7月17日から20日までの日程で台湾を訪れ、安倍晋三元首相の銅像への献花や蔡英文総統との面会を果たした安倍昭恵氏。安倍元首相と言えば事あるごとに「台湾有事は日本有事」と口にしていましたが、ではその「有事」をどう回避しようと考えていたのでしょうか。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』では国際政治経済学者の浜田和幸さんが、安倍氏と親交のあったという米国人政治学者が語った、元首相の秘めたる思いを紹介。さらに昭恵夫人にすり寄ってくる人々の思惑を推測しています。
安倍元首相の昭恵夫人と台湾有事
ぶっちゃけ、安倍元首相はあの世でハラハラしながら、昭恵夫人の言動を眺めているに違いありません。
先月、彼女は台湾の高雄にできた故安倍晋三首相の記念碑を訪れました。
日華友好議連のメンバーらが同行し、李登輝元総統の墓前にお参りすると共に、台北では蔡英文総統と1時間余りにわたり、安倍元首相の思い出話に花が咲いたとのこと。
昭恵夫人は時折涙を流しながら、蔡英文総統と「夫の遺志を継ぎ、台湾と日本の信頼関係の強化に努めたい」と意見交換したそうです。
安倍元首相は「台湾有事は日本有事」と危機感を抱いていたことが知られています。
しかし、迫りくる危機をどう回避すべきと考えていたのかは、ほとんど知られていません。
近く発売される『安倍晋三 回顧録:安倍元首相が語らなかった本当のこと』でも、この点については明言されていないようです。
というのも、安倍元首相は安保関連3法案等を通じて日本の防衛力を強化しても、中国による台湾への武力侵攻を防ぐことは難しい、と考えていたからに他なりません。
生前、安倍元首相と親交のあったアメリカの政治学者は「いくら日米が軍事力で連携し、台湾有事を抑止しようとしても無理だ。本当に危機を回避するには台湾を国家承認する国の数を増やすことが最善の道。そうしなければ、中国は内政問題として台湾への圧力をかけ続けるはずだ。日本は国際機関に働きかけ、台湾の加盟する組織を増やすことに尽力すべきだろう。国際社会を味方につけることで、中国の動きをけん制できる。これが安倍元首相の秘めた思いだった」と語っています。
残念ながら、安倍元首相の思いは具体化されず、中国の方が先回りをするかのように、国際機関のトップの座を射止める動きを強める一方です。
現在、台湾と国交を結んでいる国はわずか13か国に減少。
しかも、いずれも国際的な影響力は微弱な小国ばかりです。
これでは中国の動きを食い止めることはできそうにありません。
中国が「台湾問題は内政問題であり、外国の干渉は認められない」と突っぱねることは火を見るよりも明らかなこと。
アメリカのブリンケン国務長官は言うに及ばず、バイデン大統領ですら、中国とは台湾問題で全面対決に臨む考えがないことを言葉の端々に匂わせています。
アメリカの有力なシンクタンク「ランド研究所」の最新のシミュレーションでも「台湾の現状の防衛装備品では中国の軍事侵攻にはお手上げ状態」と分析。
アメリカも日本も同様で、台湾有事を回避せねば、との思いはあっても、具体的な方策には着手できていません。
ぶっちゃけ、昭恵夫人の周りには日本でも台湾でも擦り寄る人士が多いようですが、「安倍元首相の威光」を借りて、自分の選挙を有利に進めたいとの思惑が見て取れます。
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