誰もクビにせず給料もカットせず。立命館大学の学食運営企業が下した大きな決断

 

ローカル企業として生きる体制を整える

前述した通り「滋賀県と共に生きる」ことを決断したナデシコは、着々とローカル企業としての体制を固めている。

「われわれには地域社会の中でやり続けていくという使命があり『地域愛』を込めてトライアンドエラーを行なってきた。このような商売はすぐに儲からないかもしれないが、3年後5年後に実を結んでいくことではないか。こうすることによって地域の人たちに愛されて、いい店になっていくのではないか」(細川氏)

出店に関して、これまで同社では、駅から徒歩1~2分、路面店を条件に店舗展開を行ってきた。それが2020年2月大津市内琵琶湖近くの商業施設にカフェをオープンした。この店をきっかけとして出店立地の多様化も検討していくという。

さらにこの度、社員独立制度をつくった。出店に関わる投資は会社が行ない、独立して店舗を経営する人は投資リスクを持たずに店舗運営ができる。社内FCという仕組みでロイヤリティがある。独立できる条件は、副部長クラス以上。社長の承認が必要。出店する場所は自分の出身地でも可能だが、物件のジャッジは会社が行なう。社員独立店舗はナデシコの一事業であり出資先として位置付け、それに対する利回りを獲得していく。

同社は滋賀県の地元産品の活用を掘り下げることをミッションとして企業基盤を固めてきた。コロナ禍を経験して、その道に絞り込むことを決断してから、地域社会に根を下ろす大学の学食運営を委託され、これをきっかけに産学官の活動が切り拓かれるようになった。この学食の事例は地域社会における交流のハブとして大いなる役割を果たしている。

image by: 千葉哲幸
協力:株式会社nadeshico

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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