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小室眞子さん結婚報道で注目「複雑性PTSD」に苦しむ“被害者”たちの実態

小室眞子さんの結婚を巡る報道で多くの人が知ることとなった「複雑性PTSD」という病態ですが、その診断を受ける、もしくは症状が疑われるいじめ被害者が急増しているようです。しかしながら教育現場において、複雑性PTSDを発症した被害者への対策がなされているとは言い難いとするのは、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。阿部さんは自身のメルマガ『伝説の探偵』で今回、「もはや教育的観点のみでいじめの解消は望めない」として大胆な対策を提案するとともに、現場レベルでの複雑性PTSDへの理解の必要性を強く訴えています。

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いじめと「複雑性PTSD」

ここのところ、いじめの相談窓口から、「複雑性PTSD」という言葉が多く聞かれるようになった。私の手もとには、多くの診断書が届くが、その中にも被害者の状況を示す症状について、「複雑性PTSD」「複雑性PTSDの疑い」と書かれた診断書が増えてきたことは明らかだ。

近年では、眞子さまが「複雑性PTSD」だということで注目されたが、一般に「PTSD」との違いは、長期間、逃れることができないという外傷を受けたことで、酷いPTSD症状が出てしまっていることなどを示すとも捉えることができるが、例えば、トラウマについてもPTSDであれば1つのことについてなどであるのに対し、複雑性PTSDは慢性的であったりするなど、症状としてはより酷いと考えられるだろう(複雑性PTSDについて興味のある方は様々な文献が出ているので、ぜひとも調べてみてもらいたい)。

治療としての対策が進んでいない

また、そうした診断書や被害者が示す状況理解のために、私自身もいじめ対策について学校との話合いの中で、「複雑性PTSD」について話す機会も増えてきている。

こうした場面での話は、診断した精神科医の先生からの「症状としての理解」について話をしてもらう機会を設けたりしつつ、具体的な「学校でのケアの体制」を話していくことになる。

精神科医の先生らいわく「トラウマインフォームドケア」という観点でケアを進めて行くことになる。もちろん、精神科医の先生らは治療にも当たるわけだが、日常のことは、学校教職員や保護者が当たることになっていく。

多少私も電話やオンラインなどで話をすることはあっても、どちらかと言えば、「元気のチャージ」のような役割にしかならない。

もはや教育的観点のみでいじめの解消は望めない

もはや、ここまでの被害があると、教育的観点でどうにかしようという範疇を軽く超え、治療的見地から物事を始めないと被害者は日常を取り戻すことはできない。

しかし、現状であらゆる地域で活動をしていてわかることは、教育委員会や学校、関係するSSW(スクールソーシャルワーカー)やSC(スクールカウンセラー)さんから私は自発的に「複雑性PTSD」や「トラウマインフォームドケア」という言葉を聞いたことがない。

一方で、私の本業である探偵調査において、企業内で起こるパワーハラスメントなどのハラスメント問題では、「複雑性PTSD」や「トラウマに関するケア」という対応は、すでに企業側が持っていたり、管轄する厚生労働省の提供資料にも出てきているのだ。

つまり、関係官庁で言えば、この分野については、厚労省に実績がすでにあるのだと言えるだろう。

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縦割りを横断するしかない

日本の行政の仕組みは縦割りだと言われるが、公立校を管轄する地方自治体では「ケース会議」などで各分野の担当者が集まって協議をすることはよくあるはずだ。

深刻ないじめが起きてしまった場合、教育や警察、保健や児童相談所などの各専門分野を持つ担当者らが適切対応を協議し、これら対応を最適化することは、今ある組織で今すぐにできることの1つであろう(すでにやっていて効果がないというケースは確かにあるが、それはやり方や会議の在り方が形骸化していることが多い)。

一方で、学校には公立校以外の私学や国立などがある。特に私学は大小さまざまで、大まかに見ればいじめの対策はほとんどできていないところが多い。

また組織の大小、かけられる予算規模においても、各分野の専門家を呼ぶことは困難であろうこともあるだろう。そうした点においては、国がこれに対応する部署なり、新設が予定されているこども庁に機能を持たせるなどの対応が必要であろう。

いじめの対応に真っ直ぐに取り組んでいった結果、私のような民間の本業探偵であらゆる機関から差別を受ける者ですら、もはや治療という専門的要素を取り入れる必要性を本誌で提言するに至った。

実際に私は、いじめの相談対応において、「複雑性PTSD」の観点を取り入れることによって、あらゆる場面でのいじめ被害を積極的に理解することができたし、これによって、多くの被害者とスムーズに事を進ませることができ、成果が上がってきている。

例えば、小学3年生から酷いいじめを受けていた現在中学2年生の男子生徒は、加害生徒がいると聞いただけで、足が震えてその空間に入れないという状況に至った。

ただし、いじめ行為自体は中学1年生の時に問題となり、学校が謝罪の会を設けたことや同じクラスにしない等の対策を契機に、収まっている。

つまりは、およそ4年間のいじめと、謝罪を受け入れないのは被害者が未熟だからだという誤った同調圧力を使うという学校側の対応によって、彼は学校への信頼感も喪失し、より心が孤立した状態にもなったというわけだ。

そして、行為認知が難しいことで、学校が理解できないいじめ被害においては、加害者らが接触していないのに被害者本人の状態が日に日に悪くなっていき、その被害を訴えるという状態は、複雑性PTSDで解説が可能になる。

このケースでは、トラウマや追体験などが起きやすい環境下であり、被害者本人の立場に立つといういじめ対応の原則からすれば、蹴る殴るなどの実行動が無くても、声が聞こえるだけで被害状態になるということが理解できるわけだ。

被害者の心理的状況の理解や対応の具体的な注意点、これまでの誤った認識が改まることは第一歩のいじめ対策である。

何にしてもいじめが深刻化しないように対策を講じるべきであるし、第三機関のような組織ができることは望ましいが、そうこうしている間に、いじめは次々に起き、時間の経過に伴って深刻化してしまうのだから、今ある組織で、今すぐできることを教育機関には、直ちにやって欲しいものである。

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編集後記

新潟・燕市の中学生が転落死した事件で、遺書にいじめの記載があって、調べているがいじめが出てこないことに苦慮しているというニュースを読んでものすごくがっかりしています。

専門家らが、色々述べていますが、アンケートを工夫しようとか、諸々、報道されています。

これは、もはや根本の問題で、生徒が学校や教育委員会、いわゆる第三者委員会を信用していないということだと思います。

絶対解決してくれる、解決までは無理でも絶対に真摯に向き合ってくれるという信頼感があれば、アンケートがどうあれ、子どもたちは話をしてくれます。

つまり、振り返るならば、信頼感・安心感をきちんと関係性構築できていたかを考察するべきで、小手先のテクニックで、どうにかできるのではないか?と考えるのは、そもそものところで、もうアウトですねって思えてしまいました。

成果の出ている市の監察課(大阪寝屋川市)が配布しているいじめ相談のチラシなどには、大きく太字で「監察課は必ず解決します」と書いてあります。そして、対応実績が肌でわかるほどあるわけです。意気込みも姿勢も体制も全ては子どものみならず保護者にも大人にもわかるくらい違うわけです。

この差は、とても、残念ですねって思います。まあ、このレベルであれば、私はまだまだ彼方此方いかないといけないなぁーと思っています。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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