稲川淳二が語る怪談。会社員が逃げ場のない車内で遭遇した「女性」の正体

 

よかった、入ってみよう。

飲んで、タクシーつかまえたいんで、聞いてみよう。思って、

ガラッ

――戸を開けた。

―――70過ぎぐらいのおばあちゃんが一人、

「あ、はい」

「やってますか」

「どうぞ」

てんで、酒、頼んで。適当につまみを頼みながら、

「ところで、タクシーつかまえたいんですけど、電話番号わかりませんか」

聞くと、

「ああ、ここらへんは、そういうもんないねえ」

――いう。

「帰るの、これから?」
「そうです」

事情、話して。

電車が停まったっていうと、

「じゃあ、うちの亭主に送ってもらったら?」

いう。

「ええっ!いいんですか」

「いいですよ、聞いてみますよ」

いって、奥に入ってった。

もうしょうがない、帰る手段がないんで、お言葉に甘えて送ってもらおう。

思ってると、おばあちゃんまた出てきて、

「いいですよ、外に車出してますよ」

いうんで、

「ああ、ありがとうございます」

いって、急いで外に出た。

と――。

真っ暗な道路わきに、車が1台停まってて。エンジンかかってるんで、

「すいません、お世話になります」

いって助手席に乗り込んだ。

これも70過ぎぐらいのおじいさんが、

「いいですよ、いいですよ」

いいながら、運転席にいて、

「どこですか」

聞くんで、家の住所教えて。

「じゃあ」

てんで、ブォォォォ―――

車、発車したんだ。

ブォォォォ―――

走ってると、

「ちょっと、寄り道、するけど、いいかな」

いうんで、

「ああ、いいですよ」

いうと、車が

ブォォォォ―――

いいながら、途中で山道に入って。

急な、すっごく急な坂道、上がって。

どんどん上がっていって、急に、

キィィィ――

停まった。

おじいさん、なにやら、がさごそ、やって。

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