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戦闘を美化するプーチン「5月9日マリウポリで軍事パレード」画策の異常

常軌を逸した行動論理でウクライナへの侵略行為を続けるプーチン大統領ですが、ここに来て言動にある変化が現れていているようです。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、その変化を紹介するとともに、そこから読み取れるプーチン大統領が置かれつつある立場を分析。さらに我が国は既にロシアによって独立を強く脅かされている状態にあるとし、まさに今、どのように動くべきかを考える時に来ているとの認識を示しています。

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「デモくらジオ」(4月22日)から:プーチンの心は5月9日「大祖国戦争勝利記念日」軍事パレードに向かっている

なんか、ものすごいことが起こっているのに、隔靴掻痒と言いますか、ああそうなんですね、で終わってしまう辛さ。テレビなどの解説に防衛関係の専門家と言われる人たちが登場されるのですが、客観的な、余りに客観的なというか、それは当然なんですが、お仕事柄、多分、御自分で抑制されているのだと思います。客観的にどうなのかということを中心に述べられるのが当然なのですが…。

今、明らかに事実として指摘というか忘れてはならないのは、要衝マリウポリという町ですね。ここの市民が10万人から12万人くらい市内にとどまっている。その状況でロシア軍は市街地をほぼ制圧したと発表する。

プーチンさんとショイグさんというんですか、国防大臣が割と近くで顔を合わせて、プーチンさんが報告を受けるという、実に分かりやすい茶番をやっておられました。昔からあの手の映像はよく見ますけれど、ほぼすべて茶番と言って良いのですが。「マリウポリの解放作戦は終了した」というようなね。

で、製鉄所に立てこもっている数千人の兵士および民間の人もたくさん逃げ込んでいるはずですが、その人たちに対する直接の攻撃はもうしなくてよいと、中止を命ずるということを言っていました。

ところが、普通は「アリの這い出る隙間も…」というのですが、ロシアではハエ一匹出さないようにと言うらしく、そのようにして完全に封鎖をしろとも命じている。となると当然これは兵糧攻めの形になるわけですから1万2,000人、いや数千人が一度に飢えるという話になるわけですね。その人たちの運命をプーチンさんは握っているわけですけれど。

彼の心は既に5月9日の対独戦勝利記念日、大祖国戦争勝利の記念日に向かっていて、なんと、マリウポリで軍事パレードをやるという話まで。あの廃墟の中で、廃墟と化してしまった町で軍事パレードをやりたいのだそうで。なんか、その話だけで、ちょっとおかしいんじゃないの、いや、ちょっとじゃないんですけどね。そういう気がしてきます。

事実として重要なのは、近郊の村でどうもマリウポリ市民の殺害された遺体の集団埋葬地が見つかったようだということもあります。アメリカのマクサーという宇宙関係の会社、衛星をたくさん飛ばしている会社ですけど。そこの衛星の画像を時系列で分析すると、次第に「墓」の様なものが掘られていく。これが明らかになりました。おそらく、そこを掘れば夥しい数の市民の遺体が発見されるのではないかという状況です。

もちろん、ロシア軍がそのあたりからも完全に撤退したあとにならなければ分からないことでしょう。そういうことがあります。この数字の出し方には、いつも「墓」らしきものの規模の他に、目撃証言のようなものもあるのかもしれませんが、それは表に出ていない。3,000人から9,000人という、非常に幅の広い数字が出ているようですね。まあ、3,000人にしろ9,000人にせよ、とんでもないことで。その人たちが激しいミサイル攻撃や砲撃や爆弾の攻撃でたまたま亡くなったかというと、おそらくはそうではないでしょう。おそらくは銃で撃ち殺されている。

市民を無差別に殺害するというのがロシア軍の習い性になっているというか、そのような作戦のようでして、ウクライナ人はもしかしたら全員殺害してかまわない、というようなことなのかもしれませんね。まあ、なんとも野蛮なことが行われているという…。ロシア側はよくウクライナはナチだ、それをやっつけるのだという言い訳を侵攻が始まった最初の頃からずっと言っていますが、どっちがナチかと言われたら、それは逆、ロシアの方でしょうという感じですよね。

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それから、東部戦線と言われるところ、ウクライナ東部の平原地帯で戦車を中心とした大戦車戦のようなことが行われようとしていて、そこに向けてウクライナ側に対して米欧から大砲ですね、榴弾砲というのは大砲ですが、それが、この前の援助では確か18門しか送られていなかったのが、今回は72門という大量。弾の数もすごくて14万発だそうですね。

その他、今の段階ですぐに送れる軍備、兵器をかき集めて送っているのだと思いますが、それらを使って、ウクライナ側からすれば防衛を試みることになるのでしょう。日本の防衛関係者の話を聞いていると、こういう言い方はちょっと申し訳ないですけど、専門家としてはそのような戦車戦がこの現代に行われるということをおそらく想定も想像もしていなかったのではないかと。なんか驚きのようなものが感じられます。まるでタイムスリップしたみたいな感じがありますが、現に行われようとしているということが重要な事実の一つなのだと思います。

それから、もう一つ忘れてはいけない事実として、ロシアが新しい大陸間弾道弾の発射実験に成功したと主張しています。えー、サルマトという不思議な名前のミサイルですが、極超音速で飛んで核弾頭を10個搭載でき、射程が1万キロ以上。ロシアは東西にも南北にも非常に大きい国ですから、事実上射程なし、つまり地球上のどこでも狙えるミサイルだと豪語している。

これはまだ本当かどうかよく分からないと思いますけれど、弾頭を複数積むのは大陸間弾道弾の世界では当たり前の話になっていて。MIRV(マーヴ)という言い方を以前はしたと思うのですが、多弾頭の大陸間弾道弾の実験をこの時期にやったということですね。で、プーチンは「ロシアを脅迫するものたちはこれで考えを改めるだろう」という、なんかどう言ったら良いのか、役者の台詞じゃないんだから…という感じのことを言われていますけれど、これも、私たちが物事を考える上で重要な要素の一つになってくるでしょうね。そういうものを打ち破るだけの防衛体制ないしそれを上回る攻撃兵器を米欧は作ろうとするのでしょうが、また軍拡、際限ない軍拡の道に入っていく恐ろしさを感じます。

それからNATOとそれ以外の国も入るのですが、まもなく26日、ドイツの米軍基地に各国が集まって、ウクライナ問題についての会議が開かれます。これ、戦況についての情報共有とか、援助がうまくいっているかいないか、というようなことも多分検討するのだと思いますが、これから先、どうしていったら良いかという話し合いをするのだそうです。

これ、ドイツでやっていることには意味があって、ドイツは当初兵器輸出につながるウクライナ支援について、すごく後ろ向きだったんですよね。嫌がっていた。一番象徴的だったのは、マルダーという名の歩兵戦闘車(マルダーはドイツ語で動物の貂(てん)のこと)があって、これ、戦車に似た古い兵器なんですが、非常にすばしっこく戦場を駆け回り、敵の戦車を攻撃するのが主な仕事ですかね。これか数百台現にドイツは実戦配備しているわけですが、これのうちいくらかをウクライナに出せるのではないか、150輛くらいだせるのではないかという話があったんですが、ドイツ国防軍や政府内部で反対があり、出さなかった。出してしまうとNATOの防衛に穴が開くということで断っていた。そのドイツで今回、軍事支援の会議を開くということなのです。意図は明らかだと思うのですが。そういうことです。

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今言ったようなことを素材に考えてみると、一つにはこの戦争は終わりようがないという感覚を持つのですね。というのは、ロシアはずっと攻撃し続けるでしょうし、ウクライナの側は…ウクライナもロシアも次第に損耗していくわけですが、いわゆる西側から限りなくというか、膨大な支援が続くわけでしょう。

そうすると、もしかすると、今ウクライナに対する軍事支援の根拠地となっているポーランドですよね。ポーランドを通って武器が入ってくるということをロシアがどう考えるのか。ロシアは当然、軍事援助をやるなと言っていますが、ポーランドを直接攻撃する可能性がある。似たようなことでバルト3国とか、NATOの他の国々、ウクライナ支援に関わっているNATOの国々がロシアから攻撃を受けたとすれば、これはNATO軍が参戦することになりますよね。

そう考えると、今確かに武器供与という格好なんですが、すぐにNATO対ロシアという戦争になりかねない。そのような性質を帯びているということだと思います。そこですぐに核兵器の話になるのかどうかは分からないのですが、これは「第三次世界大戦」ですよね。そのイメージは割とスッと行ってしまうので、非常に恐ろしいなという気がしています。もちろん、ロシアはNATOと通常兵器で戦えば勝ち目はないですから、今度のことを見ても分かりますけれど、東京新聞の稲熊さんが言われていたようにロシア軍は弱いと、もちろん、今回のような、第二段階と言っているような今の戦いをすれば、大量に軍を集中して一気に押し寄せるみたいな、土一揆的な戦い方ですけれど、損害もものすごく大きい戦い方ですけれど、そのような戦い方で一応の勝利を収めるのであれば、ロシアは比較的得意にしているのかもしれませんが、そんなことですよね。

だから出来たらNATOとは戦いたくないはずです。でも、ピンチになってきたら分からないですよね。直接ポーランドを攻撃したり、核兵器をどこかで使ったり。その可能性は十分にあるような気がしています。結局、この戦争が終わるために何が必要かというと、ロシア軍の敗走、ロシア軍の撤退、そうならなければ戦争は終わらないわけですよね。

「この戦争」と言っているのは、2022年2月24日に開始された戦争ではなくて、2014年、クリミアの時からずっとつながっている。東部2州のところでは親露派勢力、ルガンスクトとドネツクの人民共和国でしたか、承認したところ、その勢力とウクライナ軍との戦闘はずっと続いてきたわけですよね。波が色々ありつつも。そのなかで、今度のようなロシアの直接侵攻となり、このような事態に立ち至っているということになりますね。ウクライナ側からすれば、領土を奪われているわけで、ロシアを完全に追い出すまでは戦いが終わらないことになりますよね。

そのウクライナが今どのような状態かというと、国内の避難民、現状まだ安全なところもあるのだと思いますが、大きいところは全部ロシア軍に攻撃されていますけれど、国内避難民は770万人。770万人ですよ。横浜市が2つ分くらいですかね。人口だけで言うとね。そして、国外に避難している人たちが500万人。併せて1,200万人~1,300万人くらいがこの戦争を機に避難している状態。通常の日常生活が送れない状態にあるわけですね。その中には日本に来ている6百数十人の人たちもおられるということになります。というところで、毎週話す内容が酷いものになってきていると思わざるを得ないのですが。

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プーチン氏というのは本当に…。ちょっと変化が生まれているところもあって、自分はロシア軍兵士を大事に思っているというアピールが行われたり、なんか、ルガンスクでしたか、どちらかの出身の少女に目の前で詩を読ませて「素晴らしい」と誉め称えてみたり。この戦闘自体を美化しようという、そのような方向でプーチン氏の発言や行動が目立っていると思うのです。

普通に考えれば5月の対独戦勝記念日に備えて良い話を集めていこうとしているのかもしれませんが、同時に言えるのは、兵士のことを大事に思っていると敢えて言うのは、これはウクライナに侵攻している兵士の損害が酷いということではないでしょうか、おそらく。対独戦勝利記念日といっても、そのときにウクライナ東部平原での戦車隊同士の大戦争の結果として、ロシア軍がボロ負けする可能性もある。その危機の中で、私は兵士のことを大事に思っていると言うのは…もちろん、何がどうあったって「勝った、勝った」と言うに決まっていますが、実際はものすごく追い詰められてもいるのだろなという気がしています。

というようなところで、なんかね、暗い話になりますけれど。本会議なんかでもそのようなことが言われていますけれど、日本はどうしたらいいのかということをよく考えるべき時に来ておりますよね、これは。我々は既に独立を強く脅かされている状態にあるのだという認識を私などは持っておりますから、その状態から出発して、何をしなければならないかというのは、是非考えたいと思っています。

(『uttiiジャーナル』2022年4月24日号より一部抜粋、続きはご登録の上、バックナンバーをお求めください)

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image by: ID1974 / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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