13日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、Jアラートが発令され一時騒然となったのは記憶に新しい出来事です。その北朝鮮が、早ければ今月中にも再びミサイルを撃ってくる可能性があるそうです。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』で、日本で最も朝鮮のことを知っている一人である宮塚コリア研究所の宮塚先生が、現地メディアの報道から北の動きを分析しています。
今月中に軍事偵察衛星と称して打ってくる可能性
北朝鮮の朝鮮中央通信は2023年4月19日、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が前日の18日に国家宇宙開発局を現地指導し、軍事偵察衛星1号機の打ち上げを指示したと報じた。
報道によると、金委員長は、「4月現在、製作を終えた軍事偵察衛星1号機を計画された期日内に打ち上げられるよう、非常設の衛星発射準備委員会を構成して最終準備を急ぐよう指示した。今後も連続で数機の偵察衛星を打ち上げ、情報収集能力を高めるよう求めた」という。
また、金委員長は、偵察衛星について「絶対に放棄できない課業」として、「国家主権と正当防衛権」と主張。米国が原子力空母や戦略爆撃機などを朝鮮半島と周辺地域に常時配備する水準で展開し、韓国を「侵略の前哨基地、戦争火薬庫」にしていると指摘した上で、「我が国を世界的な宇宙強国にすることが党と政府の確固たる立場」と述べた。
北朝鮮メディアは昨年2022年12月の時点で、国家宇宙開発局が偵察衛星開発に向けた「重要実験」を実施したと発表。
打ち上げに向けた「最終関門の工程」だったと主張していた。その根拠として北朝鮮はさかのぼって2016年2月にも、「人工衛星の打ち上げ」と称して事実上の長距離弾道ミサイルを発射した。さらに2021年からの「宇宙開発5か年計画」では、軍事偵察衛星の開発を優先課題に設定している。
このように、北朝鮮は独自路線で有言実行なのである。期日は今月4月以内に完了するとのことなので、早ければ4月下旬から5月初旬あたりに、軍事偵察衛星と称して、発射してくる可能性が高い。もう北朝鮮の軍事挑発は止められないことは今に始まったわけではない。
金委員長は今回の宇宙開発局の現地指導に娘のジュエ氏を同行させている。
また、4月17日にも、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕記念日「光明星節」に合わせて開催された内閣対国防省職員の体育競技を観覧している。
報道によると、幹部たちと祭壇で鑑賞する様子が報道されているのだが、オレンジジュースのような飲み物が用意されているのが目に映った。これまで、会議などで金委員長や幹部にお茶や水は用意されていることがよくあったが、ジュースが用意されているのはこれまでになかったはずである。別の写真では、おかわりなのか、今度は金委員長とジュエ氏に白い飲み物、おそらく乳酸飲料のようなものが用意されていた。
これらの甘い飲み物の用意は、確実に娘のジュエ氏のためであろう。そうかといって、ジュエ氏だけに用意するのは、神格化していく中で、あまりに「お子様」扱いになるので、軍人にも用意したのが面白かった。
もしくは天気が良く、金委員長の娘への愛情、また、コロナ対策で喉を乾燥させないような配慮なのかもしれない。今後もジュエ氏の現地指導への同行はあるだろう。それに伴い、彼女への待遇も合せてみると別の角度からの金委員長の思惑が垣間見れるかもしれない。
(宮塚コリア研究所副代表・國學院大學栃木短期大學兼任講師 宮塚寿美子)
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image by: Salma Bashir Motiwala / Shutterstock.com