稲川淳二が語る怪談。会社員が逃げ場のない車内で遭遇した「女性」の正体

 

ビニール袋のようなもの、ガサガサやって。

それ持つと、

バッ

とドア開けて、

バタン!

――閉めた。

真っ暗な闇んなか――見てると―――。

目の前に、うっ…!

お墓がある。

ええっ――!

思って。びっくりして。

――見てると――おじいさん、墓にお供えして。

で、――手を合わせると、忙しげに戻ってきた。

ブォォォォ―――

また車が発車する。

気になったんでねえ――なんとなく、おじいさんに、

「お家の、お墓ですか」

聞くと、

「いやー、娘のだ」

――。

「あんた、気がつきませんでした?」

いうんで、

「えっ?」

なんですか?

「えっ?」

いうと、

「気づきませんでしたか。じやあ、いいです」

いうんで、

「なんですか、どうかしたんですか」

気になって聞くと、

「いや、さっき、店に娘がいたんですよ」

って――。

「死んだ娘がいたんで、こりやあ、お供え物しなきゃ思って、寄ったんです」

いう――。

娘がいた?

死んだ娘が?

「それって――」

ええっ―――!

なに?

「ひよっとして、幽霊って――こと――ですか」

――聞くと、

「ああ、そうですねえ」

って――。

「時々、出るんですよ。若い男が店に来たりすると、うれしいんでしょうねえ」

いうんで、

ええっ―!

と―――。

「娘は若くして亡くなりましたから」

――。

「若い男性が来ると、落ち着かないんでしょう」

――。

ゾッ――!として、岡田さん、

「じゃあ――」

っていって、

「娘さん、いつも――店にいるんですか」

聞くと、

「ああ、たまにいますよ」

こともなげに――いって、

「今もいますよ」

いうんで、えっ!

思って、思わず運転席のじいさんの顔見ると、

ううっ!

じいさん、バックミラー見てる。

じっ―――

と凝視してるんで、ううっ!

自分も、瞬間、

うっ!

ミラーを見ると―――

あぁぁぁぁ――――――!

青ざめた顔の女いる!

横顔がはっきり映ってるんで、

「うわぁぁぁ!」

もう言葉もない!

声も出ない!

震えが止まらない!

全身が硬直して――叫べない!

あぁぁぁぁ――――。

隣の、じいさんの顔見るのも、怖い。

硬直したまま、硬直したまま―――じっ―――として。

じっと―――じっと―――辛抱して。

辛抱して―――乗って。

「あっ!もうそこでいいです!」

家の近くで急いでおろしてもらって。

車、降りたそうです――。

じいさん、何もなかったかのような顔をして、

黙って、帰ってったそうです―――。

終わり

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image by: Shutterstock.com

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桑沢デザイン研究所を経て工業デザイナー・タレント・怪談家として活動。日本テレビ「ルックルック」・NHK大河ドラマ他、多くの番組に出演。平成8年、通商産 業省選定グッドデザイン賞「車どめ」を受賞。1993年から全国ツアーの怪談ライブを開催。毎年全国20数か所で夏の定番イベントとして定着している。 そして、日本を代表するサマーフェスティバル「RISING SUN ROCK FESTIVAL」や「SUMMER SONIC」にも出演し大喝采を浴びている。

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