ロシアの状況
ロシア国防省は11日、ウクライナでの軍事作戦の指揮をとるスロビキン氏に代わり、ゲラシモフ参謀総長を新たな総司令官に任命したと発表した。
国防省とワグナー軍の反目に対して、国防省優位をプーチンも認めたことでの人事であろう。もう1つ、国家総力戦になり、国軍の全体を指揮する参謀総長が司令官になるしかない状態になったことが大きい。これで、特別軍事作戦という1つの作戦ではなく、国家総力戦に衣替えしたことになる。
しかし、ゲラシモフ参謀総長での戦争がうまくいかないと、最後はプーチンが直接陣頭指揮するしかなくなる。そうなる可能性も大きいような気がする。
国家総力戦になり、ロシア政府は、今まで18~27歳だった徴兵対象を30歳まで引きあげ、200万人規模の徴兵を実行するようである。装備がない状態で戦争に勝つためには、歩兵の無駄の多い突撃作戦しかありえない。ソルダーで、その攻撃が有効であると示している。
もう1つが、50万人ともいうアルメニア、ジョージア、タジキスタンなどに、逃げていったIT技術者をロシアに戻すために、IT技術者の兵役義務解除するとしたが、ロシア政府はさんざんうそを言っているので、信用しないようである。
そして、火砲や弾薬も不足して、砲兵訓練をした動員兵も、歩兵として前線に送っている状態である。無駄な突撃で多くの若者が、死んでいくことになる。
このため、プーチンは、ロシアの防衛産業が戦争装備、兵器生産不足、特に航空機生産不足であるとの批判に対して、スケープゴートを探しているようで、11日の閣僚会議で、デニス・マントゥロフ副首相に対して、防衛企業との契約遅れと生産遅延を「ふざけているのか」と叱責した。
しかし、防衛企業も契約すると、期限厳守であり、欧米からの航空機、関連部品、スペアパーツの供給禁止であり、遅れると刑事罰になるとのメドベーシェフの威嚇もあり、そう簡単に契約できない。特に工作機械のメンテができないので精度が出ないことや高度な半導体がなく、製品の質を下げて、生産するしかなく、その改造設計に手間がかかっている。
T-55やT-64などの50年前の戦車は、高度な半導体が使われていないので、今後、その戦車の手直しになるようだ。最新鋭航空機は無理で、数世代前の航空機で我慢するしかないし、ミサイルも精密誘導は無理であろう。
もう1つが、プーチンは、負傷兵で手足を失った人が多いことで、義肢が必要で義肢装具士の動員免除をするよう指示した。
もう1つが、戦費も膨大であり、ロシアのウォロジン下院議長は13日、ロシア国外に逃亡し、ロシアの国家や軍隊を「侮辱」したロシア人の財産を差し押さえるとした。海外逃亡のオリガルヒの資産没収になる。ロシア国内企業などからも、利益の50%以上の税金を取り立てることにして、軍国ロシアを作ることになる。一般国民の税金も大幅な増税になる。国家総動員である。
この戦争に勝つために、プーチンは、200万人の軍隊を創設する計画であり、防衛産業への学徒動員も予定しているようである。すべての人民を戦争に駆り出すようだ。そして、ロ下院軍事委員会のソボレフ元中将は、来るべきNATOとの決戦のためにはロシアの若者全てに半年以上の軍事訓練を受けさせるべきだと主張している。
しかし、ロ軍はウクライナへのインフラ攻撃を防衛産業のミサイル生産スピードに合わせるしかなく、ウ軍ナタリア・グメニユク報道官は、「おそらく、大規模なミサイル攻撃が準備されているでしょう。しかし、彼らが準備するのに10日から14日かかります」とのことである。
その言葉通りに14日にミサイル攻撃があった。ドニプロ市集合住宅への対艦ミサイル着弾で集合住宅が半壊して、死者数が12名、負傷者数が64名となっている。キーウにはS300ミサイルと巡航ミサイル38発の攻撃中25発を迎撃したという。キーウでの被害は、今のところ、報告されていない。
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