渋沢栄一が説く「戦争は自然災害ではなく人災」100年前に込められたメッセージ

 

もちろんマウンティングという行為は人類だけではなく、他の動物でも自分の優位性を表す本能です。ただ10年以上前に、ある生物学者からお伺いして印象に残った話があります。

地球に存在している多数多様の生物種数(国連環境計画UNEPによると約870万)の内、人類しか持っていない特別な才能があるようです。これはチンパンジーやゴリラなど霊長類という賢い動物でも持っていない能力です。

実は、ゴリラとチンパンジーには、イマジネーション、想像力が無いようなのです。つまり、彼らが所属しているところは、たった一つしかない。イマ・ココという所属です。

生物学者からお伺いしたこの観察は元々、ゴリラ研究の第一人者である京都大学前総長の山極壽一先生の研究から解明したとのことで、去年、勉強会で山極先生のお話をお伺いする機会があり、ご本人に確認しました。

先生によるとゴリラが所属しているところは一つしかなく、それは「家族」だそうです。一方で、チンパンジーは家族に所属しておらず、「集団」だそうです。

我々人間は、当然ながら、自分の家族に所属しています。同時に、自分が勤めている会社組織にも所属し、様々な団体にも所属しています。

また、自分が暮らす地域に所属していますし、自分の国にも所属し、そして、地球にも所属しています。我々が存在しているところは、イマ・ココだけなのに、色々なところに同時に所属できることは、人間だけに与えられている能力です。

つまり、我々は物理的にはイマ・ココに属していますが、頭の中では、どこでも、いつでも自由に動き回れるということです。

我々人間は愚かかもしれない。ただ、我々には想像力がある。我々の一人ひとり「未来を信じる力」というイマジネーションを活かせば、世界はきっと動きます。我々は、無力ではない。

□ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □

『論語と算盤』経営塾オンライン 

「渋沢栄一 訓言集」国家と社会

戦争は、洪水や噴火と異なって、
人心より発生するものである。

戦争は自然災害ではなく、人災です。我々の目の前に見えるのは一つの現実しかありません。人心にイマジネーションを活かすことを忘れてしまうと。主体性を「自分」ではなく、「相手」に置く思いやりである「仁」は儒教では最も難しい五徳(仁・義・礼・智・信)と云われています。それは、人類しか与えられていないイマジネーションを活かすことを人は忘れてしまうからでしょう。せっかく与えられているのに、それを活用しない人類は愚かです。

「渋沢栄一 訓言集」国家と社会

平和の破れた暁に、わが国はあくまでも
平和を希望したなれど、かの国が云々ゆえ、
勢い止むを得ぬなどと、ただ己れを善くせんとするが
ごとき責任転嫁の弁解は、これすでに平和の敵である。

真正の王道、真正の文明を主義とするならば、
決して平和の破れるはずはないのである。

どの時代でも、戦争を仕掛けるときには、脅威に対する「防衛」と言うのでしょう。大国を目指すならば、大国らしきの真正の王道、真正の文明を見せるべきです。

謹白

image by: 公益財団法人渋沢栄一記念財団 - Home | Facebook

渋澤 健(しぶさわ・けん)

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