韓国新大統領が廃止を宣言、文在寅や玉ねぎ男が主席を務めた“組織”の名

kp20220316
 

5月10日、韓国の新大統領に就任する尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏ですが、前政権との違いは明確なものとなるようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、尹氏が「民情首席室」の廃止を宣言したニュースを伝えるとともに、当組織が文在寅政権を始め、これまで時の政権に対してどのような役割を果たしてきたかを解説。さらにこの民情首席室廃止が実現すれば、尹氏が文在寅大統領と正反対の「言行一致の人間」として評価できるとの見立てを記しています。

尹錫悦、二大イベントをクリアできるか

尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領が14日、民情首席室の廃止を宣言した。民情首席室は日本で言えば内閣官房の中にある内閣情報調査室(内調)あたりに相当するものと考えてもらえばいいかもしれない。尹氏はこの日、安哲秀大統領職引継ぎ委員長らとともに行なったお茶会の場で「今後、大統領室の業務から情報調査機能を徹底的に排除し民情首席室を廃止する」と明らかにした。尹次期大統領は過去、青瓦台(チョンワデ、大統領府)の下命捜査を担当した「社稷洞(サジクドン)チーム=警察庁調査課のことで、FBIあるいはKGBのような情報機関」を代表として取り上げ、「過去、査定機関を掌握した民政首席室は合法を装って政敵や政治的反対勢力を押し潰そうとする場合が多々あった」とし「一般民衆の雰囲気を調査するなどと装って国民の身元調査や裏調査を繰り広げてきたがこうした残滓を清算する」と語った。

朴正熙(パク・チョンヒ)政権時の1968年に新設され、廃止と復活を繰り返してきた民情首席室の完全な清算を宣言したのだ。金恩慧(キム・ウンヘ)次期大統領報道官は「民政首席室廃止は引き継ぎ委の議論過程に最も力点を置く政治改革アジェンダになる」と述べた。

「民情」とは「民の心を察する」という意味で、国民に仕えるとの意であるがこの「情」の字は人間の情の意というよりは「情報」の「情」と捉えれたほうがむしろ正確かと思う。本来国民に仕えるとの意であるのだが、実際のところは民情首席室はそのように運営されてはこなかった。大韓民国の司正機関を総括し人事検証まで受け持ち「飛ぶ鳥も落とす」という汚名が付いて回ることになる。

民情首席室の権力は、歴代民情首席の顔ぶれを見ても容易に分かる。文在寅政府では曺国(チョ・グク)元法務部長官がそうだったし、朴槿恵政府では禹柄宇(ウ・ビョンウ)富川(ブチョン)地検長が、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府では現大統領の文在寅が民情首席を歴任していた。いずれも大統領の絶対的信任を受ける最側近人事だった。他の政権でも象徴性が少し少なかっただけで、「大統領の人」が民政首席を務めることには例外がなかった。そしてその過程で大統領の親戚・姻戚を管理して不正を検証する役割は自然に縮小していった。つまり大統領の不正を隠すために使われていったわけだ。

民情首席室は権力の中枢だった。民政首席室廃止を宣言した金大中政府は「高級服ロビー事件」など危機に直面するや、民政首席室を復活させたりもした。崩れた権力を立て直すのも民情首席室の役割だったのだ。文在寅政府最高検察庁検察改革委員を務めた金鍾民(キム・ジョンミン)弁護士は「民政首席は帝王的大統領を支える核心道具のような役割をしてきた」と言う。

そのため、歴代政府の不幸は大半が民情首席の没落とともに招来した。権力が集まる所には必ず腐敗が育まれた。民政首席をめぐって「毒を持った聖杯」という言葉も出始めた。金大中時代には申光玉(シン・グァンオク)前首席が、盧武鉉政府では朴正圭(パク・ジョンギュ)前首席が収賄容疑で拘束された。李明博政府は嫌疑なしだが、李鍾賛(イ・ジョンチャン)元首席秘書官が検察の捜査を受けた。特に、朴槿恵政府の禹柄宇(ウ・ビョンウ)前首席と文在寅政府の曺国(チョ・グク)前首席の場合、いずれも尹次期大統領が直接捜査を指揮して起訴した民情首席たちだ。

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