渋沢栄一が説く「戦争は自然災害ではなく人災」100年前に込められたメッセージ

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国連が把握しているだけでも、すでに500人に迫る民間人が犠牲となっているロシアによるウクライナ侵攻。死者数はさらに増えていくことは確実です。日本を含め、世界はこの惨劇に対して何をすることができるのでしょうか。渋沢栄一の子孫で、世界の金融の舞台で活躍する渋澤健さんが、栄一の言葉を用いながら提言します。

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

イマジネーションを活かせば世界はきっと動かせる

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

散策中に樹木の芽吹きがうかがえる季節になりました。コロナ禍も、そろそろ明ける兆しを感じています。ただ、直近の10日間の自分自身の無力感、陰鬱な心の状態を正確に表現する言葉がなかなか見つかりません。

地球は、古代から常に新たな季節への喜びを我々に与えてくれますが、人類は愚かなのか。ロシアがウクライナを軍事的に侵攻し、数か月前には平穏無事な日常生活を送っていたウクライナ市民、そして世界が想像すらできなかったことが、悲痛な現実となっています。

幸せで平凡な人生を送るべき多くの尊い人命が既に失われ、これから更に増えることが避けられないようです。また、見えないところでは地上戦以上にサイバーの熾烈なゲリラ戦争が起きているに違いありません。

異常な状態をお互いが招くことは回避するはずという共通認識から、長年封印されていた核戦争の悪夢シナリオすら頭をよぎります。過去に葬り去って忘れられていた歴史を人類は繰り返すのでしょうか。

ウクライナ情勢を受けて、自国防衛の強化は当然とのスタンスから、日本でも「敵」の侵攻を未然に防ぐために核兵器の共同運営を議論すべきという声が上がっています。

一方、他の声も上がっていることも確かです。遠い国の戦争に、自分一人じゃ何もできないという無力感に陥ることなく、上がっている声です。たった一声かもしれません。あるいはたった一口の寄付。でも、このような一人ひとりの想いや行動は、繋がっている。

それが、独裁に覆されることのない民主主義の「武器」であること。そんなことを表明したい声です。一日も早く、ウクライナの、そしてロシアの、一般の生活者の人々の笑顔が戻るように。

ロシアに対する経済制裁も一つの手段でしょう。しかし、その制裁で最も打撃を受けるのは、普通に生活をしたいと思っていて、戦争なんかしたくない、一般市民です。

他にも、日本ができることはあると思います。少なくとも日本国内で生活しているウクライナ人の方々が愛する家族と一緒に過ごせること。日本で日本人と暮らしたいと思うウクライナ人に我々は門戸を開いて「ようこそ」と笑顔でお迎えすべきではないでしょうか。

反対意見も多いでしょう。ただ、賛同していただける方々も多いです。そのような日本人の一人ひとりがコモンズ投信の社会起業家フォーラムのOGである渡部カンコロンゴ清花さんが立ち上げた署名キャンペーンに署名しています。この合唱を日本政府へ、ウクライナへ、世界へ送ることは、とても大切だと思います。

このような良識的な国民の声が多く上がっていることに気づかれたのか、岸田総理はウクライナから国外に避難する人について「日本への受け入れを今後進めていく」、また新型コロナウイルスの水際対策の枠とは別に柔軟に対応することを検討すると表明されました。

このご英断に対し、私、そして署名キャンペーンで示されているように多くの日本人が歓迎し、支持しています。

Imagine all the people, sharing all the world. You…
「想像してごらん、全ての人々が世界を分かち合ってる。貴方が」

ジョン・レノンの名曲「イマジン」を聴くたびに、心が揺さぶられて涙が込み上がってきます。孤独な歌詞とメロディーに、I am not the only one「自分だけじゃないさ」という微かな希望も感じるからでしょう。ただ現在ほど、イマジネーションが必要とされている時代はないかもしれません。これが、人類の最大な「武器」です。

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