この「ロシア排除」ですが、とにかく行き過ぎです。例えば、ロシアで行われている「チャイコフスキー国際音楽コンクール」(チャイコン)というのは、ピアノ、バイオリン、チェロ、声楽、管楽器などを含む大規模で権威のある大会ですが、「国際音楽コンクール世界連盟」は戦争を理由にこのチャイコンを連盟から追放してしまいました。
アートというのは戦争の対極にあるものであり、アートの交流は戦争の抑止にもなるのですが、ロシア側から脱退するのではなく、連盟側が追放するというのは問題だと思います。
また、英国の作家J・W・ローリング氏は、自分の著作である「ハリー・ポッター」シリーズの電子版を、ロシアから引き上げてしまいました。
つまり、ロシア国内にあるアカウントでは、読者のKindleなどの端末からシリーズは消滅してしまったのです。
ハリー・ポッターの読者は、ロシア国内では親西側に近いはずで、そうした読者を裏切る行為にどんな意味があるのか、私には理解できません。
同時に、こうしたデジタル焚書というのは、今後、著作権者の側からも、政権の側からでも、あるいは配信会社の側からでも、いくらでも可能になってしまうわけで、「読者の読む権利」の確定が急がれると思います。
例えばですが、購入したコンテンツは、ユニバーサルなフォーマットでのDLを可能にして、オフラインでの購読権を永久保証するなどの対策を考えるべきです。
いずれにしても、今回の「ロシア排除」に関しては、排除することで、相手を利するような行為になってしまう例が横行していると思います。
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