北朝鮮のミサイルに対抗。韓国は「核の傘」を明文化できるか

 

北朝鮮のミサイル発射に警戒する国は日本だけではありません。今回の無料メルマガ『キムチパワー』で、韓国在住歴30年を超える日本人著者が、韓米間の「韓国版核の傘」明文化について現状を伝えています。

核には核を。「韓国型核の傘」明文化できるか

韓米が今週予定された首脳会談で、北朝鮮の核脅威に対応した拡張抑制(核の傘)強化案と関連し、「韓国型核共有」水準に匹敵する実質的な対策が盛り込まれた別途の特別文書を採択する案を論議している。

これまで韓米は共同声明を通じて原論的水準の拡張抑制原則を確認してきた。しかし、北朝鮮核の脅威が増大し、別途文書を通じて核の共同企画と実行に対する細部計画を明文化する案を推進している。これと共に、米国の半導体法で制限されていた中国内の韓国半導体工場の先端技術アップグレードを一時的に認めるものの、撤収する際に工場を中国には売却できないよう制限条件を設ける案も交渉中だという。

尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領は韓米同盟70周年を迎え、24日午後、5泊7日の日程で米国に向かった。2011年10月李明博当時の大統領に続き、12年ぶりの国賓訪米だ。李明博元大統領は当時、米議会が韓米自由貿易協定(FTA)批准案を処理した後、国賓訪米し政治・安保中心の韓米同盟を経済にまで拡張した。

尹大統領は12年前よりはるかに深刻化した北朝鮮の核・ミサイル脅威に対抗して拡張抑制強化方案を導き出し、サプライチェーンと先端技術で米国とのパートナーシップを強化するものとみられる。また、ウクライナ戦争などグローバルイシューでも米国と歩調を合わせるという。

尹大統領は出国前日の23日、ワシントンDCで開かれる韓米首脳会談の議題について最終報告を受け、米上下院合同会議の演説文をまとめた。今回の韓米首脳会談の核心議題は、米国の拡張抑制強化だ。大統領室関係者は「北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を通じて米本土を核で攻撃できると威嚇している状況で、韓国国民が米国の核の傘が韓国防衛のために確実に作動すると感じられるよう実効的かつ具体的な方案をホワイトハウスと協議中」と話した。

韓米両国は、韓半島周辺に米核戦力を常時水準に配置することはもちろん、核戦力運用と関連して計画段階から韓国が参加し、韓米合同演習を拡大する案を論議している。核運用問題を話し合う両国間の常設協議体の構成も話し合われているという。

バイデン大統領も尹大統領との首脳会談で、韓国に対する北朝鮮の核攻撃を抑制するという米国の公約を強調するための実質的な措置を約束するだろうとロイター通信が21日(現地時間)報道した。同当局者は「我々は韓国当局者と大衆の期待および拡張抑制約束の現実をすべて満たすことができる十分な措置を取るために強く協力している」とし「バイデン大統領は北朝鮮の挑発、ロシアの武力侵攻、中国の核増強野望に直面しても、韓国に対する支持公約にはいかなる疑いもないことを明確にするために相当な措置を取る」と述べた。

尹大統領とバイデン大統領は昨年5月、ソウルでの韓米首脳会談で、北朝鮮の核攻撃の脅威時に核を含むすべての力量を韓国防衛に投入する米国の拡張抑制公約を再確認した。にもかかわらず、米国が本土に対する北朝鮮の核攻撃の危険を甘受しながら韓国防御のために核戦力を本当に使ってくれるのかという憂慮が一部で提起されてきていた。

核の傘と呼ばれる「拡張抑制」とは、韓国が核の脅威を受ける場合、つまり韓国が北から核攻撃を受けた場合、米国が核の傘やミサイル防衛システム(MD)を稼動し、米国本土並みの抑止力を提供する概念だ。

これまで韓米は共同声明を通じて原論的水準の拡張抑制原則を確認する水準にとどまってきた。しかし今回の訪米で尹大統領とバイデン大統領が首脳会談にて「拡張抑制強化」に合意し、この文案を確定すれば、米国の核報復約束が韓米間の公式文書に初めて明示されることになる。この場合、国賓訪米の3大テーマ(安保同盟・価値同盟・技術同盟)の一つである「安保同盟」の前向きな発展という成果を上げるものとみられる。

尹錫悦政府は発足後、高官級拡張抑制戦略協議体(EDSCG)などを通じて、米国の拡張抑制強化案を議論してきた。特に尹大統領は複数のインタビューで、「米国核資産運用の共同企画(joint planning)、共同実行(jointexecution)案を論議中だ」と明らかにしてきた。大統領室関係者は「今回の訪米で米国が韓国防衛のための核戦力使用を躊躇するんじゃないかという憂慮を払拭できるだろう」と話した。

尹大統領は今回の訪米の際、グローバルイシューに対しても以前より鮮明なメッセージを出すものとみられる。尹大統領は最近、外信とのインタビューでウクライナに対する軍事支援の可能性を示唆し、中国・台湾の緊張問題に関しても「力による現状変更に反対する」という立場を表明し、ロシアと中国が反発している。

しかし大統領室関係者は「尹錫悦政府はグローバル中枢国家として自由、人権など普遍的価値守護のための役割を避けられず、北朝鮮の核脅威に直面した状況で力による現状変更を容認することはできない」と話した。北朝鮮核問題などで朝・中・ロ密着が強化されるだけに、対中ロ関係の安定的管理のためにこれまで取ってきた戦略的曖昧性を捨て、自由民主主義陣営に明確に立つ方向に進むしかないという話だ。

尹大統領は訪米に同行する経済使節団120人余りとともに韓米ビジネスラウンドテーブルなどに参加し、米国とサプライチェーン・先端技術協力を強化する予定だ。大統領室関係者は「韓国企業の不利益可能性が提起されたIRA(インフレ削減法)と半導体法はサプライチェーン・技術同盟強化を通じて対処するだろう」と話した。大統領室は最近浮上した米情報機関の韓国大統領室盗聴疑惑と関連しては「韓米間の情報共有拡大・強化を通じて両国間の信頼に影響がないようにする」と話した。

尹大統領の訪問を控え、ワシントンDCの随所には韓米同盟70周年を記念する広報物が登場した。駐ワシントン韓国文化院建物の外壁に韓米儀仗隊がそれぞれ両国の国旗を持って立っている広告物が掲げられた。大統領室と広告業者のイ・ジェソク研究所が1953年当時、米儀仗隊と2023年の韓国儀仗隊の姿が盛り込まれたイメージを活用して製作した。ホワイトハウス周辺などの主要道路には太極旗と星条旗が並んで掲げられている。

(無料メルマガ『キムチパワー』2023年4月25日号)

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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