史書、「吾妻鏡」では義時が仮病を使って難を逃れたのを想像させる記述になっています。このことから、永井説以前は義時黒幕説が有力でした。日本史の授業でも先生は義時が実朝暗殺を企てたのだろうとおっしゃっていました。女子生徒のショックは大きくなりましたね。
『草燃える』から年月が経ち、実朝暗殺事件の研究が進み、源仲章に着目されました。実朝の和歌の指南役であり、後鳥羽上皇が実朝を取り込む為に鎌倉に送り込んだ男であると判明します。実朝は頼朝に勝る官位を授けられ、和歌を通じて後鳥羽上皇に心酔、鎌倉の武士団から浮いた存在となっていました。
せっかく、朝廷、都の頸木から解き放たれた関東の武士団にとって実朝の後鳥羽上皇への傾倒は裏切り行為でした。そこで義時は仲章もろとも実朝を葬り去った、と従来の義時黒幕説を補強する学説が提示されました。非常に説得力があると思ったものです。
『草燃える』も『鎌倉殿の13人』もあくまでドラマ、史実ではありません。史実を踏まえながら、あるいは史実をネタに面白いドラマを描く三谷幸喜氏の手腕は凄いですね。
ドラマが完結し、筆者の脳裏には高校時代が浮かびました。
純情青年義時が権力の亡者になってゆく姿のショックを受けた女子生徒の姿がまざまざと蘇りました。
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