人の話し方にも癖は誰しもあります。あなたの口癖はなんでしょう。今回のメルマガ『深沢真太郎の「稼ぐ力がつく! 数学的思考の授業」』では、ビジネス数学教育家で大学でも教鞭を執る深沢真太郎さんが、スムーズに世の中を渡っていくために、なおしたほうがいい口癖となおさなくていい口癖について分析しています。
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なおしたほうがいい「口癖」となおさなくていい「口癖」
本日も学びのためにお時間をとっていただき、ありがとうございます。プロの講師は「口癖」はなおした方がいいのか。この問いに答えるのが今回の内容です。
人間ですから、誰しも「口癖」はあります。人前に出て話をすることを仕事にするプロ講師。はたして「口癖」というものはどのように解釈し、どのように付き合えばいいのでしょう。今回もぜひ最後までお付き合いください。
まず結論から申し上げます。
もしあなたに何かしらの「口癖」があったとしても、それをなおす必要はありません。
ただしこの結論には条件があります。その条件をしっかりキャッチすることがこの授業のゴールと言って良いでしょう。
まずは一般論から話しましょう。人は誰しも「癖」があります。「癖」のない人などいません。
例えば歩き方にも癖はあります。靴底のかかと部分がすぐにすり減ってしまう人がいます。一方で、そうでない人もいます。その違いは、歩き方の癖によるものでしょう。
物の見方にも癖があります。細かく掘り下げていくことが好きなタイプもいれば、要するに何であるかが分かればそれで良いと思うタイプもいます。前者は下位概念を探したいタイプで、後者は上位概念さえおさえればOKというタイプ。どちらが良い悪いではなくタイプの違いと言えます。
同じように、話し方にも癖がある。これは当然のことです。ですからまず重要なのは、口癖、つまり「話し方に癖がある」ことをダメなことだと思わないこと。
これは意外と重要なことです。なぜならそれをダメなことだと思ってしまっている時点で、その人は人前で話すことに何かしらのストレスや不安を抱えることになるからです。つまり、整理するとこのようになります。
【NG】口癖があることをダメなことだと思ってしまい、無意識にそれを気にしながら話なければならない
【OK】口癖があることは当然であり、そこを気にすることなく人前で話す
口癖があること自体は問題ではありません。口癖を気にすることで精神的に不安定になることが問題なのです。その不安定さは、悪いことにその講師の自信や積極性を奪ってしまいます。
この授業に参加されているあなたならお分かりと思いますが、自信や積極性のない講師が活躍できるほど、研修講師の世界は甘くありません。専門性やスキル以前の問題で「この講師はダメだな」と評価されてしまうのです。これほどもったいない(悲しい)ことはありません。
本来は気にする必要のない部分を気にしすぎるが故に、別の理由で「NG」を食らってしまう。これこそまさに(適切な表現ではないかもしれませんが)自爆です。私はあなたに「自爆」だけはして欲しくないなと思っています。
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ところで、当然ですが私にも口癖はあります。そこで私自身の口癖について列挙してみることにします。このような授業を(有料で)提供している立場として、まずは自分の話し方や講義の状態を客観視できることは最低限だと思っています。自分の話している姿を見たり聴いたりすることはもはや「仕事」だと思っています。そんな私が自分自身の口癖として認識しているものを、(少しばかり恥ずかしいですが)列挙してみたいと思います。
「え~」(文と文の間によく発している)
「まぁ」(文頭に無意識に発している)
「うん」(聞き手に理解を求めたいときや文と文の間によく発している)
私は自分のyoutube動画や収録講義などのアーカイブ映像などを徹底的に観察します。
さて、実は私はこれらの口癖をなおそうとは思っていません。これらの口癖は、今でもそのままに口から(おそらく)発しています。
なぜだと思いますか。答えは「他の印象が勝っているから」です。
私は企業研修やワークショップにおいて、とても「ていねいに」「聞き取りやすく」話すことを心がけています。「ていねいに」かつ「聞き取りやすく」話す。これは講師の基本と言えるでしょう。この基本さえ忠実にできているなら、聴講者は上述の口癖なんてほとんど気にならないはずなのです。
裏を返せば、上述の口癖が気になる(気にさせてしまう)話し方をしているとするなら、それはそもそも私の話し方の根本に問題があるのです。「口癖」のせいではなく、そもそも話し方がていねいでないし、聞き取りにくい。すごく大雑把に言ってしまうと、話し方そのものがどこか勘に触るのです。
この授業に参加している皆様はもちろんのこと、これから講師を目指す全ての人に伝えたいことがあります。「口癖」を気にする前に、そんなこと気にならないくらいに話し方の基本を身につけよう。「ていねいに」かつ「聞き取りやすく」話そう。そこをすっ飛ばして、そこをサボって、口癖をなおす・なおさないなんて細部の心配をしても意味がないよ。
私はプロ講師として、誰よりも「ていねいに」かつ「聞き取りやすく」話すことを意識してきました。だから「え~」「まぁ」「うん」といった口癖が自分にあることを認識しつつも、それは何ら問題ないと考えています。それでも、10年稼げる研修講師として今も生きています。おそらくこの事実こそが答えなのでしょう。
以上が私の答えです。あなたにとって、納得いくものであったなら幸いです。相変わらず私の話は小手先の話ではなく本質(ど真ん中)の話ばかりです。もし小手先の話がお好みの方がいたら、申し訳ありません。
しかし、だからと言ってなんでも「口癖」は許されるのかというと、そうでもありません。ここが難しいところですね。今からその微妙なところを突っ込んで論じていくことになります。
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参考までに、これだけは(できれば)言わないほうがいい口癖について持論を述べておきます。
・専門用語
・ジェンダー
・「バカ」「アホ」「クソ」など
まず専門用語について。
例えばあなたが「コアコンピタンス」という言葉が好きだとします。おそらくセミナーなどでも何度か使っている可能性があります。でもその言葉は、聞き手は知らない可能性があります。そんな専門用語やカタカナ語を乱発すると、聞き手の勘に触ることがあるかもしれません。
「こっちがわかる言葉で喋れよ」
「こういう頭良いアピールする感じ悪い講師っているよね」
そう思われてアウトです。専門用語は意外とその落とし穴に気づかない講師がいます。気をつけたいところです。
次にジェンダーについて。
人間は性別的には男女の2種類しかありません。「男は…」「女は…」という表現で物事を論じることは、決して少なくないでしょう。それ自体が悪いわけではありませんが、ひとつだけ気をつけたいのは決めつけていると思われかねない発言です。
講師は意識していなくても「男は…」「女は…」という発言があまりに多いと、性別で「あるべきこと」を決めつけている人と思われてしまう可能性があります。
講師自身はそんな意図は全くなくても、そのように受け取ったり敏感になったりする人もいるのが「いまの時代」です。もし「男は…」「女は…」が口癖の人は、少しだけ気を配りたいところです。
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最後に、「バカ」「アホ」「クソ」などの言葉について。
これは言うまでもないでしょう。講師が心の中で思うのは自由ですが、これを口癖のように無意識に発してしまう講師はちょっと危険です。
「実際そんな人いる?」とあなたは思うかもしれませんが、例えば(誰とは言いませんが)有識者と呼ばれファンもたくさんいるような有名人でも、SNSや動画などで当たり前のように「バカ」「アホ」「クソ」という言葉を使っている人は少なくありません。
それで実業に影響ないのであれば彼らはそれで良いかもしれませんが、人前で大人に指導する講師という仕事においては、極めて危険な口癖です。
もしあなたが普段からそんな言葉を気軽に発しているなら、今すぐにやめたほうがいいと思います。
最後にまとめを。
今回の授業の本質は、「口癖」そのものではありません。自分自身を観察することの大切さです。人前で話をしてフィーをもらう仕事をなさるのであれば、その姿や発する言葉を自分自身が観察するのは当然のことです。私の本音を言えば、これは死ぬほど嫌な作業です(笑)。
こんなに自分は話すのが下手なのかと、こんなに口癖を発しているのかと、愕然とします(笑笑)。しかしそこから逃げていると、やはり自分のことは見えてこないんですよね。
もしあなたが「10年稼げる講師」を本気で目指すなら、やって欲しいことがあります。自分の講義や話している姿を映像で残し、それを客観的に視聴してください。
「口癖」を把握することも大事ですが、そもそも「ていねいに」「聞き取りやすく」話すことができているのか。今の時代に言ってはいけないことが口癖になってないか。
それをチェックすることを絶対にして欲しいと思います。
(メルマガ『深沢真太郎の「10年稼げる研修講師になる授業」』2022年8月4日号より一部抜粋)
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