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絶望のプーチン。ロシアの望む形でウクライナ戦争終結などあり得ぬワケ

開戦から1年となる2月24日を前に、東部を中心とした地域で激戦が続くウクライナ戦争。両国とも軍の消耗は激しいものがありますが、今後この紛争はどのような推移を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』ではジャーナリストの内田誠さんが、予想されていたロシア軍の「春の大攻勢」が既に1月末に始まっていたという専門家の見方を紹介。さらに戦争収束に関しては、「プーチン政権が望む形で終わる可能性は非常に小さい」との予測を記しています。

絶望に等しいプーチン政権下で戦争収束の可能性は低い

今、ロシアの侵攻によって大変な戦争が起こっていますけれども、これが仮に終結した後の世界はどうなるのだろうかということについて、それをビジョンとして出しているところは勿論ないでしょうね。解らないから、です。何よりも「解らないから」ですけれども、色々なことが起こりうるので。まあ、正直に言ってしまえば、この戦闘というか戦争が終わったあとで何がどうなっていくのかに関心があるので、軍事的な情報も、それにまつわる政治的な状況についても細かく詳しく見ていかなければいけないのではないかと考えているわけなのですね。で、今日もウクライナの話です。

私は例によって専門家ではないですから、色々言われていることの中から自分なりにくみ取ったことをここで再構成してお話ししているのに過ぎません。専門家の方、色々な専門家がおられますが、自衛隊の出身の高級軍人というか高級将校というか、将軍の「将」という字が就くところまで行っている人たちの話していることは、なかなか興味深いなと思っていつも聞いているのですが、いわゆるロシア軍による大規模攻勢というね、春の大攻勢があるのではないかと言われていたことについては、「いつ始まるのだろう、いつ…」と言われていましたが、既に1月25日あたりに始まっていた、というのがもっぱらの見方のようです。現象として見えているのは、ウクライナの東部での最前線のところ。バフムトというところが有名になりましたけれど、そこから北に向かって大きな町が今大変な最前線になっていて、ウクライナ側から見てもこれまでのロシア軍の攻勢と比べられないくらい激しい攻撃が行われていると、いうことのようです。

プーチンの無茶振りにゲラシモフが仕掛ける異次元の戦争行為

まあ、もう少しお話ししますけれど。全体としてプーチンさんの絶望というか、そういう地合でことが進んでいるのではないかなという気がします。彼にはある種の希望があるのでしょうが、それは客観的に見れば絶望に等しい。少なくともロシア、プーチン政権が望む形でウクライナ侵攻の一連の出来事が収束していく可能性は、非常に小さいのではないかなというように思います。

今現在、非常に激しい攻撃が行われているのは、プーチンさんが先日「3月末までにドネツクとルガンスク、この2つの州を完全に制圧せよ」という命令をロシア軍に対して下した。そのロシア軍は参謀総長であるゲラシモフさんの元にあるわけですし、未だに特別軍事作戦といっているウクライナ侵攻の総司令官という意味でも、ゲラシモフさんなんですね。このゲラシモフという方が全体の指揮をとって、明らかにこれまでとは違う次元の戦争行為をやっているというのが現実なのだと思います。

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ベトナム戦争ピーク時の米軍と同数の兵でウクライナを侵略するロシア

で、3月末までに目的を達するのかといえば、そう簡単な話ではないでしょうが、私のような素人が見ても、それまでの司令官の人たち、何人かいましたけれど、あっという間に代えられてしまった人もいましたが、いずれにせよ、ロシアが保持している軍事力のある一部分しか代表していない人が司令官になっていた。もちろん、特別軍事作戦で、東部の2州にいるロシア系の人たち、ロシア語話者、こういった人たちを「救う」のだという話で、軍事目標はそこに限局されていたので、「特別軍事作戦」で良かったのかもしれませんが、実際やってみたら全然ダメだったということ。

その辺はもう繰り返しませんが、この1年間、失敗に次ぐ失敗を重ねて、貴重な正規軍の優秀な部隊なども全滅に近い結果になってしまった。そこに部分動員があり、さらにまたこれから動員が掛かるのだと思いますが、なんと、35万人から、周辺のロシア軍を入れると50万人の兵士がこのウクライナを攻めている状況。まあ、全員が銃の引き金を引いているということではないのでしょうが、参加しているロシア兵の数が50万。この50万という数字は割とセンシティブな数字で、ベトナム戦争の当時、米兵が最大に派遣されたときの数字が50万。確か50万だったと思うんですね。改めてベトナム戦争を振り返ってみて、まあ凄まじい戦争だったわけですが。米兵は5万人くらい死にました。ベトナム人は200万人死んでいるんですね。そういう戦争でしたが、そのときに米軍がベトナムに派遣したのとほぼ同じ50万のロシア軍部隊が、他国であるウクライナに対する侵略行為を現にやっている。

1日800人以上の死者を出すも攻めきれぬロシア軍

既に「大規模攻勢」が始まっている、強まっている、攻撃の仕方が大変強まっているのは、人数がたくさん掛かっているからに過ぎないのですよ。誰が見たってそうですよね。いわゆるエリート部隊と言われるような空挺部隊、最初の頃の空港の戦いでほとんど全滅に近いところまでやられてしまっているので、その他色々なところで優秀な軍隊は大体潰れてしまっている。これもまた凄い話なのですが。

で、今、何をやっているかというと、新たに編成された部隊でしかも例の突撃作戦のようなことをやっている。毎日とんでもない数のロシア兵が死んでいるのです。要するに機関銃の前に身体をさらすようなことを新しく加わった兵隊に強い、突っ込ませて次々と死んでいく。そうするとウクライナ軍の対応の状況が分かるので、そこに砲撃を加える、正規軍が攻めていくということのようです。そんな戦法があるのかなと思いますが、実際に一番多い日で八百数十人が死んでいる。ウクライナ側の発表が元になっている数字ですから、どれくらい正確なのか分かりませんが、おそらくそう違った数字ではないのではないかと思います。そういう攻撃でとにかく押して押して押しまくっている。まあそれでもうまく押せていないわけですが…。ウクライナ軍からしたら毎日とんでもない数の弾が飛んでくる、人間も攻めてくるわけで。当然排除するわけですが。いい加減、疲れるだろうと思います。

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開戦1年目にロシア軍が再び首都キーウ侵攻か

東部にロシア軍は増援部隊を入れた、でもウクライナ軍の方が対抗してそこを死守するために増援部隊を送れるかというと、これはなかなか苦しくて、一つは例のミサイル攻撃があって、これに対応するために一定の兵力を割かなければならない。それからもっと大きいなと思うのはベラルーシの国境地帯に15万人くらいのロシア兵がいるそうですね。部分動員されたけれど前線に投入されなかった人たちで、ベラルーシ軍に訓練してもらって待機している。

そうすると、また1年前の2月24日のように首都キーウに向かってロシア軍が列を成して攻めてくるというようなことがあるかもしれないので、やはり一定数の部隊を備えておく必要がある。やはり東部に援軍は送りにくい。それはロシア側も計算ずくでやっていることなのだろうと思います。そういうのが見えてきてしまう。ゲラシモフが司令官になると、ロシアの正規軍だけではなくてドネツクとルガンスク、一応独立国の体裁になっているじゃないですか、そこの部隊、要はウクライナ人なんですが、その部隊を含めて、ロシア軍の統括の元に置くと。つまりロシア軍の一部に組み込むようなことをしたようですから、使える軍事的なリソースを全部一つにまとめて、ゲラシモフ氏が政治的軍事的目標を達成するために何をどう動かすか、一元的に決めているということでしょう。

徹頭徹尾ウソしか口にしないプーチン

ある意味当たり前だろうと思いますが、これまではロシア軍にやれていなかったことをケゲラシモフがやっている。変な言い方ですが、やっと戦争らしい戦争をする人たちになってきたという感じがします。でも滅茶苦茶焦っているのは、プーチンさんが「3月末までに」と時間を区切ったということが一つ、もう一つは西側諸国から供与される新しい戦車群、これが戦場に入ってくるまでに圧倒的な優位優勢を作っておかなければ、まあ、大変なことになるということ。この2点が理由で激しい攻勢になっているのだろうと思います。

しかし、考えてみると、そういう全兵力を動員してウクライナの重要な部分を切り取るということをやっているわけですよね。これ、誰がどう見ても「特別軍事作戦」ではないですよね。ごく普通に侵略戦争。勿論、最初からそうですし、そう見えていましたし、それに違う要素などほぼ無いに等しいわけですが、そのゲラシモフさんのようなやり方を使ってこれから戦争行為を行うということは、プーチンさんが最初にもうけた課題は嘘というか、そんなものどうでもよいということなのではないでしょうかね。これは最早「特別軍事作戦」ではなくなっているということを如実に示しているようにも思います。

(『uttiiジャーナル』2023年2月19日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: Володимир Зеленський - Home | Facebook

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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