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保身のために「いじめ第三者委」を設置の異常。南国市と海南市の呆れた惨状

さまざまな紆余曲折はあったものの、いよいよ4月1日に設置されるこども家庭庁。HPにも「こどもまんなか」を掲げる同庁は、いじめ解消にも大きな力を発揮することができるのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、これまで何度も取り上げてきた高知県南国市と和歌山県海南市の、あまりに酷い教育委員会や市議会のいじめ対応を改めて紹介。その上で、こども家庭庁へ抱く淡い期待を記しています。

教育委員会も市議会も首長も動かず。いじめ被害者と家族を冒涜する2つの自治体

全国のいじめ問題では、隠ぺいや被害者を貶める教育委員会の暴走が後を絶たず、その氷山の一角が報道されている。

なぜ、氷山の一角かと言えば、報道されるのはごく一部であって、同様の被害を受けている被害者が無数にいるからだ。SNSなどのインターネットで注目される事件もあれば、マスメディアが報じるケースもある。いずれにしても信じられないような酷い対応が続き、被害者側は何度も追い詰められていく。

私は、前回まで報じた和歌山県海南市の対応を見て、こどもの権利や被害者の権利を無視し、いじめ防止対策推進法に違反する行政委員会の共通点を記したいと思う。

根拠法なき高知県南国市の「小2水難事故第三者委員会」設置理由

2019年8月に発生した、生活用水などが流れる下田川で当時小学2年生の岡林優空君が亡くなった高知小学生水難事件では、『伝説の探偵』でも何度も記したように、いじめの目撃情報が相次ぎ、溺水時に一緒にいた子どもたちが、助けも呼ばず、優空君の自転車をその後乗り回したり、証言が二転三転するなど、誰が見てもおかしいということがメディアにも報じられた。

● 公式HP「team_ hinakun 高知県小学生水難事故

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高知県南国市(南国市教育委員会)は、第三者委員会を設置することを、令和元年11月に決めたが、その理由は以下の通りであった。

高知県内の報道機関に対しては「これまでに不確かな情報が流れているとして第三者委員会の設置を決定した」と説明し、ご遺族には「これまで、さまざまな不確かな情報が流れており」と第三者委員会の設置に要望に応じた理由を正式回答している。

しかし、いじめ防止対策推進法に基づくいじめの第三者委員会の設置については、重大事態いじめ(いじめにより生命や財産などに深刻な被害が生じた、不登校など相当な期間学校を休まなければならない状態)の疑いがあると認められたときであり、断じて「不確かな情報が流れている」という理由で第三者委員会を設置することはできない。

その理由は、不確かな情報が流れたということに対しての根拠法がないからであり、これがまかり通るのであれば、独立した行政委員会という王国は、恣意的に血税を使って恣意的な無法な委員会を形成できることになってしまうのだ。

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殺人未遂いじめを6年放置した和歌山県海南市の言い分

一方、海南市でおきた生命の危機もあったとされるあまりに酷いいじめ事件発生から6年放置し、重大事態いじめとしての申立から4年あまりも放置した和歌山県海南市(海南市教育委員会)ではNHK報道など地元に震撼が走った後、第三者委員会の設置を決めた。

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そもそも海南市では2013年にできたいじめ防止対策推進法要請されていたいじめ条例などがなく、この機に市議会で作ったわけだが、その内容は極めてお粗末で、議事の中で「文科省のガイドラインに沿った」という文言を削除したし、被害側の陳情を薄ら笑いを浮かべて否決したわけだ。この自治体で被害者になったらと考えたら、早々に引っ越しした方が良いかもしれない。

もともと、海南市教育委員会は、重大事態いじめの要件を完全に満たす状態で、平成31年の段階で重大事態いじめとの認識を示す教育長、校長の連名で公印が押された文書があるなど、明らかに放置ということを報じたNHKをはじめ大手メディアの報道に対して、市のホームページを使い、全くデタラメだと批判をしておきながら、騒ぎが大きくなったから、第三者委員会を設置するとコメントしたのだ。

ところが、いじめに関し第三者委員会の設置には、いじめ防止対策推進法第28条などの根拠法があり、設置の根拠として、報じられたからという理由は断じて認められないのだ。

それでも、騒ぎが大きくなって市民からも心配の声が届くから、第三者委員会の設置をするために市議会で予算を通し、これを設置したというならば、根拠法がなく、市民から心配の声ではなく、ふざけるなというクレームが相次いだから、保身のために血税を使うということになろう。ともすれば、市議会はお飾りに過ぎないということになろう。

「国は国、ここは海南市やで」いじめ被害者が浴びせられた暴言

海南市の市議会に意見をいうために被害者は陳情に立ったわけだが、そこで、こういう会話を聞いたそうだ。

「国は国、ここは海南市やで」

もはや、独立宣言ではないか…。

少なからず、上記の2つの教育委員会は、いじめ防止対策推進法を守ろうとは思っていない、「不確かな情報があるから」(南国市)「騒ぎになったから」(海南市)というように、到底、第三者委員会の設置の要件にも根拠にもならない理由を公言し、その設置を決めているのである。これが公務員であるから始末に負えないともいえるだろう。

まさに違法状態であり、ある種、監視機能があるはずの議会が全く機能しない。例えば、第三者委員会を設置しましたという高知県南国市は、再設置をするすると言って、およそ3年間、何も進んでいない状態なのだ。市議会には遺族側がいろいろ言ってきているからと言い、遺族側には、職能団体が応じてくれないと説明するのだが、市議会は追及すらしない。

つまり、議会が機能していないのだ。それでも、法律というのはよくできていて、そういう場合は、首長に当たる市長が腕を振るう場面になる。ここがダメなら、ここというように、いわゆるセーフティネットがあるのだ。

しかし、民主主義のはずが、その機関の中に王国が形成されてしまったようなところでは、首長すら自らの権限を理解していないのか、セーフティネットとしての機能が発揮されないのである。

きっと似たような自治体は他にもある事だろう。

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いじめ問題の解消も少子化対策の一環に

少子化対策と政府が言うならば、経済的な面や制度的な改善点なども当然だが、安心して子育てができる環境整備の中で、いじめ問題は解消の糸口くらいまでは見いだせるようにしてもらいたいところだ。

少なからず、きっとねつ造ではない議事録や公印が押された文書があり、報じられた違法状態のいじめ対応には、速やかないじめ防止対策推進法を順守するように指導をするべきであり、直ちに正常化をさせるべきだろう。

2023年3月10日に文科省が重大事態いじめについてはこれまでは首長に報告することにしていたが、4月1日以降は文科省にも報告するようにお願いし、こども家庭庁と連携するという体制で対応するというニュースが流れたが、解釈としては事務連絡の類である。

現場にいる身としては期待したいところであるが…、説明を受けても要領を得ないというのが本音だ。

今ある問題に直ちに対応した方が事態の把握には役立つと思うのだが…、どうするのかはいまいち見えない。4月1日以降どうなっていくか注視したいところだ。

やりたい放題の教育委や私立学校法人が処罰されない無法国家ニッポン

いじめ対策をやります、考えていますという報道をみますが、省庁の対策には、どうもピンとこないところがあります。特に私は、被害者側の支援に当たっているので、その立場からみると、景色が違うということかと思います。

一方で、やりたい放題の教育委員会や私学の学校法人などと対峙しますが、これが許される(処罰の対象にならない)のは、法の怠慢ではないかと思えてなりません。

そもそもいじめ対策的なものが始まって、30年とか40年とか言われてますが、ここまでも成果が上がらず、よりひどくなっているというのは、失策に次ぐ失策であると言っても過言ではないはずです。

民間企業に例えるのはちょっとずるいかもしれませんが、仮に民間だったら、ここまで成果が上がらなかったら、何度も倒産してるはずです。

問題意識を持っている議員さんから直接、電話をもらったりします。遺族や専門家の話を積極的に聴こうという議員さんは、ほんの一握りですが、います。

被害者は、いじめの構造から考えても、その数から考えてもマイノリティーでしょう。そして、複雑でいくつもの二次被害を受けていますから、丁寧に紐解くには時間も労力もかかります。選挙がある議員さん(立法府)には、実に効率が悪い問題でしょう、実際にそう言って話すら聞かない人はいました。票にならないと。

そういう意味でも、話を聞いて、何かの答えを見出そうとする議員さんは、本当に貴重な存在と言えますね。敬意を表したいと思います。

次号の頃には、4月になりますね。こども家庭庁がはじまり、何かが変わるのか、良い方向に行くことを願いたい…。私がパンクする前に…。

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阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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