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ウクライナを救う気がない日本。世界から遅れを取る間違いだらけの難民政策

ロシアによるウクライナ侵攻の出口が見えない中、祖国を後にしたウクライナ難民が増えています。各国が難民に対して支援を行う中、日本が積極的だとは言えない状況が続いています。そんな現状を嘆き、日本の難民政策に異を唱えるのは軍事アナリストの小川和久さん。4月から新たに創刊したメルマガ『NEWSを疑え!(無料版)』の中で難民との向き合い方について解説しています。

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日本に難民政策ってあるの?

ウクライナ難民に世界から支援の手が差し伸べられる一方で、林芳正外相率いる政府専用機2機がポーランドから乗せてきたウクライナ難民はわずか20人。これはワルシャワの日本大使館に丸投げした結果、希望するウクライナ人に周知できなかったことが根本的な原因です。

私も難民支援に取り組むNGOの理事をしている関係で、国際的なNGOのネットワークを使えば、それこそ万単位のウクライナ人が日本への避難を希望したと思われ、残念でなりません。

しかし、それは日本の難民政策の氷山の一角にすぎません。昨年夏にタリバンが政権を奪還したアフガニスタンの難民のことは、話題にすらなっていないのですから、政府ばかりでなく日本国民の危機感と問題意識は一過性と言わざるを得ないのです。

今回の政府専用機の醜態を予感させるように、アフガンでは関係者の退避が後手を踏み続け、3機の自衛隊機で退避したのは14人の旧政権関係者と日本人女性1人だけ。その反省などなかったということは、覆い隠しようのない事実なのです。マスコミが厳しく追及しようとしないのが不思議でなりません。

今回は、こんな有り様の日本外交を象徴するような難民政策について考えてみたいと思います。

アフガニスタンの場合、外国とつながりをもつ旧アフガン政府職員らは新政権による報復の対象となるということで各国が退避に全力で取り組みました。

日本の場合も、過去40年間に日本で学んだ約1400人のアフガン人、日本の外交団、JICA(国際協力機構)やさまざまなNGOで働いていた数千人の職員(警備員、通訳・翻訳者、運転手など)などに手を差し伸べる必要がありました。

それが結果としては、570人しか日本に受け入れていないのです。これはNGOの元職員などより、日本大使館やJICAで働いていたアフガン人が優先された結果です。

570人のアフガン人はJICAが運営する施設や代々木にある国立オリンピック記念青少年総合センター内の建物に入居し、一定の手当や食費のほか日本語学習も提供されています。

しかし、それでもアフガンに残された日本大使館関係者から次のような声が聞こえてくるように、明らかにタリバンに狙われるような人たちが切り捨てられているのです。

「日本大使館に10年間勤務したアフガン人でも、直前に労働契約が切れたことを理由に受け入れられなかった」

「3年前に退職した警備員も、タリバンに狙われることが明らかなのに受け入れられなかった」

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NGOで働いていたアフガン人への対応には、さらに冷たいものがあります。

まず、ビザ申請のハードルが非常に高く、1歳未満だった娘の同行を日本政府が許可しなかったため、来日できないアフガン人職員も出ています。

ビザ申請には、日本で生活の面倒を見てくれる日本人の身元保証人を事前に確保すること、有効なパスポートを所持していること、日本との関連で迫害を受ける十分な恐れがあると立証することが求められます。

パスポートなどタリバン支配下のアフガンには入手が困難という現実を踏まえておらず、緊急避難に対応しようとする姿勢はかけらも見られません。

以上の厳しい条件をクリアしたとしても、日本への旅費や生活費は自費です。そうなると、生活費を含めて数百万円を援助してくれる裕福な支援者を確保する必要があります。これは無理というものです。

短期滞在のビザが得られない場合、「在留資格認定証明書」を得る必要があります。そのためには、受け入れてくれる雇用者か施設を見つけなければなりません。

しかも、それは条件の厳しい労働ビザカテゴリーである技術・人文知識・国際業務(技人国と呼ぶそうです)などへの申請に限定され、それに伴う教育や職歴、職務内容の要件も満たす必要があります。

現実には、技人国、教授、留学など高度な教育水準を前提としたもの以外のカテゴリーでの申請は許可されていないのです。

要するに、日本への入国は不可能に近いということです。

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アフガンだけではありません。2020年の日本の難民申請者は3936人。それに対して認定は47人(1.2%)、2019年は申請者1万375人に対して認定は44人(0.4%)でした。

以下は2020年のシリア難民のケースですが、認定率はオーストラリア89%、ドイツ78%、アメリカ62%に対して、日本は2011年から20年間で117人が申請、認定は22人。難民政策の落差が一目瞭然です。

日本でも、難民認定後5年以上在留し、要件を満たすと永住権を取得できることになっていますが、難民申請の結果が出るまで平均2年半以上、10年以上かかる場合もあります。

認定が厳しい理由は、①就労目的による難民認定申請を防止するため、②「難民」の定義が狭く、戦争難民が含まれないことも理由に挙げられています。

こんな日本に対して、ドイツはパスポートを持っていなくても難民として受け入れ、3年間は生活を保障し、人道的な国家というイメージを打ち出すとともに労働力確保を視野に入れた政策として位置づけています。

ついでながら、難民にまじった敵性国家の工作員やテロリストの入国を心配する向きには、3年間もドイツ政府が「管理」する訳ですから、普通の受け入れ体制より発見しやすいことも申し上げておきたいと思います。

次号では、難民と向き合うドイツの在り方を考えてみたいと思います。(小川和久)

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image by: Shutterstock.com

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