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終わらぬ加計問題。竹中平蔵の息がかかったコンサルと維新の“深い関係”

共産党や立憲民主党に異常とも言えるほどの敵愾心を燃やす日本維新の会ですが、衆議院予算委員会でもそんな維新の姿勢を表すような光景が展開されていたことをご存知でしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、先日行われた衆院予算委の公聴会でのシンクタンク代表が行った風変わりな公述と、それに続く維新議員による質疑の連動ぶりを紹介。さらに彼らがそこまで深い関係を築くに至ったウラ事情をリークしています。

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国会の公聴会で誹謗中傷被害を訴えた原英史氏と維新の関係

国会で、その風変わりな公述をはじめたのは政策工房というシンクタンクの代表取締役をつとめる原英史氏だった。

「国会における誹謗中傷の問題にしぼってお話したい…まず私自身、国会での誹謗中傷を受けた当事者であります」。

今年2月15日、衆議院予算委員会では、新年度予算案に関する公聴会が開かれ、原氏は8人の公述人の1人としてマイクの前に立った。原氏といえば、加計学園の獣医学部設置を進めた国家戦略特区ワーキンググループの座長代理である。国会で誹謗中傷を受けたとはどういうことなのだろうか。

原氏の語るおおよその経緯はこうだ。2019年6月11日に毎日新聞が事実無根の記事を掲載したことにより、原氏が不正なカネを特区提案者から受け取ったかのような疑惑が持ち上がり、10回にも及ぶ野党合同ヒアリングで内閣府職員らが追及された。その模様はいまも動画で公開され続けている。

原氏は、毎日新聞のほか、二人の国会議員を名誉棄損で訴えた。そのうち篠原孝氏(現・立憲民主党)については勝訴が確定、森裕子氏(同)については係争中だ。

政治家たちは毎日新聞の記事をもとに、質疑を行ったり、ブログに書いたりした。毎日の記事は、原氏と協力関係にあるコンサルタント会社が福岡市の学校法人から約200万円のコンサルタント料を受け取っていたとしたが、原氏自身がカネをもらったとは書いていない。一審の東京地裁は「報道は公益を図るのが目的で、重要な部分を真実と信じる相当の理由がある」として原氏の請求を棄却した。

原氏の公述を聞きながら、筆者は思った。気持ちはわかるが、新年度予算を審議するための公聴会に持ち出すようなことだろうか、と。そもそも「公述人の発言は、その意見を聞こうとする案件の範囲を超えてはならない」という衆議院規則第83条に適うのだろうか。

午前中に予定されていた4人の口述が終わったあとの質疑でも、奇妙なシーンが続いた。

原氏を口述人に推薦した日本維新の会の足立康史議員が、原氏の訴訟相手である二人の国会議員が所属する立憲民主党に「謝罪があってもよいのではないか」と言い出し、この件とは関係がないにもかかわらず、欧州委員会へ脱原発を求めた小泉純一郎氏や菅直人氏ら元首相5人の書簡についてまで「菅直人氏による風評課題」として立憲批判を展開したのである。

足立氏は何を言いたかったのだろうか。結局のところ、立憲民主党をこきおろしたかっただけのことではないのだろうか。だとすると、原氏は政争に巻き込まれ利用されているように見えてしまう。

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ますます“場違い”の質疑ではないかという思いが高じていたところへ、共産党の宮本徹議員が登場し、こう述べた。

「予算委員会の公聴会は、予算案の審議にあたって国民の皆さんの意見をうかがい、その後の審議に生かすために開かれている。原公述人からの公述は自らの抱える案件について、私的な反論を滔々と述べられるということでした。予算委員会の公聴会のあり方としてふさわしいのかという点では甚だ疑問であり、推薦した会派の責任も問われる」

さもありなん、と思う人も多いのではないだろうか。ところが、何ら問題はないはずのこの発言に、「推薦した会派」である維新はおさまらない。あろうことか、「宮本議員の発言は公述人に失礼だ」と、懲罰動議を提出するに及んだのである。

維新はなぜこれほどまでに原氏と“連動”するのだろうか。答えは両者の関係にある。

原氏は通産官僚だった2007年から安倍内閣、福田内閣で渡辺喜美行政改革担当大臣の補佐官を務めたが、2009年7月に退職し、元財務官僚、高橋洋一氏を会長にして政策工房を立ち上げた。

政策工房のウエブサイトに設立趣旨が以下のように掲載されている。

これまで我が国において、政策立案のプロセスは、「霞が関」によっていわば独占されてきました。(中略)私たちは、本当の民主主義を確立していくため、「霞が関」の競合相手が必要だと考えます。それも、単なる提言や要望を提示するのではなく、具体的な政策プランや法案の形にまで作りこんだ「対案」を提示し、政治家や国民の前に選択肢を明らかにすること。それが、私たちの考える政策コンサルティング産業です。

その最初の重要な仕事となったのが、大阪の政策立案だった。2011年、橋下徹大阪市長、松井一郎府知事が府市統合本部を設置したさい、原氏は大阪府、大阪市、大阪府市統合本部の特別顧問に就任。以来、政策工房は大阪の行政と維新の政策に深くかかわってきた。

相棒である高橋洋一氏は、小泉内閣の経済財政諮問会議で辣腕をふるった竹中平蔵氏のチームの一員として、郵政民営化などにたずさわった。その後、第一次安倍政権が発足し、官邸機能強化のため首相直属政策スタッフを公募したさい、内閣府から応募し、安倍チームの一員となった。

一方、「維新」は松井氏ら自民党大阪府議6人が橋下氏の人気を当て込み、橋下氏とともに設立した政党だ。行政機構改革の意欲に燃える橋下氏が当初、もっとも影響を受けていたのは、大前研一氏だった。中央集権から道州制に移行する大前氏の「平成維新」の構想を実現したいと橋下氏が言い、「維新の会」の名称を使うことについて大前氏の了解をとりつけた経緯がある。

しかしその間柄は長続きしなかったようだ。なにかと口論に走る橋下氏を諌め続けていた大前氏は、市営バスと市営地下鉄の改革が頓挫し、従軍慰安婦発言問題などで橋下氏が訪米断念に追い込まれた2013年6月末、橋下支援をやめて連絡を絶ったという。

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それでも橋下氏は強気を崩さなかった。背景には、竹中平蔵氏の存在があった。2012年、維新が初めて衆議院選挙に打って出たさい、竹中氏は候補者を選定するための「公募委員会」委員長をつとめている。

竹中氏がかつて部下だった高橋氏や原氏の政策工房と連携を強めていったことは、産業競争力会議で民間議員をつとめる竹中氏を原氏がサポートし、竹中氏の意向で原氏が国家戦略特区ワーキンググループの座長代理に就いたことからも、はっきりしている。

さてこの政策工房と維新の関係を物語るのが、総務省への政党交付金使途報告書だ。それによると、日本維新の会は「政策業務委託料」として、月に数百万円を政策工房に支出してきた。年間の総額は、2016年が3,888万円、17年3,564万円、18年2,916万円、19年2,608万円、20年は2,646万円で、5年間の総額は1億5,600万円をこえる。

今回、原氏が予算公聴会の矩をこえてまで自らの“被害”救済を求めた背景には、国家戦略特区による“岩盤規制”打破に力を尽くしてきたつもりなのに、加計学園問題などでさんざんメディアにたたかれてきたことへの怨念のようなものがあるのかもしれない。

だが、加計学園の獣医学部新設があれほどの問題になったのは、政府の隠ぺい体質に起因するところも大きい。

特区ワーキンググループが愛媛県、今治市から獣医学部新設計画のヒアリングをしたさい、加計学園の幹部が同席していたのを隠し、議事要旨も小細工していた。出席者名簿に加計学園の名はなく、学園側が発言したにもかかわらず、その内容はいっさい記載されていなかった。

実績では加計学園よりはるかに分があるはずの京都産業大が獣医学部新設に名乗りを上げたにもかかわらず、開学時期や地域的な制限をつけて排除された理由も、しっかり説明されたとはいいがたい。

問題の根幹は、国家戦略特区を主導する安倍元首相が、友人である加計学園理事長を特別に優遇したのではないかという疑いを晴らせないことだ。

原氏としては、政策コンサルタントとして維新から仕事を請け負い、国家戦略特区ワーキンググループの一員として役割を果たしてきただけなのだろうが、どうしても維新や安倍元首相の“御用有識者”のごとく見られてしまいがちだ。

維新と“共闘”しているかのような姿を国会でさらすことが、果たして原氏にとって得策だったのかどうか。国会のあり方について問題提起したせっかくの公述も、何かすっきりしない印象を残したといえるのではないだろうか。

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image by: 日本維新の会 - Home | Facebook

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