4.なぜ病院に連れて行けなかったのか?
息子さんが亡くなられた状況について、元妻は「お母さん、僕が死んだら悲しむやろなって」「『死ぬ死ぬ』とはいっていたので」「だからその時に、私がすぐに気づけばよかったんですけど」「私自身がその時は分からなくて」「あとで気が付いたんです。もうその時は遅かったんです」と話します。
こうした言葉を聞き「なぜ、病院に連れて行かなかったのか?」と思う人もいるでしょう。
それは教義がすりこまれているがゆえに、できないのです。
息子さんような「霊の声が聞こえたりする」ことは、幻聴とは捉えられず、教団では「霊界と通じ合っている人」と思われて、問題ないとされています。
さらに精神的に問題がある人に対しても、「サタン(悪霊)が心に入った」状況と教えられます。
先祖の悪霊が影響しているともいわれて、神様や教祖夫妻に祈ったり、先祖解怨すれば、悪霊が出ていき、心の病が直ると思わされています。ですので、病院に連れて行くことを、まずしません。
今回は、心の病の現実をしっかりと見極められなかったために、手遅れになった事例なのではないかと思っています。この世をサタン世界と位置付けて、社会の力を一切、借りようとしない。ここにこそ、今回の問題の本質があるといえます。
ただし最後の方で唯一、彼女の本音も出たようにも思えました。
「父親と子供とりなしてあげたっかたけれどそれができなかった」「できてたら、こんな結果になっていなかったんじゃないかという思いがある」
本人は気づいていないかもしれませんが、「自分の教団の入信がきっかけで息子の悲しい自殺が起こったかもしれない」と、母親としての本音の一面もみえています。ぜひとも、この点に気づいてほしいのです。
いつもそうです。自分たちがマインドコントロールされて、どのような結果をもたらすのか。本人は、その時には気づけません。時が経ち、教団を離れた時に、教団からの指示により発言をしたことへの後悔は必ずやってきます。
このような悲劇に遭うのは、橋田さん夫婦の事例だけではありません。今も多くの信者を持つ家族が、苦しんでいると思うと心が痛みます。
今回のケースを通じて、被害者に対して教団がどう接するか。信者にどのような行為をさせてくるのか。見本のようなものを示してしまったのではないでしょうか。結局、自分で自分の首を絞める結果になっています。
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