南アジアにわたる協力体制を構築し、その中心に位置するアフガニスタンに支援の手を差し伸べようとしています。そこに同じく隣国の中国、かつてアフガニスタンと激しく戦ったロシアも加わり、「アメリカ撤退後の一大勢力圏」を形成しようとする動きがあります。

このアフガニスタン支援体制のベースにある共通した考えは、「アフガニスタン情勢の混乱と治安の悪化が自国に悪影響を及ぼすことを防ぐ」という目標ですが、タリバン勢力が優勢になってきており、加えてアメリカが介入してこない状況を見て、これらの国々の姿勢に何か変化があるでしょうか?

様々な情報を包括的に見てみると、【アフガニスタン情勢の混乱と治安の悪化は望ましくない】【アフガニスタンに安定をもたらすことができるのであれば、その統治主体は誰でもいい】【自国に悪影響を及ぼさない限りは、安定したアフガニスタンを応援する】という共通した姿勢が垣間見えます。

その一つの動きとして、中国とロシアについては、タリバンとも連絡を取り、連携の姿勢を取ることも外交的なオプションとして容認しているということがあります。自国(中国とロシア)に対して悪影響を及ぼさないという絶対条件をのむことが出来るのなら、タリバン勢力の施政者としての復活は構わないという姿勢です。

中国にとって悪夢のシナリオは、アフガニスタン国内の情勢の混乱と治安の悪化により、タジキスタンやトルクメニスタンにいるとされるETIM(東トルキスタン・イスラム運動)がアフガニスタンに入り込み、アルカイダやISの残党と結託し、アフガン経由で新疆ウイグル自治区に侵入して、新疆ウイグル自治区の情勢を一層ややこしくする可能性です。

もしタリバン勢力がETIMのアフガンでの躍進を妨害し、新疆ウイグル自治区への侵入を防いでくれるのであれば、タリバンの復活を後押しすることに同意するというディールが出来ているような気がします。すでに外交的なサポートも目立たない形で寄せられているようですし、ロシアと組んでタリバンへの武器供与も行われているとの情報もあります。

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