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Young asian people working in the office. Co-working space. Social distancing.

無個性だと思っているのは自分だけ。実は日本人って「とても個性的」だ

自分たちのことを「無個性」だと自嘲する日本人。そんな彼らを見るたびに、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』著者でニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんには、何か思うことがあるようです。高橋さん曰く、実は日本人ってとっても「個性的」なんだそうです。

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日本人は、実はとっても“個性的”

先日の日本出張時、気がついたことがあります。仕事がら多くの業界の方に会うのですが、どの業界に限らず「日本人って個性ないですよね~」と自嘲気味に笑う方が結構な割合でいたということです。もちろんセリフはそれぞれバラバラです。「日本ってみんなオリジナリティがないよね」「この国って個性的な人が少なくないですか?」「ニューヨーカーってみんな濃いよねぇ」etc….表現の仕方は違っても、要は「ニューヨーカーに比べて、日本は個性を育てにくい国だ、もしくは日本人は個性がない」というような自虐的な内容です。ニューヨークに住んでいる僕に気を遣っているのか、あるいは本音ではない日本人特有の謙虚さ、みたいな表現方法かもしれません。例の「つまらない物ですが…」と贈り物を渡すアレです。

で、その直後、でもそんな国民性の中、自分は個性的なんですよ、というアピールが始まります。老若男女問わず、業種問わず、です。「でも、私は変わり者なのか、すぐに誰とでも仲良くなれちゃうんだよねえ」「でも、オレはちょっとおかしいのか、思ったことすぐに口に出しちゃうんだよねえ、ズバッとさ」…。

それ性格な。もっと言うなら、同じ人種間の同じコミュニティ内の自身のキャラ設定の自己申告な。もちろんそれも“個性”と言えなくはない。“個性”の定義にもよります。

ここで語りたいのは、世界的に見ることができる“個性”というものについてです。

大きく「日本人」というカテゴリーで、世界から見た場合、実は日本人って結構、個性的ではないかと僕は思うのです。周囲には割と多国籍な人間がいる環境の、僕が、です。

それはもちろん前述したような日常のサークル内での「誰とでも仲良くなれるムードメーカー」だの「思ったことを口にする一本気!」だの、ではありません。そんなもの、世界の人から見てわかるわけがないし、陽気なブラジル人より陽気な日本人は見たことないし、ホンジュラスのスラム街に行けば、日本のちょい悪オヤジは下を向いて歩くに決まってる。もしくは歩かない。

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以前、日本のある社団法人の集会がLAでありました。レストランの会食時、数人が野外の喫煙所で休憩しました。東北と関西と九州の代表者たちが、それぞれの地方色について雑談していました。大阪人おもろいでっせ。東北の人間はやさしいなぁ。福岡人はみんなお酒強いよ。他県の人間が集まると必ずといっていいほど、出てくる例の県民あるある、です。「同じ日本なのに、全然違うねー」とかなんとか。

そこに、メキシカンかエクアドル人かヒスパニック系の清掃のおじさんがやってきて、いきなりデカい音を立てながら灰皿の交換をし始めました。ドッカン、ドッカン、金属音を立て、まだみんな吸っている中、吸い途中のタバコごと捨てていきます。

NYから来た僕はついつい「おいおいまだ吸ってるじゃん」とクレーム。LA代表の年配の日本人は「いつもご苦労さん」と肩を叩きながらその清掃員を労います。英語が話せないということを差し引いたとしても、日本からの3人組は口を開けて、固まったまんま。日本じゃ見ない光景なのはわかりますが、しばらく口は開いたまんま、気をつけの姿勢。

全員がシンクロナイズドスイミングのごとくまったく同じ体制。県民によって、全然違うんじゃなかったの?県民性の違いは違いではない。世界の人から見た際、自己申告の「性格」を“個性”とはやっぱり言えないのだと思います。

では、世界から見て日本人の個性とは、ずばり日本製のプロダクト、もしくは日本流のサービスなのだと思います。もっと言うならそれらを制作、提供している事実。その人の、その体現方法がそっくりそのまま「個性」になっている。

そして、世界はそれ以外、認識しようがない。

ベタですがいまだにMADE IN JPANの車の信用性は世界でズバ抜けています。一時期ほどの市場シェアでないにしろ品質への信頼は絶大です。もちろん車だけではありません。日本製におけるプロダクトは、アパレルであれ、電化製品であれ、雑貨であれ、食品であれ、スポーツ用品、文房具まで、すべてが「高品質」のイメージです。いまさら力説するのも恥ずかしいくらい、当の日本人も含めみんな知っている常識です。

淡々と、とにかく品質のいいものを作る、もしくは提供する。それって世界から見たら、めちゃくちゃ「個性的」と言えます。実際、僕の周囲のニューヨーカーもそれらを個性的というイメージで話します。「真面目でいいモノ作るよねぇ、日本人って」って。

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ヒーロー、主役キャラではないかもしれません。「七人の侍」でいうところの三船敏郎演じる菊千代や志村喬演じるリーダーでは決してないですが、宮口精二さん演じる久蔵のような無口なストイックさを持つプロフェッショナル。そこには他に見ない個性が存在する。わかりづらいか、例え。

「うちのお父さん、面白味がないのよねぇ、お酒も飲まないし、勤務先の工場と自宅の往復だけの毎日。冗談ひとつ言わないし、何がおもしろくて生きてんだか」「なのに、どうしてアタシみたいなオモシロい娘が生まれたんだろう。アタシは工場なんかじゃなく、もっと自分だけの個性を磨いて自分だけしかできない仕事に就きたいの」とか話してる母娘がいたとします。どっかの地方で。

でも、もし、お父さん、その町工場で世界中に輸出しているとてつもなく綺麗な有田焼の職人だったとしたら。世界の人々がお金を出して買いたいと思う焼き物を日々作っているとしたら。めちゃくちゃ世界に通用する「美しいものを日々作り出せるという個性を持った人」になります。いや、屁理屈じゃなくて、真面目な話。

(だいたい自分のことオモシロいって言ってる奴で本当に面白い奴なんていない。100歩譲って面白いとしても、それクラスメイトの仲間内5~6人にだけだろう。1,000歩譲って本当に面白いとしても、世界基準で見ると通じないよ)

勝手な自分の妄想家族に、勝手に自分でキレたところで、まとめると、体現したもの、制作したもの、提供するものは、思惑や心情やニュアンスに比べて圧倒的に強い「個性」になるということです。彼の制作したものこそが「個性」とも言えます。

つまり「ムードメーカー」だの、「一途な恋心」だの、「頑固一徹」だのではなく、従事している仕事こそが本物の個性という考え方もあるのではないでしょうか。

自身の紐づいている仕事にこそ、個性が出るのだとしたら、「粘り強さ」だの、「お調子者」だの、「ヤンキー気質」だのを、その仕事に活かした方がいい。受け取る媒体側は、その産物、サービスでしか個性を見出せない。家族や友達にでもならない限り。

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わかりやすく伝統陶芸を例に持ってきましたが、どんな仕事でも同じです。

「オレ、ただのバーバー(理髪店)なんだけど」ー。

日本の理髪師の技術は世界トップクラスと聞きます。以前、ニューヨークで成功しているカリスマ美容師に話を聞いたら、ハサミの技術は日本の散髪屋のおっちゃんには敵わないと言っていました。トレンドを把握、もしくは作り出すのが僕たちの仕事で、職人技なら近所の理髪店の方が上だ、と。

世界中の人間がおしゃれヘアーにしたいわけじゃない。あなたのカット技術は、ニューヨーカーが求めている「個性」です。

「僕、ただの整骨院勤務なんすけど」ー。

日本の整体理論はアジア1位と聞いたことがあります。ということは世界一です。少なくともトップクラスです。日々の仕事を極めていけば、世界の人に求められる整体技術を持った人になる。「オレ、曲がったことが嫌いなんっすよねー!」とアピールするより曲がった骨を治す技術の方が、ずっと需要があります。世界に求められる「個性」です。

「小学校の教師なので、何かを作ったり、サービスしたりするわけじゃないんですけど…」

僕の友人に、ニューヨークの大学教授がいます。少ない日本人教授は生徒に人気があるのだとか。彼いわく「やっぱり日本人の気質ってやさしいからさ、ダメな生徒にも根気強く付き合っちゃうんだよー。最後までやさしく面倒見てくれるイメージがあるんじゃないかな、生徒側にも」

ひとりひとりの生徒に向き合って、我慢強く成長を見届ける。どうやら、世界的に見たら結構な「個性」だそうです。そんな個性、普通の仕事に就いている人には身につけられない。

「アタシ、ただの主婦なんですけど…」。

主婦業、頑張ってください。日本のHouse Wifeは僕もインタビューしたことのある栗原はるみさんらのおかげで世界的にも尊敬される対象になってきました。きめ細やかな気配りは、アメリカの対価をもらうサービス業でも太刀打ちできません。それだけで世界的に見れば「個性」です。いま、アタシがやっていることは世界トップクラスの仕事なのだと思えば、洗い物もまた違った意味が出てきます。

僕の高校時代、『東京ラブストーリー』というトレンディドラマが流行りました(トレンディドラマだって 笑)。確か月曜9時だったと記憶しています。火曜日のクラスの女子の大半が主人公「赤名リカ」の口調になってました。もちろんドラマの1クールの間だけ、です。自称・赤名リカは、結局、誰も赤名リカではなかった。

自身の紐づいている仕事にこそ、個性がでます。

口頭上でインスタントに身に纏う「個性」より、今の生業(なりわい)を本気で極めてみよう。

貴方の仕事は、きっと世界が驚くほどの「個性」を発揮する。

(メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』2022年8月23日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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