政治家の発言でバレてしまう、防衛官僚と自衛隊制服組の低レベル

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沖縄を訪問した松野博一官房長官が玉城デニー沖縄県知事との会談で、普天間基地問題について「辺野古への移設が唯一の解決策」と述べたと伝えられました。政府は長い間この考えを変えていませんが、一番重要な普天間の危険除去が進まないばかりか、いまの計画では平時にすら使いものにならないことがアメリカからも指摘されていると呆れるのは軍事アナリストの小川和久さんです。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』で小川さんは、政治家の認識違いの発言が続くのは、背後にいる官僚も自衛隊制服組も低レベルな証拠と厳しく指摘し、声を上げ続ける決意を示しています。

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プロフィール:小川和久(おがわ・かずひさ)
1945年12月、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。著書は『もしも日本が戦争に巻き込まれたら!』ほか多数。

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政治家の発言でわかる防衛省・自衛隊のレベル

岸田自民党が総選挙で勝利し、このまま日本の外交・安全保障政策を安定的なものにしていって欲しいと念じている昨今ですが、その分野の専門家の一員としては気になってならないことだらけです。

例えば普天間基地問題。松野博一官房長官は6日、沖縄県の玉城デニー知事と会談し、「日米同盟の抑止力の維持と危険性の除去を考えた時、辺野古への移設が唯一の解決策だ」と述べました。辺野古移設案が唯一の解決策とは、これまで政府与党が繰り返し口にしてきた言葉ですが、使えない、いつ完成するか見通しも立たない、巨額の税金をドブに棄てているに等しい案、という代物です。

日米同盟の抑止力の維持と言いますが、平時でも戦闘機と輸送機が使えない短い滑走路を最初から設計しておいて、抑止力が維持されているなんてよく言えるものです。米連邦議会の政府監査院GAOの報告書でも再三指摘されていることですよ。

しかも、本来の目的である普天間基地の危険性の除去がすっかり忘れられ、辺野古問題にすり替わっています。背後にどんな原因があるのかは拙著『フテンマ戦記』(文藝春秋)を参照していただきたいのですが、基本的には外務省、防衛省の官僚機構が「唯一の解決策」と説明し、政治家はそれをひとつ覚えのように繰り返しているのが、大問題なのです。

自民党の外交部会、国防部会にしても、説明にやってくる外務・防衛の官僚や自衛隊制服組と踏み込んだ議論をし、ときにはその誤りを指摘したりできるレベルの政治家は一人もいません。これまで取り上げてきた台湾有事にしても、「6年以内に…」との米国の海軍大将の発言に乗って、それをオウム返しに拡散していく政治家と自衛隊OBばかりでは困ったものです。

最近わかったことは、中国が台湾に上陸侵攻するのに必要な兵力を輸送するための船腹量について、海上自衛隊、航空自衛隊はほとんど知識がなく、陸上自衛隊でも知らない人が増えているという驚くべき実態でした。その一方で航空優勢がどうの、対艦弾道ミサイルがどうのと議論している訳ですから、同盟国の米国も、そして中国やロシアも、首をかしげているに違いありません。

政治家の発言は、その背後にいる官僚や自衛隊制服組のレベルの反映です。政治家の多くが同じようなレベルの低い発言をしているとすれば、官僚や自衛隊制服組のレベルが高くないということを証明していることになります。これすなわち、政治家の発言によって日本国の弱点が世界にさらされていることにほかならず、やはり嫌な顔をされようとも、政治家、官僚、自衛隊制服組に問題点や課題の指摘を続けるほかないようです。(小川和久)

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  • 2021/11/11 『NEWSを疑え!』第1004号(2021年11月11日号)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆千葉県警に女性本部長誕生!日本警察のいま
 ◆能力も人柄も素晴らしい田中俊恵警視監
 ◆犯罪の国際化に対応できているか
 ◆テロ・サイバーに大きな課題
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・移民・難民を使うベラルーシのハイブリッド戦
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・台湾侵攻に100万人が必要な理由(西恭之)
◎編集後記
 ・海洋国家の自覚なしに海洋権益は守れない

  • 2021/11/08 『NEWSを疑え!』第1003号(2021年11月8日特別号)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・米国防総省は中国が核燃料サイクルを軍事転用すると想定
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・政治家の発言でわかる防衛省・自衛隊のレベル(小川和久)

  • 2021/11/04 『NEWSを疑え!』第1002号(2021年11月4日号)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆アフガン退避失敗!!海外安全問題を考える
 ◆〝決心〟できなかった日本政府
 ◆またも飛ばなかった政府のビジネスジェット
 ◆中国はリビアで4万人以上を逃がした
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・説得力に欠ける米政府のコロナ起源報告書
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・米空母は中国との差を維持できるか(西恭之)
◎編集後記
 ・台湾有事への米海軍の見積もりは疑問

  • 2021/11/01 『NEWSを疑え!』第1001号(2021年11月1日特別号)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・米空軍AWACS後継機はE-7か?
(静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・セッティング・ナショナル・プライオリティーズ(小川和久)

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2021年10月配信分
  • 『NEWSを疑え!』第1000号(2021年10月28日号)(10/28)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆国会にも欲しい米議会のスタッフ機能
 ◆個人スタッフは下院十数人・上院30人以上
 ◆〝回転ドア〟が生み出すダイナミズム
 ◆GAOに代表される強力な補助機関
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・トランプが米情報機関との戦いに敗れた
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・スウェーデンの要衝で米軍が共同訓練(西恭之)
◎編集後記
 ・危険だからアフガンから退避するのに…

  • 『NEWSを疑え!』第999号(2021年10月25日特別号)(10/25)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・米陸軍が無人戦闘車と部隊対抗訓練
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・官邸に戻るのが最悪の場合もある(小川和久)

  • 『NEWSを疑え!』第998号(2021年10月21日号)(10/21)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆台湾有事のリアリティ
 ◆中国には上陸作戦能力が決定的に不足
 ◆致命的な軍事インフラの立ち後れ
 ◆中国が仕掛けるハイブリッド戦
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・食料・農業がランサムウェアに狙われている
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・パウエル・ドクトリンの光と陰(西恭之)
◎編集後記
 ・極超音速滑空体は軍縮交渉のテーマになる?

  • 『NEWSを疑え!』第997号(2021年10月18日特別号)(10/18)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・南側の死角から米国を攻撃する中国の新ミサイル
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・エース記者は影響力を自覚せよ(小川和久)

  • 『NEWSを疑え!』第996号(2021年10月14日号)(10/14)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆知っていますか、アレクサンドロス大王
 ◆アフガニスタン侵攻は前330年
 ◆10年の遠征で巨大帝国を建設
 ◆ペルシアの公道が東征を可能に
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・提出された「台湾侵攻防止法案」は不要?
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・米司令官による中国空軍力の過大見積もり(西恭之)
◎編集後記
 ・金門・馬祖への砲撃の教訓

  • 『NEWSを疑え!』第995号(2021年10月11日特別号)(10/11)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・虎の子のシーウルフ級原潜が南シナ海で水中衝突
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・「台湾有事」で空騒ぎするなかれ(小川和久)

  • 『NEWSを疑え!』第994号(2021年10月7日号)(10/7)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆日本の離島防衛とフォークランドの教訓
 ◆それは民間人の上陸から始まった
 ◆垂直離着陸機ハリアーの活躍
 ◆尖閣諸島ではF-35Bを投入
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・この冬、世界の石油・ガス供給が逼迫する
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・豪州の原潜調達は英国製が有力(西恭之)
◎編集後記
 ・暴力の連鎖を断つということ

  • 『NEWSを疑え!』第993号(2021年10月4日特別号)(10/4)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・ハバナ症候群で意図的にミスリードした米メディア
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・プレゼンに出る「戦えない自衛隊」 (小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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