アフガン首都は陥落寸前。それでも米国がタリバン勢力を殲滅せぬ無責任

 

国際情勢の裏側で起こっている“ゲーム”は、今回のアフガニスタンの問題については、こんな感じかと思いますが、皆さんお気づきのように、この問題でも、他の国際問題と変わらず、とても重要なステークホルダーが蚊帳の外に置かれています。

それは【アフガニスタンの人々】です。

10年前にアメリカと多国籍軍による空爆でタリバン支配が終わり、“自由”を取り戻したアフガニスタンの人々。

それからずっと国内の紛争に悩まされながらも、米軍の圧倒的なプレゼンスと、日本を中心とした国際支援の存在により、少しずつ安定化のプロセスを歩むはずだったアフガニスタン。

タリバンによって取り上げられた女性の教育の機会と社会進出の機会が取り戻され、女性たちが学び、意見を述べ、プロフェッショナルとしての道を歩む権利を取り戻した10年がありました。

しかし、10年間で出来上がってきたはずの“アメリカ製の民主主義政権”は、国内の諸勢力との共存よりも、不安定要素の排除に舵を切り、それが国内に残り火のように存在し続けた勢力の闘争心と自己保身の願いに火をつけることとなりました。

その際、ガニ政権に立ちはだかる最大の勢力が、かつての支配勢力であったタリバンです。そのタリバンが今、再びアフガニスタンの混乱の中、支配勢力の座に返り咲こうとしています。

アフガニスタンの和平にも初期に関わり、その後も様々な形での支援に関与してきました身として抱く素朴な疑問は【この10年で何が変わったのか?それとも変わらなかったのか?】という問いです。そして、【アメリカはまた他国を滅茶苦茶にするだけして、放り投げるのか?】という憤りにも似た疑問です。

米軍の撤退期限まであと3週間ほどありますが、米軍が方針通りにアフガニスタンの地を去るとき、彼らの背後に残るアフガニスタンとその国民が直面する現実・未来はどのようなものでしょうか?

また国際社会と大国、周辺国の地政学的な思惑に翻弄される悲劇的な例になるのではないかと恐れつつ、私の予想と懸念が的外れで、アメリカによる占領が終わった後の2021年9月以降のアフガニスタンが、アフガニスタンの人々に真の安定と安心をもたらすようになってほしいとの強い思いを持っています。

いろいろと予測が難しい事態ではありますが、皆さんはどうお考えになりますか?

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image by: Tristan Ruark / Shutterstock.com

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