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Taking decisions for the future man standing with three direction arrow choices, left, right or move forward

なぜロングセラー作家は人生で「ベストな選択」をしようとしないのか

人生における「選択」の場面では、迷うこともしばしば。だからこそ、つい「ベストな選択」をしたいと思ってしまいますよね。ロングセラー『君と会えたから』『手紙屋』などの著者として知られる作家の喜多川泰さんが創刊したメルマガ『喜多川泰のメルマガ「Leader’s Village」』では、 人生における選択と決断にフォーカスし、その方法について詳しく語っています。

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ベストの選択よりも大切なこと

ふと気づくと2022年も6月の半ば。すでに今年も半分が過ぎ去ろうとしています。
月日が経つのは早いものです。

さて、本日のテーマは「選択」について。

多くの人が「いい人生を送りたい」という願望を持っています。そしてその願望を叶えるべく、僕たちは日々、小さいことから大きいことまで「決断」をして生きている。

蕎麦屋で「天ざる定食」にするか「カレーうどん」にするかという小さな決断から、この仕事をやめるべきか、続けるべきか、という大きな決断まで、毎日は「決断」の連続と言っていいい。「決断」とは、無数にある選択肢の中から一つに「決める」ことだと思いがちですが、残りのすべての選択肢を「断ち切る」ことなんですね。

選ばれた道は一つしかないが、選ばれなかった人生は無限にある。そして僕たちは選んだ一つだけの人生を生きているわけです。選ばれなかった無数の人生を見ることはできない。

だからこそ「決断」で迷うことが出てくる。

選んだ道によって未来の自分に起こる出来事が変わってくるのだから、どうせなら「いい選択」をしたいと思う。分岐点が自分の人生に大きな意味を持つほどに、どっちの道が自分にとっては「いい道」なのかを考えるのが当たり前になってくる。

「どんなときでも、ベストの選択をしたい」

というのは、誰にとっても当たり前の価値観のように思われている。つまり、確認したわけじゃないけど「みんなそうだよね」と疑っていないのでは?

でも「どんなときでもベストの選択をしたい」と思っているからこそ、人生におけるたくさんのチャンスを逃しているかもしれないとしたら?

というわけで、今日は「ベストな選択よりも大切なこと」。金曜朝の学びの時間。今日の気づきであなたの人生が「パタパタ」変わるかも。

それでは行ってみよう!

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実は「できる限りベストの選択を」と考えていると、その思いの強さに比例するように「決断」が難しくなる。

「これがベスト」と一度思っても、別の選択肢が現れた途端「こっちの方がいいかも」と思うことってあるでしょ。そういう経験を積み重ねているうちに、一旦何かを決断しかかっても、「いや待てよ、もっといい選択肢がこの後やってくるかもしれない」と迷ったりする。「先に色々情報を集めてから」と行動を後回しにして、情報を集めているうちに真逆のことを主張する情報などが集まってきて、どうしていいかわからなくなる。

さらには「できるだけベストの選択を」という思いが強いと、一度決めたことを継続することも難しくなる。受験生を見ていると、そういうことがよくあるんですね。

英語の偏差値が低い。このままだと大学受験は大失敗しそうだ。そこで一念発起、勉強すると決意して、本屋の受験参考書コーナーに向かう。そこで「どの問題集がベストか」を時間をかけて物色する。「これだ!」と決めて買って帰る。そしてその問題集に取り組み始める。ところが、時間がかかる割に全然実力がついている気がしない。数日後、隣の席に座っている英語が得意な子が自分とは違う問題集を解いている。「それいい?」と聞いてみる。「超いいよ!すごく点が上がった」そう言われると、そっちの方がいいように思える。そこで、再び書店に行って、その問題集を買ってくる。ところがレベルが高すぎて、前の問題集よりも進まない。そんなとき、別のクラスメイトが薄い問題集を使っている。表紙には「0からわかる英文法。これ一冊でWKレベルの偏差値に!」と書いてある。
「これだ!」と思って三度書店へ。そういうことを繰り返している間に実力が伸びるわけではないが、本人はいまだに探している。「ベストの問題集はどれだろう」

側で見ている親や指導者ならその状況を見てため息が出る思いですよね。「そんなの、どれでもいいから一冊に集中してしっかりやれば、実力は伸びる」そう言ってやりたいはず。

大切なのは「どれをやるか」ではなく「どう取り組むか」なのに、いつまで経っても「どれを使えば、何をすればできるようになるのか」を探すことに時間を使っているんですね。

塾選びなどもよくそういうことが起こる。Aにちょっと通ってみる。Bの方がいいという噂を聞いてBに移る。ところが成績が変わらない。そこでCがいいと言われて…。「自分に合うところ」を探しているうちに中々見つからずに時間ばかりが過ぎる。「自分が合わせること」に専念すれば、どこでも結果は出たはずなのに。

「ベストの選択がしたい」と思っている人は、決断が遅くなるだけでなく、一度決断したことすら疑ってしまい、ちょっとした挫折や、思うように成長できないことを理由に「継続」をやめてしまいがちなんです。そしてちょっとした言葉に騙されやすくもなる。

「僕の知ってる方法なら、もっと簡単に、楽していい結果が得られるのに」

という言葉に決断したはずの心が揺らぐんですね。

少しでも思い当たる節がある人は、一度考えてみる必要があります。「自分にとってベストって何?どういう状態?」ということを。

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何も考えていない人にとって「ベストの選択」とは、

・楽して儲かる
・あまり頑張らなくてもいい結果が得られる
・大変な思いをしない
・大きな失敗がない

まあ、まとめると

・より少ない労力で多くを得ること

になっています。

でもそういう価値観ではない人もいます。

・何かが学べること
・誰もしていない経験をすること

こそが自分にとってのベストの道と思っている人もいます。やはり、自分なりの価値観を持って生きている人は、決断した後も振り回されたりはしなくなります。

ただ、そもそも、どのような目的や価値観で人生を生きていたとしても「ベストの選択肢など存在しない」と僕は思っています。

どの道を選んだとしても、その先にいいこともあれば、辛いこともある。苦しいこともあれば、嬉しいこともある。僕たちがやるべきことは、ベストの選択をするのではなく、選んだ道をベストにすること。そうやって今日を生きることを「今を生きる」と言うのです。

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僕たちの人生はオセロゲームのようなものです。

生まれるという奇跡から人生が始まる。これは最初に置かれるコマが「白」を置くようなもの。その後、白が置かれたり、黒が置かれたりするが、どれほど黒が続いても、次に白がやってきたら、そこまでの黒はパタパタとひっくり返ってすべて白になる。だって最初に「白」が置いてあるから。

誰の人生にもそう感じる瞬間がきっとあります。「ああ、幸せだなぁ」と天に、自然に、人生に感謝したくなる瞬間が。そのとき、過去に自分がしてきたすべての選択が肯定されるのを感じるでしょう。なぜなら、それまでにしてきた大小すべての選択のどこかが違っていてもそこにたどり着くことはなかったのですから。

例えば僕の場合は「娘の誕生」の瞬間がそれでした。

「私」がこの世に生まれる確率の凄さは、きっと誰もが感じたことがあるでしょう。そのとき生まれようとした何億という可能性の中からたった一人選ばれたのが「私」なのです。そこに至る両親のすべての過去が、ほんの少しでも違うものであったら生まれてきたのは「私」ではなかったのです。つまり一人の人間の誕生は、両親という二人の人間の(場合によってはその両親やそのまた両親…の)それまでの人生のすべての選択を肯定する瞬間なんです。「それでよかったんだよ」って。

僕自身、それまでの自分の人生が素晴らしいものだったとか、立派なものだったなんて、自分ではとても言えなかった。でも、娘が産まれた瞬間に、自分が選んできたすべての選択肢が肯定されたんですね。「どれかひとつが違っていても、君には会えなかったんだね」と思うと、自分が並べて生きてきたすべての黒がパタパタパタと音を変えて白になっていくような気がしました。

あれからもう18年以上が経ちます。相変わらず、黒ばかりを並べているような人生ですが、それでも一つの安心感はあります。きっとこれから先の人生のどこかで、また同じように「無上の幸せ」を感じる瞬間はきっとあるでしょう。そのときに、同じようにまた、それまでの自分の決断のすべてが肯定されるだろうという安心感です。

だから、その瞬間を人生の中に生み出すために今日という日があるのでしょう。

というわけで、今週の一言。

「ベストの選択なんてない。選択をベストにするために今日があるんだぜ!」

「パタパタパタ」とあなたの黒が白になる音が聞こえるでしょ(笑)。

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image by: Shutterstock.com

喜多川泰この著者の記事一覧

1970年生まれ。2005年「賢者の書」で作家デビュー。「君と会えたから」「手紙屋」「また必ず会おうと誰もが言った」「運転者」など数々の作品が時代を超えて愛されるロングセラーとなり、国内累計95万部を超える。その影響力は国内だけにとどまらず、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、ロシアなど世界各国で翻訳出版されている。人の心や世の中を独自の視点で観察し、「喜多川ワールド」と呼ばれる独特の言葉で表現するその文章は、読む人の心を暖かくし、価値観や人生を大きく変えると小学生から80代まで幅広い層に支持されている。

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