橋の爆破で別次元に突入。激怒のプーチンが核ボタンに指を置く日

 

このようにウクライナ支援拡大と防空システムの供与を後押しすべく情報戦略が取られていますが、これが実はウクライナ国内で懸念すべき状況を生み出しつつあります。

それは、ロシアからのレベルアップされたミサイルによる攻撃に対抗するための防空システムの供与を急ぐゼレンスキー大統領と、ウクライナ東南部戦線でロシアから集落を奪還する反転攻勢を行っている最前線との思惑のずれです。

最前線としては、今、勢いに乗っており、ロシア軍を押し返すために欲しいのは、例えばアメリカのハイマースであり、より高性能かつ高威力の重火器と思われますが、ロシアによるミサイル攻撃によって優先度が都市防空システムの供与に移ることで、前線の士気および戦力にネガティブな影響がでるのではないかとの懸念です。

「徹底的に叩いて、ウクライナへの侵攻を諦めさせるのだ」と盛り上がっている状況に水をかけて冷ましてしまうのではないかと。

しかし、その最前線での躍進は、もしかしたらロシアに絶好の言い訳を与えるかもしれません。

今秋開催された国連総会の緊急会合では、ロシアによる一方的な4州の併合を国際法違反だと非難する決議が143の国々からの支持を得て可決されましたが(反対はロシア、ニカラグア、北朝鮮、ベラルーシ、シリアで、中国やインド、ロシアと関係が深いアフリカ諸国などは棄権)、ロシアはもちろん“住民投票の結果”なるものを根拠に反対し、そして「現在、ウクライナ軍によって行われている“反転攻勢”こそが、ロシアの領土の安全を脅かすテロ行為であり、ロシアはそれに反抗する権利を有するのだ」と自分の行為は棚に上げた主張を行うことで、戦争の性格を意図的に変えようとしています。

元々は特別軍事作戦でしたが、4州の併合を一方的になした今、領土の自衛戦争に看板が挿げ替えられ、それはまたロシアの法が定める核兵器使用の要件を満たすという主張を後押しする方向に向けられています。

私はまだ実際にプーチン大統領が核兵器使用に踏み切る可能性は高くはないとみているのですが、少なくとも要件を満たすという状況にしておくことで、これまでに比べ、はるかにロシアによる核使用の可能性をアピールしやすくなり、それはプーチン大統領が恐れていると言われているNATOによるロシアへの越境攻撃を阻止するための“抑止力”として作用するという狙いが実現するというものです。

NATOが実際にロシア・ウクライナ国境を越えてロシアを攻撃するシナリオは考えていませんが、問題は【ロシアがNATOの行動をどう捉えるか】で、こじつけでも本土攻撃とプーチン大統領が定義し、認識した場合、その時の“追い詰められ度”によっては、核使用一歩手前くらいまでは進めるかもしれません。

しかし、解決に向けた策という観点からも、新たな段階に移ったかもしれないという可能性も感じています。

それは、(プーチン大統領に近い)ロシア・クレムリンの関係者の言葉を借りると「ウクライナを軍事的に侵攻することは実際にはさほど難しくない。ただ、ウクライナに手を出した以上、その後見人を自認し、ロシアの隣に最大の抵抗勢力を置き、育てようとするNATO、特にアメリカが一線を越えることを恐れている。ロシアにとって向かい合うべき相手はアメリカとNATOであり、ウクライナではない」「問題を解決するために対話を行うのであれば、相手はウクライナではなく、あくまでもアメリカとその仲間たちだ」といった主張がちらほらモスクワから聞こえてくるようになったことです。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • 橋の爆破で別次元に突入。激怒のプーチンが核ボタンに指を置く日
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け