「滋賀県と共に生きる」ことを決断
ナデシコは2007年10月滋賀県長浜市内で創業。代表の細川氏が前職であるJA職員当時に培った生産者と地場産品への思いを飲食の形でお客に提供するという趣旨でスタート。バルや鮮魚居酒屋といった業種業態を展開し滋賀県内で業容を拡大してきた。
そのマインドが高じて2016年12月食材が「オール滋賀県」の店を東京・渋谷にオープン。しかしながら、東京では“ご当地料理店”が多いことから同店の個性は市場の中で埋没してしまい営業不振が続く。そしてコロナ禍となり、事業を滋賀県に集中させることを決断。東京の事業は2020年12月に撤退した。
すると同社には滋賀県関係者からオファーが多数来るようになり、その中の一つに立命館大学びわこ・くさつキャンパスの学生食堂を運営受託するというものがあった。
細川氏はこう語る。
「当社では事業を滋賀県に集中させて、滋賀県と共に生きるという決断をしました。そして、誰一人ともクビにしないし、給料の減額はしない。だから安心して働いてほしいということを全従業員を集めて説明しました」
「これからは『ナンバーワン戦略』を取ろうと。滋賀県のナンバーワン企業となれば、滋賀県で働きたいという人がいると当社を最初に検討してもらうことができる。次にナデシコのブランドが知れ渡ると『飲みにいくのならナデシコに行こう』となる。そしてブランド価値が高まると、他店との競争には勝ちやすくなるのでは。東京や全国で戦う力は足りていないが、滋賀県内だけであればわれわれは戦いやすい。このように考えが集中していきました」
「すると、ここの学食の運営先を探している会社様からお声掛けをいただきました。大学では当初大手企業を探していたようですが、コロナ禍でみな手を引いたという。SDGsといった時代の趨勢からして地元の企業に運営してもらうべきではないか。それであればナデシコに、という話になったとのことです」
物件は以前の運営者が撤退した後でスケルトンのフルリニューアル。そこで平面図や厨房設計のプランを同社がつくり、ミーティングを重ねて現在の形にしていった。同社も持ち出しはあったが、厨房設備をはじめほとんどを大学側が負担した。家賃はゼロ、水道光熱費は折半。ただし、約10品目のフードメニューの売価は500円、600円が主流で原価は50%、そこで「商売としてだけの観点では決して儲かるものではない」(細川氏)という。