ファン待望の新作映画『首』の完成報告会見の場で、北野武監督がNHK『どうする家康』をこき下ろし話題に。NHKといえば、最近ある対応がきっかけで視聴者から批判を浴びました。この問題について、芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんが解説します。
北野武が『どうする家康』を“間抜け”な本と批判?
“お蔵入り”か…と映画関係者たちの間で囁かれていた、『アウトレイジ最終章』から6年ぶりの、北野武監督作品『首』の完成報告会見が開かれました。ファンにとっては“長すぎる春”といった趣でしょうか。
製作費用15億円を巡る軋轢や、『東京五輪2020』の裏金問題で長期拘留中の角川歴彦容疑者を製作総指揮にクレジットするか否かがクリアになったわけですね。
また、北野監督がキャスティングの段階で最後までこだわった明智光秀役も、結局渡辺謙ではなく西島秀俊で落ち着いたようです。
西島は今やアカデミー賞国際長編映画賞受賞作品の主演男優ですが、世界的な認知度を確かなものにした北野監督の『Dolls』から約20年経ったとはいえ、恩師に“スケジュール、何とかなるよね…”と直接言われれば、例えスケジュールの空白は無かったとしても“No”とは言えないでしょう、それが監督と役者間の“仁義”というものですから。
しかし邦画時代劇に客が入らない時代に、15億円は破格の予算と言えるでしょうね。最近では木村拓哉主演の『THE LEGEND & BUTTERFLY』に次ぐ製作費です。
会見に集まったマスコミ関係者は、北野監督がこの『レジェバタ』に言及すると期待していたわけなのですが、何故かその矛先は『嵐』松本潤の『どうする家康』に向けられていました。
“人間の業や汚さ、男同士の愛、権力のための殺人が一切描かれていない間抜けな歴史本”だと…。
この発言で、私は『いだてん~東京オリムピック噺~』を思い出しました。
史上最低の平均視聴率8%ちょっとの、六代目中村勘九郎とビートたけしの大河ドラマです。
このドラマでビートたけしは“落語界の神様”の異名を持つ古今亭志ん生を演じたわけですが、本人的には演出や編集に強い“消化不良”を感じていたことは明らかでしょう。
北野監督が何故『レジェバタ』ではなく『どうする家康』に矛先を向けたのか…私は本意ではない製作陣からの演出に“大河史上最低視聴率作品の主演役者”というレッテルを貼られてしまった怒りだと解釈しました。それは4年経った今でも収まるわけがないほどの屈辱だったのではないかと。
ちなみに『いだてん~』の脚本家、宮藤官九郎は以来、単発ドラマしかNHKでは書かせてもらっていません。幹部連中もクドカン起用に及び腰になっているのでしょう。
『たけしのその時カメラは回っていた』は昨年春に終了、クドカンの連続ドラマ脚本はゼロ…これがNHKに“黒歴史”を作ってしまった関係者への“返礼”なのでしょうか。
『あまちゃん』番組紹介コーナーに能年玲奈の写真がない理由
そういえば4月3日から、BSプレミアムで『あまちゃん』が再放送されています。そのアーカイブス内の番組紹介コーナーを見た私は驚いてしまいました。
主演の“のん”(当時の能年玲奈)と『ピエール瀧』の写真だけが無かったからです。
ピエールは仕方ないとしても、主演女優の写真がない番組紹介なんて前代未聞です。
NHKにも“観る気が失せた”という意見が寄せられたらしいのですが、関係者によれば“能年名義の写真は前事務所が権利を持っているから使えない”大人の事情のためだという事らしいです。
7年前の独立問題が天下の国営放送局にまで影響しているとは…呆れるというか、驚いてしまいます。
これは能年時代の“のん”を知らない若年層への『あまちゃん』と、神木隆之介というヒーローの『らんまん』をカップリングして相乗効果で視聴率を上げていこうとするNHK側のプロモーション方法だというのですが、アーカイブス内の番組紹介を見てしまった私には不快感しか感じられませんが、皆さんはどう思われますか?
北野監督が『どうする家康』にチクリ!とやりたくなる気持ちもわからないではない…と感じてしまった私です。
編集部注:2023年4月17日現在、『のん』の写真のみ掲載されている
プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
記事提供:芸能ジャーナリスト・芋澤貞雄の「本日モ反省ノ色ナシ」
image by:Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons