プーチンがロシア軍やワグネルよりも恐れる内からの脅威
こういった“ロシア内”からのプレッシャーに、今日プーチンは直面している。むしろ、今日、プーチンにとってはウクライナや欧米以上に内からの脅威の方が身の安全にとって危ないと認識しているかもしれない。それを如実に示すのが、クレムリンを狙ったドローン騒動だ。
5月3日、ロシア政府はクレムリンを狙ったドローン2機を撃墜したと発表した。ロシア政府はプーチンを暗殺しようとしたものだと強く非難し、公開された映像では小型の物体がクレムリン上空を飛行した後、小規模の爆発を起こす様子が映っていた。これを巡っては、ロシアはウクライナや米国が関与していると主張しているが、ウクライナなどはそれを全面的に否定しており、既にお蔵入り状態となっている。
しかし、政治的に考え、これはロシアによる自作自演の可能性が極めて高い。上述のとおり、ウクライナ戦争ではウクライナ軍が優勢で、今後大規模な攻勢を強めるとみられ、今日ゼレンスキー大統領にそれ以上ロシアに軍事的攻撃やけん制を強める政治的意義はない。仮に、ウクライナ軍がドローン攻撃を実施したとなれば、今後はウクライナへの非難の声が国際社会から拡がる可能性(非欧米諸国が中心)もあり、それを実施する意味もない。
一方、ロシアにはメリットがある。上述のようにプーチンとワグネルの関係にも摩擦が顕著となり、ロシア軍は劣勢に立っており、それはロシア国民のプーチンに対する疑念に直結する。今日、プーチンは間違いなく焦っている。要は、自作自演策でも、「俺が暗殺されそうになった。ロシア国民よ敵はひどいのだ。よって我々は戦争に勝利しなければならない」などと国民向けにアピールしなかったのだ。
プーチンが最も恐れる内からの脅威はロシア軍でもワグネルでもない、国民だ。この可能性以外に答えはない。
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