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障害厚生年金の給付はどれくらいの加入年月が必要?より多く貰える組み合わせとは

年金制度は老後の支えとなるものというイメージが強いですが、実は障害年金はとても給付が手厚いことを知っていますか?そこで今回は、メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが障害厚生年金について詳しく解説。配偶者加給年金やその他の年金との組み合わせなどもわかりやすく教えてくださっています。

少ししか厚生年金加入してないけど給付が手厚い障害厚生年金と配偶者加給年金

65歳になって老齢厚生年金を貰う時に、過去の厚生年金記録が20年以上あった場合で、その時に65歳未満の生計維持している配偶者が居ると配偶者加給年金388,900円(令和4年度価額)が加算される事があります。

配偶者が65歳になって自らの老齢基礎年金(満額の場合は777,800円)を貰うようになるまで、配偶者加給年金は加算される事になります。

なお、配偶者自身に20年以上の厚生年金期間があって、その年金を受給する年齢になると配偶者加給年金は全額停止となります。

例えば夫の65歳からの老齢厚生年金に配偶者加給年金が付いた時に、妻は62歳だったとします。

普通なら妻が65歳になるまで夫に加給年金が付くのですが、妻の厚生年金(厚年期間が20年以上あり)が63歳に支給開始年齢であった場合はそこで夫の加給年金はストップします。

なので、加給年金を貰い始めた時には配偶者がいつから年金を貰える人なのかを把握しておく事も大切です。

配偶者が20年以上の記録がある厚年を貰い始めると、自分の配偶者加給年金が止まります。であれば、配偶者がその年金を貰わなければ大丈夫なんじゃ!?という機転を利かせる人もいます^^;

もちろんその手は通用しません。

結局、年金を貰うのを遅らせても支給開始年齢に遡って受給するだけだからですね…(最大直近5年分のみ)。年金請求をやるのを遅らせたりすると、他の問題を発生させる事があるので、意味もなく請求しない事は避けたほうがいいです。

さて、配偶者加給年金は老齢の年金に付くものという認識が強いですが、障害厚生年金の2級以上の受給者にも加算されます。

老齢厚生年金に加給年金が付く場合は、今だとほとんどの人が65歳にならないと加算されませんが、障害厚生年金受給者はそのような年齢制限はありません。

例えば30歳の時に障害厚生年金2級の受給者になった時に、65歳未満の配偶者が居れば配偶者加給年金(令和4年度価額223,800円)が障害厚生年金に加算されます。

また、障害厚生年金2級以上の受給者は国民年金から障害基礎年金(2級は777,800円。1級は1.25倍の972,250円)が同時に支給となり、18歳年度末未満の子が居たら子の加算金(令和4年度価額223,800円)も加算されたりします。

よって、加給年金を考える時は障害厚生年金受給者の人にとっても大切なものとなります。

なので今回は障害厚生年金受給者の人の加給年金事例などを見ていきましょう。

1.昭和38年3月12日生まれのA子さん(今は59歳)

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20歳になる昭和58年3月から国民年金強制加入となるが、昭和61年3月までの37ヶ月間は未納にした。

昭和61年4月からは専門学校に通う事になり、昭和63年3月までの24ヶ月間は国民年金には加入しなくても良かった。
24ヶ月はカラ期間になる。

昼間学生になると制度としては「平成3年3月」まで国民年金に強制加入ではなくなるが、専門学校生も昭和61年4月から平成3年3月までは強制加入とはしないという事になった。

加入したければ任意で加入していいが、加入しないのであればカラ期間とする事になった。

カラ期間は老齢の年金を受給するために必要な最低受給資格期間10年以上の中に組み込む期間とする。

昭和63年4月にサラリーマンの男性と婚姻し、A子さんは国民年金第3号被保険者となる。

国民年金第3号被保険者はサラリーマンの配偶者が支払う厚生年金保険料の中に財源が含まれているので、個別に保険料を負担してもらう必要は無い。

昭和63年4月から平成23年6月までの279ヶ月間は国民年金第3号被保険者とする。

平成23年7月に離婚したため、この月からA子さんは自ら国民年金保険料を納める必要があったが、平成23年7月から平成28年6月までの60ヶ月間は全額免除とした(将来の老齢基礎年金の2分の1に反映)。

さて、A子さんは免除期間中に精神的な苦しさを訴える事が多くなっていたが、離婚なども経験した事で単に自分が弱気になっているだけだと思っていた。時々自暴自棄になる事もあったが、病院等には行ってなかった。

平成28年7月になると非正規雇用者として就職し、厚生年金にも加入させてもらい、平成28年12月31日までの6ヶ月間加入した。平均標準報酬月額は18万円とする。

なお、勤務期間中に無断欠勤や、遅刻、不眠が目立ち始めたため一旦心療内科に行ったほうがいいと勧められて、通院した。初診日は厚生年金加入中の平成28年9月14日。

抑うつ状態と判断されたので、薬物療法をしながら通院する事になった。

休み休み仕事に行っていたが、平成28年12月31日をもって退職。

平成29年1月から令和3年4月までの52ヶ月間は未納とする。

さて、A子さんは症状が悪化していき、ほとんど家に引きこもるようになって日常生活が著しく困難になっていった。

父母が心配し、社会保険労務士に障害年金の事について相談をして代理請求をお願いする。

まず、障害年金は初診日を特定しておかなければいけない。初診日は平成28年9月14日の厚生年金加入中なので、もし受給するとすれば障害厚生年金。

初診日を特定したら、次に初診日の前々月までの年金記録のうち3分の1を超える未納があってはいけない。3分の1を超えてしまってるなら、初診日の前々月までの1年間に未納が無ければそれでもいい。

手っ取り早く1年以内(平成27年8月から平成28年7月)に未納が無いので、それで納付状況は問題なし。

そして初診日から1年6ヶ月経過(平成30年3月14日)している事が必要ですが、経過してるので請求可能。

ところでなんで初めて病院に行った初診日がわからないと原則として障害年金を請求できないのかというと、上記のように初診日を基準として過去の納付記録を見たり、何の制度(国民年金?厚生年金?共済?)に加入していたのかで受給できる年金が変わってくるから。

また、初診日を基準として1年6ヶ月経つ日を見ないといけないので、まず何よりも初診日がいつなのかを把握しなければいけない。

初診日に関する資料は後々非常に重要な資料となる事があるので、保管推奨。

1年6ヶ月経過した日である平成30年3月14日から随分経過したけども、ようやく令和3年6月中に請求して翌月7月分から障害厚生年金2級が受給決定した。

・障害厚生年金2級→18万円×5.481÷1,000×300ヶ月(最低保障月数)=295,974円

・障害基礎年金2級→777,800円(令和4年度満額)

・障害基礎年金受給者に支給される障害年金生活者支援給付金→月額5,020円×12ヶ月=60,240円

よって、障害年金総額は295,974円+777,800円+60,240円=1,134,014円(月額94,501円)。

請求月の前月である令和3年5月から60歳前月の令和5年2月までの22ヶ月間は法律上当然に国民年金保険料全額免除とした。

障害年金2級以上の受給権者は国民年金保険料が当然に全額免除になる(納めたい人は年金事務所や市区町村に申し出て納める事もできる)。

障害年金はとりあえずこのまま貰い続けるとします。

さて、A子さんは63歳中(令和8年6月に再婚)の時に再婚したとして話を進めます。

再婚相手はA子さんより2歳年下の昭和40年7月生まれの男性(厚生年金期間は5年ほどで、自営業)。年収は850万円未満。

そうするとA子さんの障害厚生年金2級には再婚の翌月である令和8年7月分から、配偶者加給年金223,800円(令和4年度価額)が加算される。

配偶者加給年金は夫が65歳になる令和12年7月分まで加算される。

令和12年8月分からは配偶者加給年金が消滅するけども、そこから振り替えられた振替加算15,055円(生年月日による)が夫の老齢基礎年金に加算される。

この配偶者加給年金から振替加算に移る時は、大抵は老齢厚生年金の話の場合が多いですが、障害厚生年金でもこの性質は同じなのでご留意ください。

※ 追記

A子さんには65歳から自分の老齢基礎年金などが貰えるので、計算してみましょう。

年金記録をまとめます。

1.未納期間→52ヶ月+37ヶ月=89ヶ月
2.カラ期間→24ヶ月
3.第3号被保険者期間→279ヶ月
4.全額免除→60ヶ月(基礎年金の2分の1に反映)
5.厚年期間→6ヶ月
6.法定免除期間→22ヶ月(基礎年金の2分の1に反映)

・65歳からの老齢基礎年金→777,800円÷480ヶ月×(3号279ヶ月+厚年6ヶ月+全額免除60ヶ月÷2+22ヶ月÷2)=528,256円

・65歳からの老齢厚生年金→18万円×5.481÷1000×6ヶ月=5,919円

・年金生活者支援給付金→基準額5,020円÷480ヶ月×285ヶ月+免除基準額10,802円÷480ヶ月×82ヶ月=2,981円+1,845円=4,826円(年額57,912円)

…という事で、今貰ってる障害年金総額よりも老齢の年金のほうが随分少ないので、このまま障害年金を貰ったほうが良さそうですね。

ちなみに障害基礎年金+老齢厚生年金という貰い方も可能ですが、やはり障害厚生年金+障害基礎年金のほうが今回は多い。老齢基礎年金+障害厚生年金という貰い方は不可。

なお、障害年金は1~5年間隔で定期的に診断書を出して、障害の状態を確認して症状が改善しているとその後の障害年金が停止する年金なので、障害年金が停止した場合は老齢の年金を貰うしかない。

障害厚生年金は3級まであるので、2級から3級に落ちても年金は支給される。3級年金は最低でも年額583,400円(令和4年度)を保障。

障害厚生年金3級になると、老齢の年金との併給はできないので、障害厚生年金3級を貰うか老齢基礎年金+老齢厚生年金のどちらかを選択する事になる。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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