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Front view portrait of a proud woman pointing herself in the street

精神科医が本気で考えた。マウントを取られた時にすべきこととは?

あなたは、人にマウントをとられたこと、逆にマウントをとったことはありますか? 今回のメルマガ『バク@精神科医の医者バカ話』では、現役の精神科医で内科医としての実績を持つバク先生が、なぜ人はマウントをとられるとムカッとしてしまうのか、について真剣に考え、その結論を語っています。

何で人はマウントを取られるとムカつくのか?を真剣に考えた結論がとんでもないことになった

みなさんこんにちは。新年度がはじまりましたがいかがお過ごしでしょうか。

環境が変わった人も多いかもしれませんね。環境が変わろうが変わるまいが、人がいればもめる種が生まれやすいという苦労は残念ながら変わりません。

今回は三人寄ればまぁまぁ発生するマウント合戦について私なりに考えたことをまとめたいと思って外来の合間に打っております。

マウント、取られたことありますか?

ということで、マウント、取られたことありますか?(もしくは取ったことありますか?)私は割とぼんやりしているのでマウントを取られていることに気づくのが遅れるタイプの生き物なので、「くっそ~~~~!!マウントを取られたぜえええ!!」となったことがほぼありません。というか多分自己評価が発達障害などのせいでまぁまぁ低いのでイラっとする前に「へー」と感心してしまう方が先に出るのかなと思います。

でも割と「マウント取られて辛い」という相談を受けたりするので世間的にはマウントは大きな問題?になっているようです。

で、「そもそも人間におけるマウントってなんじゃい?」から考えてみました。

よく聞くタイプとしたら

1.経済状況マウント:(旦那(私)はこんなにいい会社に勤めてるのよ系、実家が金持ち自慢系など。)
2.学歴マウント:(これは上の職歴も入ってる気が?他には「旦那(私)はこんな名門大学を出たのよ系」、子供がいい学校に行っている、合格した系など?)
3.家柄マウント:(うちの家系(旦那の家系)は武家で~、豪商で~、など)
4.友達マウント:(沢山いる、有名人が友達、など)
5.……

などを聞いた記憶があるんですが他にありますでしょうか。

因みにやんわりからダイレクトまでアピール度合いに差はあるようですが、私的には「なるほど!そうですか!」としか言いようがないのでマウントを取ってくる人にはどう返してあげたら良いのか割と悩みます。たぶん自慢してるんだろうしなぁ…。

取ってる人が読まれてたらムカッとされたかも知れないんですけど、こっちからしたら上の全部が「そうなんだー」程度の内容で反応に困るんですよね。ちゃんとマウント取られてイライラムカムカしてあげれる人は優しいなぁと思います。

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なんで人はマウントを取るのか

まずそもそもマウントって何で取ったり取られたりしようとするのかを真剣に考えました。私はよく発想がズレていると言われるのでたぶん人の心を理解するためにもここは真剣に考えるべき局面です。

人間がメンタルを大きくゆさぶる、ゆさぶられる時は大体本能に直結していることが多いですし、動物世界でのマウントを調べるのがここは妥当と判断し調べました。

「動物、マウンティング」と調べたら思い切り動物が発情期に相手を抑え込む話が出てきたので似て非なる単語だったので皆さんも気を付けてくださいね!(大丈夫やろけど)

「動物、マウント」で調べると「群れの中での優劣を明確化するために行う行為」と出てきました。絶対こっちですわ!マウント!謎に書いてて嬉しくなってきましたね。

…あれ?ニホンザルの話しかでてこないんですけど。

マウントはサルがすること…ってコト!?

ちいかわ気取りで見出しを書きましたが、研究として進んでいるのはニホンザルのものが多いようですが犬などにも存在します。犬や研究対象になっているニホンザルには群れ社会があり、優劣をハッキリさせておかないと無駄に食料や交配相手を巡って争いが起こり、最悪の場合殺し合いに発展しかねません。

それを未然に防ぐ行為が「マウント」です。群れの中で最も強いボスに対し、ボスより弱い個体は最初からボスに頭を下げたりおなかを見せたりして「いや~僕はあなたには敵わないです~」と服従の姿勢を見せ、無駄な争い=群れのパワーをとにかく落とさないように皆で団結して生存競争を目指します。

もちろんボスも自分の好き勝手して生きていけるわけじゃありません。群れの中で喧嘩があれば仲裁し、メス同士が争っていたら双方をなだめ、子供の教育にも尽力し、年を取ってきたら新しいボス候補と争い(時には命を賭けます)、敗れたらボスの座を追われ群れを追い出される存在です。

そもそも大自然の中でどーでもいいことで同族同士がチマチマ争っていたら格好の的になるだけです。隙を突かれて別の群れや他の種族から襲われたときに団結できなければ対抗手段もなくやられるだけです。

だからだれが一番かを常に明確化し、有事の際にはボスが矢面に立ち、弱い個体はボスの庇護を受け、ボスの指示に従い群れを守るというこの行動は種の保存としてはとても重要な話です。

…人間でそんな頼りになる人がマウント取ってきてましたっけ?

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人間界のマウントは全く理にかなっていない

人間は社会という群れの中で生活をしています。が、社会は今発達し、ニホンザルの群れのようなプライバシーゼロな集団ではありません。個人情報は保護され、個人の意思は尊重されるべきだ!という風潮も強くなりました。特に最近そんな感じしませんか?

そして何故か「個!」ということが叫ばれるほど「マウント」という言葉も広まっているように私は感じます。たぶん昔はいちいち「オラの家は名家なんじゃ~!」とか言わなくても周りの皆が知ってましたから言う必要性もなかったでしょう。名家の方だわ~と扱ってもらえて自尊心が満たされた世界は今は「プライバシー」という概念から消えました。

なので!セルフ!アピール!それがマウント!!

…をして果たして何になるんでしょうか?(何にもならない)

ニホンザルのようにほかのグループから攻めてこられた時にマウントを取ってきていたボスママとかボスお局とかボス上司とかは我々のために命懸けで戦ってくれるんでしょうか?くれませんよね?(くれるならマウント取られて嫌な思いはしないでしょう)

つまり今我々が体験させられているマウントを取られる行為はこう考えると

1.非常に動物的で(人間を人間たらしめる理性とは?)
2.非合理的(群れのメリットはほぼなく、ストレスにしかなってません)

な行動だと言えるでしょう。つまりマウントを取る人は大手を振って「わたくし、アニマルでしてよ」と宣言しているネイチャーに近いワイルドな方と言えるでしょう。

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マウントを取られてイラっとする理由も考えました

そんな野性的な人と同じ土俵でわーきゃー言うのは忙しい現代人にとってはナンセンスな行動です。が、マウントを取られると「イラっとする」という気持ちに何でなってしまうんでしょう?

これも真剣に考えなくてはいけません。

そしてそもそものマウント行為(動物)について目を向けることで私はヒントを得ました。

・動物は自分が絶対勝てない相手にマウントを取らない

これがイラつく原因のヒントだと直感的に感じたのでその方向で掘り下げていきましょう。

そもそも真のマウントには前述のとおり群れの秩序を守るという目的があります。その際とても大切なことは優劣を決する時、相手(仲間)にケガを負わせてはならない、傷つけてはいけない、ということ。だって仲間ですからケガさせたら群れとしては機動力や戦闘力を落とすことになり損しかしません。群れの未来のためにも可能な限り犠牲者は出してはいけないのです。

こんな真のマウントに求められる「なるべく相手を傷つけないように相手を完全屈服させる」のに必要なことは一体どんな条件でしょうか。

それは絶対的な力の差、つまりは「100%こいつには負けない!」という確信です。拮抗している実力差で争えば双方ボロボロになりかねません。(時々ボスを決めないといけないため双方決死の覚悟で戦う局面もあるでしょうが)相手を無駄に傷つけないためにもこの絶対的な力はマウントを取る側に求められる必須条件とも言えます。

しかし人間に置き換えて考えてみるとどうでしょう?

そもそも人間が人間にマウントを取る時にそこまでの覚悟をしている人はいないと思います。でも我々はたぶんマウントを取られると本能的に感じてしまうのです。

「マウントを取ってきたってことは…こっちに絶対勝てると思い込んで話しかけてきたのか!?」と…。

つまり100%バカにされているということを本能的に我々は理解してしまう→イラっとする、という理由ではないでしょうか。そこまでの覚悟をもってはもうマウントを取る人類はいないのに…。

こう考えるとまだまだ我々の心は野性味を持っている予感がしますね。

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マウントを取られたときにすべきこと

このメルマガを読んだ方はもう他人にマウントを取るなんて野性的なこと、興味がなくなられたのでは無いでしょうか?下世話な話ですけどマウントとったろ!と思う相手のために命賭けれるんか?と言われたら「嫌です」という人にしか人間はマウントを取らないと思います。

100%負けへんで!ドヤァ!と思いたいだけの人間の形骸化したマウントなんていい年こいた大人なら取るのも恥ずかしい行動です。(例外は後述します)

でも腹立つんですよね!マウント取られると!と思ってしまう人もおられるとは思うのでちょっと心の持ちようを提案していこうと思います。

1.経済状況マウント:(旦那(私)はこんなにいい会社に勤めてるのよ系、実家が金持ち自慢系など)

「へ~そうなんですね~すご~い!」

で終わりです。

妬んだり、相手に媚びてもあなたの経済状況は一切変化しません。(多少媚びたらお土産とかのおこぼれはもらえるかもしれませんけど微々たるものです)

でも相手がほめた分だけ万札をくれるならほめまくりましょう。私にも紹介してください。

でも経済状況でこっちに圧勝したとして何が変わるんでしょうか。何故勝たねばならぬと思ったのでしょうか……?もしかして群れの危機の時に率先して皆にお金を配る覚悟をさりげなくアピールしてくれているんでしょうか?なら服従しましょう!

2)学歴マウント:(これは上の職歴も入ってる気が?他には「旦那(私)はこんな名門大学を出たのよ系」、子供がいい学校に行っている合格した系など?)

「へ~そうなんですね~すご~い!」

で終わりです。

妬んでもあなたの学歴は変わりませんし頭も賢くなりません。ただマジで賢い人はいちいちこんなことを言いません。無勉強で東大に受かる人は他の人も苦労なく東大に受かると思い込んでいます。なので学歴マウントをしてきた人は「めっちゃ努力した結果この学校に行った人」ではあるのでそこは賞賛したらよいと思います。

しかし学歴で圧勝したところでその後は一旦何が……?今こうやってマウントを取るくらいのレベルの低さでは学歴が泣いているんじゃないでしょうか。不安になるマウントですね。

3.家柄マウント:(うちの家系(旦那の家系)は武家で~、豪商で~、など)

「へ~そうなんですね~すご~い!」

で終わりです。

…いや、本当にこれ以上何が言えますかね。別に今帯刀許可もされないし、米はスーパーで買えますし。貴族が日本から消えて何年経ったと思ってるんでしょうか。今は令和です。

しかし今後冷夏などが続き米不足などが発生した場合を考えると実家が農家マウントの人には全服従のポーズを決めてもいいかもしれません。食糧難の時に頼れるのはやはり一次産業の人です。

4.友達マウント:(沢山いる、有名人が友達、など)

「へ~そうなんですね~すご~い!」

で終わりです。

友達が多いことに価値があると思える小学生のようなピュアさは何事にも代えがたいことです。素敵ですよね。

有名人が友達についても下手したら相手の有名人はその人のことを知らないかも知れません。でもあの時の思い出があるからきっと今も私のことを友達と思ってくれていると信じる心は美しいですよね。

本当に有名人と友達であればあるほど正直他人には言いづらいことが増えるもんですけど。

しかしその美しい心で我々に圧勝しても群れの平和は守れませんし、むしろ混乱(私も紹介して欲しい!という人で出るでしょう)を招きかねません。マウントとしては間違えているんじゃないか?と書いていて気付きました。

という感じでマウントを取られたら常に「このマウントに勝利することで果たして群れは何を保証されるのか?」という目線で相手の行動を見てみてはいかがでしょうか。私は書いてて楽しくなって来たので 早くリアルでマウントを取られたい気持ちで一杯です。

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現代社会における正しいマウント

ここまで茶化しまくって終わってしまったら意味がないのでは?と思ったので現代社会における正しいマウントについて、を最後に書いて今回は終わろうと思います。

それは

・核(武力)を所有していることを公言し、有事の際には使用する覚悟を示すこと

です。

これはまさに原始のマウントとしても、現代社会においてのマウントとしても正しいことです。うちの武力はこんなにもあるんやぞ?そんなうちにお前喧嘩打ってええんか?いざとなったらぶち込むんやぞ?とアピールすることで無益な戦争は避けられ、現代社会(群れ)の安全性は向上します。

正しいマウントはやはり抑止力を持たないといけません。

物騒すぎる結論になりましたが今回はこの辺で失礼いたします。

マウントへの目線が変われば幸いです。

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文系から理転して医学部へ、医者になってからも内科医から精神科医へ転身を繰り返している落ち着きのないADHD当事者、依存症家族、AC当事者、毒親育ちのノンバイナリー(無性)。持ち前の衝動性で書籍を書いたりしながら常勤医として奮闘中のバクが、世間の目がまだまだ偏見に満ちている精神科領域について医療者目線と当事者目線で語ったり雑談したりします。その他産業医目線での復職についてや、DPAT(災害派遣精神医療チーム)の話、表ではいいにくいジェンダー問題や発達障害についての赤裸々なお話を不定期にお届け予定です。

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