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その3 育休期間のリスキリング、子育ての苦労を理解すれば良いのか?

岸田総理は「新たな分野で活躍するための能力・スキルを身につけること、いわゆるリスキリング」を支援するとして、育休中の人々に支援を行うと述べて、大炎上しました。恐らく子育てを経験していないのだろうし、とにかく2023年のこの世界でそうした発想をしてしまうというのは、全くもって弁解の余地がありません。

では、岸田総理や政府は、そんな「子育ての忙しさ」に理解や共感を表現していれば良いのかと言うと、そんな簡単な話ではありません。育休とキャリアの問題としては、男性が育休を取ったらハラスメントに遭ったので、問題だと言う議論がありますが、これもズレた議論だと思います。何故なら問題の本質は、女性も男性も変わりがないからです。

問題の本質を考えるために、2つのストーリーを検討してみることにします。

1つは、有能な社員(Aさんとします)が2年とか3年育休を取ったとします。そうすると、その間その人材が担当していた「開発」とか「調整」とか「営業」あるいは「管理監督」といった業務は、別の人が担当することになります。

その場合は、育休入りする人の同じ部署の1年後輩とか2年後輩の人物を充てることが多いわけです。この人を仮にBさんとしましょう。そうすると、その育休前には、AさんがBさんの指導役で、1年先輩だったのが、2年の育休が明けるとBさんの職位が2年分昇格する一方で、Aさんは滞留しますから、AさんとBさんの職位が逆転します。

そうすると、Aさんが復帰した場合には、Bさんとの関係も逆転します。2年分の技術革新だけでなく、この2年、取引先とのトラブルを乗り越え、過去から引きずっていた問題を解決したというような業績の全てがBさんの成果ではないにしても、とにかく2年間に起きたあらゆるドラマ、トラブルとその解決の全てに関与してきたBさんに対して、Aさんは大きく遅れを取ることになります。

ところが、先輩後輩カルチャーの強い職場風土では、Aさんは依然として先輩ということになります。ですが、業務の内容としてはBさんのほうが日々の仕事を回すだけの「生きた知識経験」を独占しているわけで、Aさんは後手に回るでしょう。そうなると、お互いの自尊心を調整するのが難しくなります。次の管理職昇格の候補になるのはBさんであり、Aさんではないということになると、Aさんは壊れてしまうかもしれません。反対にAさんに配慮しすぎると、Bさんという人材は流出するかもしれないわけで、この問題はかなり深刻です。

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