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プロパンガス業界の深い闇。アパート建築費用を入居者が肩代わり?

一般的に、都市ガスよりも料金が高めに設定されているプロパンガス。しかし中には、詐欺罪に触れるほど悪徳な商売に手を染めている業者も存在するようです。今回のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図──政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』では投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹兵輔さんが、そんな「プロパンガス業界の闇」を暴露。情報のない消費者が騙されるばかりのカラクリや、ボッタクリ業者の見極め方をレクチャーしています。

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アパート入居者は大損させられている! 都市ガスよりも料金が2~3倍も高いプロパンガス業界の闇!

みなさま、こんにちは!

「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき・へいすけ)です。

今回のテーマは、円安やロシアのウクライナ侵攻で懸念されるエネルギー価格の高騰に鑑み、ぜひ知っておきたい「プロパンガス業界」の闇についてです。

なぜプロパンガス料金は都市ガスよりも高いのか?

2016年4月から電力自由化(発電の自由化に続く小売りの全面自由化)が始まり、次いで2017年4月から都市ガス自由化(小売りの自由化)も始まりました。

電力も都市ガスも、市場の競争原理がはたらくことで、これまでよりも電力やガスが安く供給される可能性のあるタテマエが整ったわけですが、ロシアによるウクライナ侵攻や円安を背景に、エネルギー価格は上昇しています。

とりわけ都市ガスの自由化は、都市ガスの導管が行き届いている地域での都市ガス利用者にとっては、価格下落時には、それなりのメリットもありますが、プロパンガス(LPガス)利用の居住者にとっては、まったくメリットはありません。

むしろデメリットばかりが大きいでしょう。

驚くべきことに、日本全国で使われる家庭用ガスのうち、プロパンガス利用者の比率は5割を占めています(団地などの70戸以上のガス消費家庭に簡易設備でガスを発生させ導管で供給する簡易ガス事業を含む)。

都市ガスが隅々まで行き届いている大都会に居住している人には、日本にこれほどプロパンガス利用者がいるとは、ちょっと驚きの実態だったことでしょう。

都市ガス事業者は全国に約200社あるのに対して、プロパンガス事業者は、全国に約1万8,000社もあります(ちなみにコンビニの店舗数は全国に約5万5,000店)。群雄割拠の状況にあるのです。

にもかかわらず、現時点においてさえ、プロパンガス利用者は、都市ガス利用者よりも2~3倍も高い料金でぼったくられているケースが少なくないのです。

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なぜ、プロパンガス利用者には、そんなデメリットばかりが付いて回るのでしょうか。ここでいくつかのプロパンガス料金が高くなる理由を見ておきましょう。

この最後の理由はどういうことかといえば、アパートなどの大家さんは、新築時にプロパンガス業者と契約を結ぶだけで、ガス導配管費用、各室の給湯器費用(近年はエアコン代、インターホン代、Wi-Fi代などもある)をタダにすることができるからなのです。

たとえばアパートの戸数が10~20室あると、大家さんは1室当たり、追い炊き機能付き給湯器代だけでも、20万円から25万円前後の初期の設備費用がかかります。

アパートの戸数が10室なら200万円から250万円にもなり、戸数が20室なら400万円から500万円にもなるのです。

さらに、エアコン設置やインターホン、Wi-Fiなどを装備すれば、追加で15万円~20万円がかかるのです。

ゆえにそのぶんをプロパンガス業者に肩代わりしてもらえればアパートの建築費用は安くなります。

プロパンガス業者にとっては、新築アパートはプロパンガスの新規契約に食い込むにあたっての絶好のチャンスというわけなのです。

要するに、プロパンガス業者は、それらの費用をその後のアパート入居者からのガス料金で回収する仕組みになっているのです。

そのため、必然的にアパートなどの入居者のプロパンガス料金は高くならざるをえない構造があるわけです(大家さんとプロパンガス業者との間には、10年~15年の業者変更不可の契約の縛りがあり、途中で業者を変えると大家さんは違約金を取られます)。

つまり、プロパンガス利用のアパート入居者は、大家さんのアパート建築(設備)費用の一部を 肩代わりさせられているわけです。

ただでさえ高額のプロパンガス代に、さらに上乗せされた設備費用までを上乗せで払わされている──という構図ゆえに、プロパンガス利用のアパート居住者は、大損させられているというわけなのです。

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円高でも原油安でもプロパンガス料金には反映されなかった!

さて、LNG輸入価格は石油価格に連動していますが、1973年頃までは1バレル3ドルにも満たない安い原油価格(WTI)が、70年代の2度にわたるオイルショックを経て急激に上昇し、80年代初めにはピークの30ドル台を付けました。

その後、原油価格は低迷しますが、概ね20ドル前後をはさむ形で小刻みに上下するも、ほぼ安定していました。

しかし、21世紀に入ってからは、乱高下しながらも右肩上がりに値を上げ、ピーク時の08年代半ばには140ドル近くまで高騰します。

その後は同年9月のリーマンショックを経て40ドル近くまで急落するものの、10年ごろ には再び100ドルを超える水準にまで戻します。

そして、米国シェールガス増産の影響もあって、14年半ばから再び急落したのち、60ドル前後まで戻すものの、再び下落して30ドル台を付けたりで、2018年に再び60ドル台に上がったかと思いきや、下落して20年4月には20ドル台まで下落し底を打ちます。

しかし、2022年3月にはロシアのウクライナ侵攻で100ドルを超え、2022年9月現時点では、やや弱含みで推移しますが、100ドルをやや下回る高値水準となってきたのです。

非資源国の日本にとっては、こうした原油価格高騰のデメリットは計り知れないほどの甚大な影響を受けてしまいます。

円安とのダブルショックで、電気代やガス代はもとより、輸入物資全般に影響は及びます。

日本人が海外旅行する際には燃油サーチャージが加算され、もちろんクルマのガソリン代や冬の暖房用の灯油代も高くなります。

このままさらに円安がすすめば、エネルギー価格高騰で日本中があらゆるダメージに晒されるわけです。

ところで、かつて円高となり、石油価格が下落した時点でも、家庭用のプロパンガス料金は下がりませんでした。

つまり、そのころから平気でボッタクリ料金が続いていたわけです。

しかし、今回の円安と原油高によっては、今後においてプロパンガス料金はじりじりと今以上に値を上げていくことも否めません。したがってプロパンガス利用者は、そのための対策も急務となってくるのです。

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悪徳業者が跋扈するのがプロパンガス業界!適正料金は?

ちなみに、かつて円高と原油安の多大な恩恵を受けていたプロパンガス業界ですが、この業界にはもともと「透明性」や「明瞭会計」といった意識は乏しく、薄暗い談合気質の「不透明性」に覆われていました。

まったくの「自由価格制」ゆえに、地域によっては、標準家庭での都市ガス料金の2倍から3倍近くも高いプロパンガス料金がまかり通ってきたからです。

標準的な家庭(3人家族)では冬場に月間20立米程度のプロパンガスを使用するといいます(熱量は都市ガスの2倍なので都市ガスの場合には40立米に相当する)。

参考までに、次のような計算で導かれる従量制の都市ガス料金(東京ガス)と某プロパンガス業者のボッタクリ料金とを比べておきましょう(2022年8月時点)。

都市ガス料金が月間6,256円に対し、某ボッタクリのプロパンガス会社は1万7,800円で、およそ2.84倍もの価格差があるのです。

最初の契約の時には、プロパンガス業者は「うちは基本料が1,500円で単位料金が350円ですから、冬場の20立米でも8,500円と、都市ガス料金と比べても若干高いだけの金額ですよ」などと格安料金提示でアピールします。

しかし、それを信じて契約すると、その後は、知らないうちに基本料金や単位料金が30円、60円と、じりじり上げられていき 、いつの間にか基本料金が1,800円となり、単位料金が650円、800円と上がるのですから、極めて欺瞞的な業界なのです。

利用明細を見ても、従量の記載すらなく、料金体系がわからないものまであるのですから、必ずチェックして、従量記載がなければ業者に問い糺すべきでしょう。

こうした業者は、野放しですが、本来「人を欺罔(ぎもう)し財物を騙取(へんしゅ)する行為」は、刑法246条の詐欺罪に該当し、10年以下の懲役刑になるものなのです。

前述の某プロパンガス業者の月間1万7,800円などという料金は、完全にぼったくり価格だからです。

これを毎月毎月と続けていって、数十年とかのボッタクリを続けられてしまうのですから、強烈な悪徳商法といえるでしょう。

多くの人が、プロパンガス料金も都市ガス料金と同じような「公共料金」と信じているがために、業者のいいように勝手に値上げされても、「そんなものなのかな…」と押し黙ってしまうわけです。

プロパンガスの仕入原価は輸入元売会社がコストとマージンを乗せても1立米当たり、180円前後で卸に販売しています。

各地の卸業者が、それをタンクローリーで小売業者に運び、コストとマージンを乗せて220~230円ぐらいで販売します。

末端の小売業者 はそれを仕入れて300~400円ぐらいで消費者に販売するというのが標準的な流れなのです。

小売業者によって価格差が大きくなるため、隣の家のプロパンガス料金と自宅のプロパンガス料金が大いに異なることもありうるのです。

つまり、プロパンガス料金は、消費者にとって基本料が2,000円を超えていたり、1立米あたり400円の従量単価(単位料金)よりも高い価格の場合は、明らかにボッタクリ価格といえるのです。

ここはよく覚えてほしいところです。

必然的に、悪徳業者は小売業者に多くなる構図でしょう。

卸業者が直接消費者に販売しているケースでは、良心的な価格設定になっている場合が多いのです。

都市ガスのほうの料金自由化の影響は、将来のプロパンガス業者の淘汰へとつながる道でもありますが、いずれにしろプロパンガス利用で、一戸建てに住んでいて独自契約ができる人は、料金チェックを行い、ボッタクリ価格なら、業者の見直しが必要──ということなのです。

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プロパンガス利用アパートへの入居は要注意!

大都市で、築15年以内のアパートは、都市ガス利用が多くなってきていますが、一般的にプロパンガス利用のアパートに入居する場合は要警戒でしょう。

入居に当たっての家賃相場は適正でも、入居してから、プロパンガス料金がやたらと高かった──ということがあるからです。

そうならないためにも最初から、都市ガス導入のアパートを選択したほうが賢明なのです。

一人暮らしでガスをあまり使わず、月間1立米未満の場合なら、それほど気にすることもないかもしれませんが、1立米以上利用の人は、一度請求書記載の料金体系がどうなっているのか──といったチェックをすることは大事です。

チリも積もれば山になるからです。

プロパンガス業界は競争に晒され始めた!

ところで、プロパンガス業界は、これまでは閉鎖的な談合体質で、お互いの縄張りを守って競争を避けてきました。

しかし、近年は、従来型の閉鎖的体質の事業者と、顧客の奪い合いを平気で行う競争タイプ事業者とに2分化されるようになってきています。

仁義なき戦いが巻き起こっているのです。

消費者にとっては喜ばしい「競争原理」がはたらきはじめてきたわけです。

「保険の見直し」を謳う業者を真似て「プロパンガス料金の見直し」の旗印を掲げ、他の事業者の顧客を奪う先鋭的な事業者までもが登場しているのです。

いずれにしろ、プロパンガス利用者は、料金チェックだけは怠りなく、これからは不適正価格だと感じたら、プロパンガス業者を変更する検討も必要になることでしょう。

一戸建てに住んでいるプロパンガス利用の人は、ぜひ月々の価格を点検してみてください。

また、現在アパートに住み、ボッタクリ料金に遭っている方は、長期的には都市ガス利用のアパートへの転居を考えたほうがよいでしょう(プロパンガス供給は大家さんと業者との契約のため、アパート入居者の立場ではプロパンガス料金はどうにもできないからです)。

こうした問題について、マスメディアは報じてくれませんが、経済情勢厳しき折柄、自力救済の精神で、生活を少しでもよりよくするための工夫と努力は欠かせないのです。

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image by: Shutterstock.com

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投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。

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