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“アベ友”高島市長の動向は?広島にG7を奪われた福岡市長選の気になる行方

11月6日に告示される福岡市長選では、4選を目指し出馬すると見られていた現職の高島宗一郎市長の動向がにわかに注目を浴びているようです。国政への鞍替えはあるのでしょうか?今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では、著者でジャーナリストの伊東森さんが高島氏による市政3期を振り返り、高島氏が“アベノミクスの申し子”と呼ばれるようになった経緯や、G20に続いてG7サミットの招致にも失敗した背景を紐解いています。さらには、再開発が進む福岡市の直下に危険な断層があることを記し、留意すべきと伝えています。

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どうなる11月の福岡市長選挙“アベ友”高島市長の運命は?G7招致失敗、都市再開発の直下で“日本一危ない活断層”が蠢く

11月20日投開票の福岡市長選まで、2ヶ月。関係者はさぞや、ざわついているだろう。現職の高島宗一郎氏(47)は、4選の出馬が固いとみられる反面、さまざまな憶測も。高島氏が出馬への態度の表明を10月まで先延ばしたことを受け、「実は不出馬で、既に後継を指名している」。県内の政界情報を取り扱うネットメディアは今月、「うわさ」と称し、こんな記事を相次いで配信した。

記事中、後継と指摘された人物は西日本新聞の取材に「そのような事実はない」と否定。市長周辺も一笑に付した上で「市長を追い出したい勢力が流しているだけでは」
「福岡市長選、高島氏が電撃的に後継指名? 「うわさ」の人物に取材」(2022年9月20日付 西日本新聞me)

高島氏が“アベ友”であったことを受け、安倍晋三氏の死去にともなう来年4月の予定の衆院山口4区補欠選挙の候補者に名前が挙がることも。高島氏は、10月7日の福岡市議会決算特別委員会最終日以降に、「進退を決断する」としている。

市長選は11月6日に告示。今のところ市議の田中慎介氏(44)=立憲民主党、会社員の熊丸英治氏(52)がいずれも無所属で立候補する意向。

アベ友 アベノミクスの申し子「福岡から自民ののろしを上げる」

ここ10年の福岡市ほど、安倍・自民党政権下の知世を体現した自治体はないだろう。それほど、高島市長と安倍晋三元首相との関係は深かった。

高島氏が初当選した2010年当時、自民党は野党。高島陣営を仕切ったのは、福岡に選挙区をもつ麻生太郎氏。麻生氏は選挙前、安倍氏を呼び出し、政治経験ゼロの当時36歳の高島氏を指し、こう予言したという。「福岡から自民ののろしを上げる」

すると高島氏は現職を破り、初当選。2012年には安倍氏が自民党の総裁に返り咲き、麻生氏の予言通り、衆院選で政権交代をはたした。

高島氏と安倍氏との関係が決定的になったのは、14年の2期目の市長選投開票日。
「アベノミクスの成長を福岡で実感できるようにしていく」
当選後のインタビューでこう宣言した高島氏に対し、安倍氏はすぐに「ありがとう」と電話。以降、2人の間には携帯電話とメールのホットラインが通じた。

しかし福岡市OBは、こう語る。「官邸から(福岡市の案件で)指示が降ってくるので、霞が関(の省庁)は良い印象を持っていない。自治体は『全方位外交』をした方が良いんだが…」
「独走のリーダー【中】アベノミクスの申し子 高島市政の実像に迫る」(2018年11月8日付 西日本新聞me)

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G7招致失敗 安倍氏の退任とともに流れが変わる

当初、順調満帆だった福岡の高島市政も、安倍氏の退任とともに流れが変わる。2023年開催のG7サミット(先進7カ国首脳会議の)開催に失敗したことだ。

「ライバルは広島だと思っています」。高島市長は1月、岸田首相と面会したうえでこのように記者団に語る。福岡市は2019年のG20サミットの招致レースで大阪に敗れた。高島市にとっては雪辱の舞台。しかも決して夢物語ではなく、とくに年が明けたころはむしろ福岡市は有利だった。

2023年春に開業する高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」を筆頭に、福岡市では海外からのVIPを十分におもてなしできる宿泊施設の供給能力を急速に増強されてきた。首脳たちの専用機が発着する福岡空港は都心部と近く、アクセスも極めて良好。

一方、首相のお膝元とはいえ、広島市は弱点もあった。被爆地開催に対し、G7の核保有国が難色を示す可能性も。首相も周囲に、「特に英仏を広島に呼ぶのは簡単ではない」と漏らしていたほど。(*1)

しかし風向きが変わったのは、2月下旬のロシアのウクライナ侵攻。プーチン大統領は核兵器の使用をほのめかす。それに対し、日本政府内では核兵器の現実的脅威が一気に高まってきた今こそ、広島でG7サミットを開くべきではないかとの声が強まってきた。(*2)

都市再開発の直下で“日本一危ない活断層”が蠢く

高島市政の最大のレガシー(遺産)であるものが、都市再開発である。主要なエリアである天神と博多エリアの大型建築物は築40年以上のものが多く、老朽化が進む。そのため、福岡市はそれぞれ、「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」という再開発プロジェクトを進めている。

しかしそのことは同時に、「日本一危ない活断層」ともいえる市直下の活断層のリスクを抱えながらの市民生活を、強いることも意味する。

福岡市の真下を走る警固断層は、17年前の2005年にマグニチュード7クラスの「福岡県西方沖地震」を起こした。その地震により、“ねじれ”が生じた状況を専門家は、「日本一危ない断層」と呼ぶ。(*3)

市は東南海地方と同水準の耐震性能を目指す条例を作り、建築物の強靱化を急いではいるものの、コストの問題が立ちはだかる。さらに研究者によると、現在の活動周期は「満期」にあたり、いつマグニチュード7を超える大地震が起きてもおかしくないとのこと。(*3)

30年以内に地震が発生する確率は、0.3%~6%。政府はマグニチュード8の巨大地震につながるおそれのある富士川河口断層帯などと同じ「Sランク:発生確率高い」に位置づけている。

■引用・参考文献:(*1)西日本新聞、2022年5月29日付朝刊/(*2)西日本新聞、2022年5月29日/(*3)RKB オンライン 2022年9月3日「日本一危ない “ねじれた断層”が九州にあった 政府は地震発生確率「Sランク」に」

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image by:高島宗一郎Facebook 

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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