身の丈にあった文章を書く
僕には、そうした才能がないので、ことばが粒立って躍るような文章は書けません。内発的な発想が強いわけでもありません。だから、ずっと文章を書くことにはコンプレックスがありました。何かを書こうとすると、社説の薄まったような浅薄な知識のひけらかしになったり、論理展開も矛盾していたりする。背伸びをした文章は、素人のお笑い芸を見るような気恥ずかしさしかありませんでした。
新聞で、やむなくコラムを担当するようになって、気をつけたのが「身の丈にあった文章を書く」ということです。初めて書いた漢字の字源についてのコラムは、知識のなさを何とか埋めていかなくてはなりませんでした。アウトプットのためのインプットを繰り返しました。落語風の仕立てで、わからないことはわからない、と言える登場人物を設定したことで、少し安心できたのです。
肩の力が抜けて「身の丈にあった文章が書ける」ようになったのは、5~6年コラムを書いてからだったと思います。
自分にしか書けないこと、誰にでもわかる文章
幸いなことに、10年ほど週に1本コラムを書き続けることができました。あるとき、
「名文とは、自分にしか書けないことを誰にでもわかる文章で書くことです」と私が週刊朝日時代に井上ひさしさんから教わったことを実践していらっしゃる。
と、「週刊朝日」の元編集長からはがきを頂戴しました。大先輩です。会社で話をしたこともありません。僕が入社したときには、すでに雲の上の人でした──(メルマガ『前田安正の「マジ文アカデミー」』2023年7月25日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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