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維新を斬る元首相。菅直人氏に聞く「橋下ヒトラー発言」の真相

先日掲載の「“敵の牙城”で大暴れ。大阪に乗り込み『維新の正体』を暴く菅直人元首相の行動力」では、日本維新の会の本拠で彼らの「危険性」を訴え、維新政治に翻弄される市民の声を精力的に拾い集める立憲民主党の大阪特命担当・菅直人氏の動向を詳しく伝えてくださった、元毎日新聞で政治部副部長などを務めたジャーナリストの尾中 香尚里さん。そもそもなぜ菅氏は維新の会に関心を持ち、党の大阪特命担当となったのでしょうか。尾中さんは今回、そのような質問を含む菅氏へのインタビューの内容を公開。さらに彼の「戦う姿勢」に触れた党の後輩議員たちの反応や動きを紹介しています。

【関連】“敵の牙城”で大暴れ。大阪に乗り込み「維新の正体」を暴く菅直人元首相の行動力

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

「維新を斬れ」菅直人元首相が大暴れ(後編)

22日公示の参院選を前に、立憲民主党の「大阪特命担当」として日本維新の会との戦いに奔走する菅直人元首相(党最高顧問)。大阪市内で菅氏にその理由を尋ねた。

▽日本維新の会について、ここまで関心を持ったきっかけは

昨秋の衆院選で、わが党の辻元清美さん(大阪10区)が落選したことがきっかけです。辻元さんはあれだけ国会で頑張って、メディアにも出ていた。あれだけ実力のある人が負けるはずがないと思っていました。ところが小選挙区で、自民ではなく、維新に負けた。比例代表で復活することもできなかった。大きな衝撃を受けました。それをきっかけに維新研究を始めたのですが、驚くことばかりでした。

▽何に驚いたのですか

昨年の衆院選で、大阪では自民党が19の小選挙区で全敗したことです。維新が15勝、維新と選挙協力した公明党が4勝でした。維新が譲ったようなものです。

 

ところが、こんな酷い結果が出ているにもかかわらず、自民党、特に党本部が「これは大変だ」と全く言っていない。これで、自民党と維新の実際の基本的な関係性が、はっきり見えたわけです。

▽実際は対立関係にはないと

その通りです。

▽しかし、維新の東京進出を食い止める目的なら、地元の東京選挙区で活動する方が大事なのでは

それは違います。維新は3年前の参院選で音喜多駿さんを当選させましたが、次は絶対、もっと本格的に東京に進出してくると考えました。相手が東京に進出しようという時に、東京で迎え撃つだけではだめです。相手の本拠地で戦わないと、こちらは攻められっ放しになるじゃないですか。けんかは攻めなければ意味がありません。

▽大阪で維新と戦うにあたって、何を重視しましたか

まずは参院選で大阪に候補者を作らないといけない、と思いました。前回の参院選でも敗れているし、衆院選では辻元さんまで落選し、大阪で立憲の国会議員はたった1人。このままでは参院選は不戦敗になる恐れがありました。これは何としても戦わなければ、と思い、私から西村(智奈美)幹事長に「大阪特命担当にしてほしい」と願い出て、認めてもらいました。結果として大阪府連がまとまって、新人の石田敏高さんを擁立することができました。

▽「ヒットラー発言」は話題づくりを狙ったのですか

あれはごく自然に橋下氏への感想を述べただけです。別にリアクションを狙ったわけではありませんでした。でも、結果的に向こうは大失敗しましたよね。橋下氏と維新との関係に焦点が当たることになりました。

▽「維新政治を斬る!」という小冊子を作りましたね

2週間ほど前、前回大阪入りした帰りに、電車の中で「冊子を作ろう」と考えました。私自身が維新について学んだことを、一般の有権者にも知ってほしかったのです。例えば「身を切る改革」といっても、実際は「他人の身を切る」ことだとかね。短期間で大車輪で作りましたが、参院選に間に合って良かったです。

▽手応えはどうですか

逃げ始めましたね。最初はかみついてくれて、私の知名度を上げてくれたけど、今は一切反応してきません。逃げたということは負けたということです。

 

でも、東京の人たちはまだ、維新の問題点を十分に感じてはいません。「身を切る改革」がリベラルだと思われている面もあるんです。維新へのアレルギーも少ない。危機感が弱いんです。そこをどう伝えるかが、これからの課題ですね。

菅氏の「戦う姿勢」は、「野党は批判ばかり」という誤った世論にひるみがちになり、戦闘力をやや欠いていた立憲の執行部にも、それなりの影響を及ぼし始めた。

泉健太代表は10日の記者会見で、維新の松井一郎代表が「核共有」の認識をめぐり「(立憲は)昭和の時代で時計の針が止まっている」と断じたことに言及。「自民党にもバッサリと否定された核共有(の議論)を今から始めるのなら(維新の方が)1周、2周遅れている。昭和より古い」と切り捨てた。

ここまで維新に言われっぱなしだった立憲だったが、徐々にメディアでも「安保 つばぜり合い」(朝日)などと、立憲と維新が並べて報じられ始めた。

菅氏の大阪視察の前日、大阪市内で対話集会に臨んでいた小川淳也政調会長は、たびたび大阪に乗り込む菅氏について「敵基地攻撃に来てますね」と発言。やや苦笑気味ながらも「あのファイティングスピリッツは、私ども後輩もしっかり学ばなければいけない」と語った。

もっとも、菅氏の戦術は基本的に空中戦である。参院選本番まで時間がないなか、ある意味割り切っているのだろう。例えば視察先の府営住宅で見かけるポスターは、公明党と共産党のものばかり。立憲のものは一つも見つけられなかった。昨秋の衆院選以降、たびたび指摘してきた「地力の弱さ」を克服するには、まだ相当の時間がかかりそうだ。

こういう状況で、参院選本番に向け強まってきた立憲と維新の主導権争いは、最終的にどんな展開を見せるのか。少なくとも「面白くなってきた」ということは言えそうである。

image by: Twitter(@菅直人 立憲民主党大阪特命担当 衆議院議員

尾中香尚里

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

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