検察が控訴状を不良記載したという枝葉末節的な理由で不法政治資金を受け取ったウン・スミ城南市長に事実上免罪符を与えたのも大法院だ。「蔚山市長選挙介入事件」の1審を引き受けたウリ法出身判事は15か月間、本案審理を進行しなかった。文在寅元大統領を批判する大字報(デジャブ=チラシのこと)を大学の建物に貼り付けて建造物侵入という荒唐無稽な疑いで起訴された青年に1審判事は有罪を宣告した。こんなことを「良い裁判」とは言えない。ある判事は「あまりにも情けないので顔を上げることができない」と述べた。
彼の在任5年間、全国裁判所で2年以内に1審判決が下されなかった長期未解決事件が民事訴訟は3倍に、刑事訴訟は2倍に増えた。彼が高裁部長判事昇進制を廃止し、裁判所長候補推薦制を導入して判事たちが熱心に働かなければならない理由が消えたためだ。昇進概念をなくし、裁判所長も人気投票で選ぶという状況で、どの判事が熱心に働くだろうか。
判事たちの「ウォラベル=(work-life balance。仕事と個人の生活のバランス)」は良くなったが、裁判遅延で国民の苦痛はさらに増えた。迅速な裁判と公正な裁判は憲法が規定した手続き的正義の二本の軸だ。「良い裁判」のための必須条件だが、キム・ミョンス司法府では二つとも崩れた。
彼は自身の大法院長官就任(文在寅の指名)は「それ自体で司法府変化と改革を象徴するもの」と話した。しかし、自分と理念的性向が同じ韓国法・人権法出身の判事を要職に就かせ、権力不正裁判で政権側に不利な判決を下した判事たちは閑職に送った。
私的な席で後輩判事に「お前は誰の味方なのか」と露骨な敵・味方論を展開したりした。彼の側近判事たちは法服を脱ぐやいなや青瓦台秘書官になり、実体も不明な前任司法府の「司法壟断」を告発したという判事たちは当時与党公認を受けて国会議員になった。これは改革ではなく退行だ。大韓民国司法史に大きな汚点を残した彼=金明洙が退任の辞でこのようなことをどんな言葉で粉飾しごまかすのか、今から気になる。(無料メルマガ『キムチパワー』2022年8月11日号より)
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