就職活動が実を結び「正社員」の座を手にしたものの、どうにも職場が合わないというケース、よく耳にするものです。そんな時、どのような選択をするのが正解と言えるのでしょうか。今回のメルマガ『バク@精神科医の医者バカ話』では、現役の精神科医で内科医としての実績を持つバク先生が、そもそも「一日8時間労働」という正社員の条件が「人間が安心して働ける時間ではない」と指摘。その上で、どうしても働き続けることが厳しいと感じている人へのアドバイスを記しています。
正社員って大変!なるのも辞めるのもどうすんねん問題への個人的意見
皆さんこんにちはバク@精神科医です。今年は多忙なため書籍出版のお話は頂いていたもののお断りして、本業に集中しようとしております。(まぐまぐは書いてますが)
さて今回はこんな感じで「自分のキャパで仕事の量を調整できるなら調整した方がええんちゃうんかな」という話をお届けしようと思います。
仕事は与えられるものという概念
多くの人はサラリーマンとしてお仕事をされているのでは無いでしょうか。自営業と書く人はなんだか特別な存在!な感じを抱いている方もおられるかもしれません。しかしこの働き方は実は最近発生した文化です。
「え!?」と思われそうですが私の母方の祖父を見ても(父方は歯科医なので置いといて)、「福岡から祖母と駆け落ちをして関西まで逃げ(ドラマチックやな)、その後駄菓子屋などを起業し2、3回潰し、ある時たまたま知り合いで[土地を売りたい人]と[土地を買いたい人]が居たため仲介したときに貰った仲介料が駄菓子を売ってる場合じゃねえ!という金額だったために「これからは土地の売買やでぇ!」と不動産会社を設立し、その後バブルに乗って大躍進、おじの代でバブル崩壊&内部の様々な腐敗(家族経営ってこういうのあって怖いですね)、そして色々な事件により廃業」と昔の人は割と自力で起業して成功したり失敗したりしていました。
日本で「サラリーマン」という会社に雇われて給与を貰い労働力を提供する、という働き方が出現したのは1920年代頃と言われており100年程度しか歴史が無いことがわかります。いや、100年は長いだろ!と思われるかもしれませんが、98歳の人からしたらまだ周りには自営業の人の割合の方が多かった時代というとそんな昔じゃ無い感じしませんか?
この記事の著者・バク@精神科医さんのメルマガ
一日8時間労働が当たり前!になったのは何でなのか
ちなみに普通に「正社員の条件」として言われる「一日8時間労働」。
現代の法律では1947年の労働基準法で「一日のMAXは8時間やぞ」と規定があり、最近では別に一日8時間週五じゃなくても正社員でええんやで!という流れが出来てきております。
初めて日本で導入されたのは1919年の川崎造船所(現川崎重工業)と言われており、神戸に「8時間労働発祥之地」という正社員でヒーヒー疲れている人からしたらぶっ壊したくなるような石碑が建てられているそうです。
因みに何で8時間やねんと言いますと、産業革命が原因です。産業革命は18世紀後半から19世紀にかけて起った技術のパラダイムシフトです。今まではコツコツ手作りみたいな状態が石炭を利用したエネルギー革命を皮切りに、綿織物の生産過程が工場化したり~と大規模工場!機械化!!商品の大量生産の実現!!!(利用エネルギーの開発!!!!)みたいな感じで一気に生産力がアップしました。
工場経営者は24時間工場を回したい!と思います。イギリス産業革命などは当時のイギリスが他国との貿易がめっちゃ盛んに行われていた時期なので輸出出来る物は沢山あればあるだけしたい!という状態だったので労働者の人権なんて何も考えずに「24時間=8時間×3交代」という最高率な働き方を着想しました(人が少なかったら12時間×2交代)。
つまり一日8時間労働というのは人間が安心して働ける時間というよりは、工場がフル稼動するのに一番人が死ににくい時間と考える方が妥当ではないかと思います。
実際現在では就労時間については「連続8時間働かせたら駄目!(6時間以上なら45分以上、8時間なら1時間以上休憩を取らせる義務が雇用者にはある)」となっています。
因みに「一週間の労働時間が40時間を超えてはいけない」という規定もあります(時間外労働協定(通称36協定)という例外があります。これは雇用者と半数以上の労働者の加入する労働組合との間で期間を限定したら週40時間以上の労働をしても良いよ!という協定です)。
正社員の条件でよく見る「週5フルタイム(8時間)」ってこうして法律を見たら限界ギリギリじゃねえかよ?ってなりませんか?
この記事の著者・バク@精神科医さんのメルマガ
正社員がしんどいねん!というのはわがままなのか
週五8時間フルタイム!しんどいかー!!!と聞かれて「平気~~」という人と「きっつい!」という人がおられると思います。正直マジでこれは向き不向きと仕事内容による!としか言えません。
根性がハイパーある人であっても、その人が「じっとして単純作業を繰り返すこと」がむちゃくちゃ苦手であればコンビニのお弁当ライン製造で6時間働くことに耐えきれないと思います。全然根性が無い人でも逆に「じっとして単純作業を繰り返すこと」が全然苦では無いタイプなら6時間を余裕でこなせるでしょう(私は脳外科だけは学生時代に見学中にぶっ倒れ、研修医時代も苦手意識が強くて絶対なれないと思っています)。
後はある程度の慣れは絶対必要だろうなぁと4月5月は特に強く思いました。何でかというとその辺りでよく受診に来られる患者さんで「新卒一年目、8時間労働に耐えられない」という主訴の人がまぁまぁ来るからです。
そこで仕事の内容や上司に恵まれていない人は継続が困難になる場合が多いですが、仕事内容は嫌いではないし上司のフォローも結構あるけどこの生活リズムに慣れない!(大学はコロナでリモートばっかりだった)という人は、通院している間に徐々に生活リズムをつかめるようになって2ヶ月目には「治りました」「お大事に!」でお別れする場合もあります。
しかし「朝起きて始業時間に間に合うように出勤し、8時間労働(休憩1時間とは言う物のそれが守られていない労働環境も結構多い)して帰宅」+一人暮らしの場合は家事などを全てこなす(大学まで親元にいた人にはタスクの増え方が尋常では無い増え方になります)、という環境事態に慣れられない人も結構おられます。
でも皆考えるのは「新卒カードを使って入った会社だから辞めたら後が無い!」という不安感です。慣れることが出来れば良いのですが、慣れない環境(適応できない環境)の場合は職場や同僚上司に不満が何も無くても「今の現代社会でオーソドックスになっている正社員の生活サイクル」が無理という人は居て当たり前だと思います。
一応厚労省は「多様性のある正社員」という政策を提案していますが、賛同し実施している大手企業は40社程度のようです。全国で。す、少ない!
そもそも正社員てなんなんだろ?
こうなってきたら皆が憧れる正社員(正規雇用労働者)とその他(非正規雇用労働者)の違いは何なのか?と世間知らずな私は思ったのでこれまた調べることにしました。
結果、ざっくり言えば「正規雇用は契約期限無期限、非正規雇用は契約期限が有限」という大前提しか決まりがないっぽい…??
いやもっとこう社会保険とか年金とか絶対払わないと駄目とかないのか!?と思ったら無かったです(5人以下の会社だとそもそも社保とか作れない)。
まぁ大企業はそういう意味では安心感あるかもしれませんし、公務員も休職時の話を聞いてると手厚い保証といえる気もしますから皆社会的な保証を求めて大きな会社に行こうとするのは当たり前なのかもしれない。でもそこでは多様性のある正社員を取ってることが少ないんだよなぁ、と書いてて思いました。
多様性は例えば「週4勤務で一日5時間」でも正社員にするよ!と会社が言えば正社員の立場になれます。そりゃ勤務時間が短いので給与は低いでしょうが「これが限界!」という人にはこういう働き方の選択肢があるのは良いんじゃ無いかなぁと思います。給与が問題なんですけどね……。
この記事の著者・バク@精神科医さんのメルマガ
どうしても無理な場合
でもそんな求人あんまり無いから皆困ってるんですよね。で、結局スタートの「自営業」の話に戻るんですが……自営業になれば出勤時間も帰る時間も自由にはなります。社長は自分だから。でも「言われるように働いてお給料をもらう」というサラリーマンとは違い自営業は「自力でお金を稼ぐ手段を考えて実現するパワー」が求められます。
今こういう能力が結構失われてるんじゃないかなぁと改めて思います。
全体的に受け身な印象というか。そのせいで「マジでここに勤務継続してたら死んじゃう!」という状態になっても辞められない人も多くいるので最後はその話をして終わりにします。
仕事の辞め方
知ってる人は知っている、知らない人は全然知らないのが仕事の辞め方かもしれません。
別に今働いている職場に問題が無ければそこでずっと働けば良いですし、問題が無いところほど「辞めたいです!」「いいですよ!」がスムーズにすすみます。
つまり「辞めたいです!」「駄目~~!」と言ってくる職場=激やばな会社です。
直接的に「駄目~」ではなくても「いや~今あなたが辞めたら職場が大混乱になるのわかるよねぇ?」とか言ってくる会社も無視しましょう。あなた一人が抜けて回らなくなるような人材雇用しかしてない会社の責任を何で一個人が背負わなきゃならないんですか?必要ないですよマジで――(この記事はメルマガ『バク@精神科医の医者バカ話』2023年6月14日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
この記事の著者・バク@精神科医さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com