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習近平による「情報統制」が逆効果。中国の若者たちに拡散した“天安門事件の真実”

習近平政権が国民に対して「徹底的な隠蔽」を図る、1989年6月4日に発生した天安門事件。しかしそれが却って裏目に出ているのも事実のようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、当局が強めすぎた統制が、逆に自国の若者たちに天安門事件の真実を知らしめるきっかけとなっている皮肉な状況を紹介。さらに中国共産党が事件に蓋をし続けざるを得ない理由を解説しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年6月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

習近平政権の情報統制が逆効果に。中国の若者に広がる天安門事件の真実

六四前夕 中國抖音下令禁轉「坦克、成龍、天安門」等敏感圖文

6月4日、天安門事件から34年目を迎えました。この時期になると、中国当局は天安門事件を連想させる言葉や写真、映像などが公に出ることを禁止していますが、こうした傾向は習近平政権以降、ますます強まっています。

「自由時報」によると、6月3日、中国のTikTokといわれる「抖音(ドウイン)」は、6月3日から5日の3日間、天安門事件や民主化運動を想起させるような画像や絵文字を掲載しないよう求める内部通達を、動画の運営者やブランドに対して送っていたことが発覚しました。

掲載すべきではない画像や文字としては、戦車、ろうそくを灯す絵文字、天安門事件にまつわる数字、古さを感じさせる写真、ジャッキー・チェンなどの香港タレント、群衆、天安門広場、キャンドルライトなどがリストアップされていました。

ジャッキー・チェンは今ではすっかり中国共産党派ですが、天安門事件当時は民主化運動を支持していたようです。そのため、現在もなお「天安門事件を思い出させる人物」ということになっているとのこと。

ちなみに抖音の運営会社は、TikTokと同じバイトダンス社です。つまり、バイトダンス社は中国では中国共産党の手先として、検閲を強化しているわけです。

アメリカ政府はTikTokを中国当局による情報収集ツールだとして、連邦政府職員の公用端末での使用を禁止しています。また、半数以上の州政府で、州から支給された端末でのアプリ使用を禁止しています。

5月にはモンタナ州が全米で初めてTikTokの運営会社が州内で事業を行うことを全面的に禁止する法律を成立させました。これにより、モンタナ州では一般利用者もTiktokを利用できなくなります。

全米初 「TikTok」事業 全面禁止する法律 モンタナ州で成立

こうした動きに対して、TikTokのCEOはアメリカ議会の公聴会で「中国政府がアメリカの利用者のデータにアクセスしたこともないし、仮に中国政府からデータへのアクセスを求められるようなことがあっても断る」と述べましたが、中国国内では当局のお先棒担ぎをしているくらいですから、まったく信用できません。

解雇されたTikTokの元幹部は、中国共産党がTikTokを通して香港の活動家のデータにアクセスしていることを明らかにし、さらに中国共産党はTikTokの親会社であるバイトダンスの保有するすべてのデータに対して「至高のアクセス権」を持つと暴露しています。加えて、中国共産党の最高のプロパガンダツールだとも言われています。

中国共産党がTikTokから香港の政治活動家のデータ入手の疑い
中国共産党、TikTok全データに「至高のアクセス権」保持か 元従業員が告発

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増える一方の天安門事件をめぐる「敏感な領域」

話を天安門事件に戻しますが、中国当局はこうしたSNSも駆使して人民を監視、統制し、天安門事件をめぐる政府批判などが起こらないように統制しているわけです。

2020年まで毎年6月4日に追悼集会を開いてきた香港も、中国が香港国家安全維持法を施行して一国二制度を事実上廃止してから、追悼集会が開かれることはなくなりました。当局に逮捕されるからです。

天安門事件から34年、香港の追悼集会は今年も開催できず 親中派団体が会場貸し切りバザー 当局も厳戒態勢敷く

それでも今年は、ビクトリア公園で追悼の意を示していた市民1人が香港警察に逮捕され、23人が連行されています。

香港・1人逮捕・23人連行 天安門事件、追悼の市民

一方で、現在の中国の若者は、天安門事件のことを誰からも習わないので、そのようなことがあったことすら知らない人が多くなっています。皮肉なことに、中国当局が89や64といった数字や、前述した戦車の写真や絵などを公に出すことを規制したことから、天安門事件のことを知る若者も少なくないようです。

冒頭の「自由時報」の記事では、「王者栄耀」というオンラインゲームで89と64という数字にまつわる内容が出てこなかったり、キャンドルを叩いたことで永久追放されるといったことが起こったことで、天安門事件のことを知ったという若者の声が掲載されていました。

政府の過剰な統制が、かえって若者たちに天安門事件の事実と、政府当局による隠蔽や弾圧体質を改めて気づかせてしまっているわけです。

昨年の6月3日のことですが、「直播一哥」というオンラインライブ番組で、ホストの李佳琦という男性が、クッキーとケーキでつくった戦車を持ち出したことで、番組は急遽中断、李氏は109日ものあいだ視聴者の前から姿を消すということがありました。

【関連】天安門事件の新たな犠牲者か。消えた中国人インフルエンサーの謎

これを報じた記事では、1992年生まれの李氏は天安門事件のことをまったく知らなかったのだろうと論じています。

六四已過34年 中國社會敏感詞越來越多

その1年前には、中国のネット通販・ソーシャルプラットフォーム「小紅書」がSNSの微博(ウェイボ)上で、「今日は何月何日なのか大声で教えて」というメッセージを投稿しましたが、あいにくその日は6月4日だったため、アカウントが停止となってしまいました。同社はユーザーとの交流のため、そうした質問キャンペーンを定期的に行っていましたが、タイミング悪く、当局に目をつけられてしまったというわけです。

このように、天安門事件をめぐる「敏感な領域」は近年、ますます増えてきています。それはある意味で、中国共産党が自らの正統性について自信を失いつつあることの表れでもあります。経済が落ち込み、前々回でも解説したように若者の失業者が増え、国際社会では西側諸国との対立を深めています。

【関連】若者の失業率が20%超えの中国。習近平が本気で恐れる「天安門事件の再来」

人民の中国共産党への懐疑と不信が高まる可能性があることが習近平政権もわかっているからこそ、言論や思想の統制を強化し、天安門事件に関するタブー事項を増やしているわけです。

ところがむしろそれが、人々に天安門事件の記憶を呼び覚ます結果になっており、今後も、反体制の旗頭となる可能性が高いわけです。禁止すればするほど、人々の心に深く刻まれることになるのは世の常です。

いくら中国共産党が都合の悪い事実を隠蔽しようとしても、天安門事件を消すことはできないのです。

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