新型コロナウイルスによる感染症が重症化するか否かに大きく関わるとされる、基礎疾患の有無。心臓病や腎臓病等と並んで高リスクとされている糖尿病ですが、その患者が重症化を防ぐため打てる手はないものでしょうか。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では糖尿病専門医で糖質制限の提唱者としても知られる江部康二先生が、米国糖尿病学会が年次学術集会で発表した、糖尿病であっても新型コロナが重症化しにくく重篤な合併症も少なく済んでいる患者の特徴を紹介。カギとなるのはやはり「血糖値」でした。
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米国糖尿病学会が糖質制限食を容認、エビデンスが最も豊富
こちらのメルマガですが、今回で800号となります。800号とはよく続いたものだと思います。読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。
この間、糖質制限食関連のいろんな出来事がありましたが、めでたい800号記念ということで、今までで一番嬉しかった記事を取り上げて、文章を追加してまとめてみました。
<米国糖尿病学会(ADA)の糖質制限食に対する見解の変遷>
- ADAは、2007年まで糖尿病の食事療法において糖質制限食は推奨しないとしていた
- 2008年、「食事療法に関する声明2008」において、「減量が望まれる糖尿病患者には低カロリー食、もしくは低炭水化物食によるダイエットが推奨される」と、1年の期限付きで、糖質制限食の有効性を認める見解を記載
- 2011年、肥満を伴う糖尿病患者に2年間の期限付きで糖質制限食の有効性を容認
- 2013年10月、「食事療法に関する声明2013」において期限や限定なしで、糖質制限食を容認
- 2019年4月、「コンセンサス・レポート」で糖質制限食が、エビデンスも最も豊富と記載
- 2020年4月、「栄養療法」
地中海式、低炭水化物、およびベジタリアン食事パターンは、いずれも研究で良好な結果が示されている健康的な食事パターンの例である
個別の食事計画は、個人の好み、ニーズ、および目標に焦点を当てるべきである
糖尿病患者の全体的な炭水化物摂取量を減らすことは、血糖値を改善するために最も多くのエビデンスが示されているので、個人のニーズや好みに応じた様々な食事パターンに適用することができる
米国糖尿病学会(ADA)は、蓄積したエビデンスに基づき、見解を発表しています。
2007年までは、エビデンスが不足しているとして、糖質制限食を否定しています。これは、全面的な否定ということで、糖質制限食は無視されていたと言っても過言ではありません。
2008年には、1年間の期限付きではありますが、初めて糖質制限食を容認しました。これは糖質制限食賛成派にとっては画期的な出来事であったと言えます。
2011年には、2年間の期限まで延長されましたが、3年間の月日のエビデンスの蓄積をもっても、やっと1年間が2年間に延長されたということです。
これは随分時間がかかっていると感じますが、米国糖尿病学会の極めて慎重な姿勢が伺え、望ましいと言えます。
その後、更なるエビデンスの蓄積により、2013年10月にはガイドラインにおいて、糖質制限食を、正式に容認するに到りました。
糖質制限食賛成派にとって、やっと米国糖尿病学会のお墨付きがでたという意味で、おおいに安堵できる声明でした。
さらに、2019年4月には、「コンセンサス・レポート」において、糖質制限食が最もエビデンスが豊富と明言しました。糖質制限食に関しては、
Low-Carbohydrate or Very Low-Carbohydrate Eating Patterns
(低炭水化物食、超低炭水化物食)
と記載してあります。
タンパク質の摂取比率は、一定なので、超低炭水化物食は、間違いなく高脂肪食です。
高雄病院のスーパー糖質制限食はこの米国糖尿病学会の言う「超低炭水化物食」に相当し、脂質摂取比率は56%です。
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2020年のADAガイドライン「栄養療法」においても「糖質制限食が最もエビデンスが豊富である」と再び明言してあります。
糖質制限食の評価に関しては、長期にわたり、日本でも米国でも紆余曲折がありましたが、ここに到り、とうとう決着がついたと言うことができます。
すなわち糖質制限食賛成派の全面的勝利です。
耐糖能が悪化する可能性があるような食事療法を米国糖尿病学会が正式に容認することはあり得ません。
すなわち、糖質制限食の安全性は、短期的にも長期的にも米国糖尿病学会により担保されていると言えます。
なお「第81回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA2021)」が6月25日~29日にWeb開催されました。
■糖尿病患者はコロナ禍にどう向き合うべきか 困難を乗り越えるために 米国糖尿病学会
血糖コントロールが良好でない患者は新型コロナが重症化しやすいことが明らかになっている。
逆に、血糖値が低くコントロールされている患者は、新型コロナが重症化しにくく、重篤な合併症も少なく、入院期間が短い傾向があることも確認された。
「米国人の健康を改善するためには、健康格差を減らすことが必要で、そのために医療システムを改革する必要があります。医療上の不平等が家族や地域社会に与える影響をなるべくなくすことが必要です」
と、米国糖尿病学会(ADA)のトレーシー・ブラウンCEOは述べた。
ADAのトレイシー・ブラウンCEOは、自らスーパー糖質制限食を実践中です。彼女は、糖質制限食実践で、自分の2型糖尿病をうまく管理し、インスリンと他の3つの薬をすべて中止できています。
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