また、愛国教育の対象として、香港、マカオ、台湾の人々や華僑なども含まれ、「伝統的な文化的アイデンティティを強化し、愛国心の精神を強調し、意識的に民族の団結と国家の連帯を守る」と主張しているとのこと。
少なくとも香港や台湾には自分たちを「中国人である」とみなす人々は減少の一途を辿っています。2020年の調査によれば、台湾で「自分は中国人」だと考えている人はわずか2.4%しかいません。その一方で67%が「自分は台湾人だ」と考えているのです。
力と歴史の捏造によって無理やり「中華民族」を捏造し、多民族をもそのカテゴリーに押し込めようとする意図は明らかです。
草案では、愛国教育は中国共産党が主導し、中央および地方当局は、全国または地域単位で関連業務を「指導、監督、調整」する責任を負うべきであり、教育行政部門のほか、文化・観光、ジャーナリズム・出版、放送、テレビ・ラジオ、映画撮影、インターネット情報、文化財などを担当する部門も関連業務を行うべきであるとしています。つまり、あらゆる教育現場、メディア、社会において愛国教育が展開されるということです。
しかも、そのなかで再び反日教育が強調されることが懸念されています。
香港『星島日報』は、香港の李嘉秋行政長官が25日に発表する施政方針演説の中で、香港政府は愛国教育法に対応し、「愛国教育調整チーム」と「中国文化促進弁公室」を設置し、香港で沿岸防備博物館の再建や「香港抗戦記念館」の設立などの関連業務を行い、香港市民、特に若者の対日抵抗戦争の歴史に対する理解を高めるだろうと報じています。
2020年6月に香港国家安全維持法が施行されて以来、香港で急速に反日教育が行なわれるようになったことについては、過去のメルマガでも解説しました。今回の愛国主義教育法の施行により、さらにその動きが加速し、「香港抗戦記念館」なるデタラメな反日教育基地が作られる可能性すらあるわけです。
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実際、10月25日に講演した香港政府のトップである李家超行政長官は、中国が成立させた愛国主義教育法を念頭に、現在の香港海防博物館を香港抗戦海防博物館に改修して抗日戦争の歴史に重点を置くことを表明しました。戦後すでに約80年が経過しているのに、これから再び反日教育に力を入れるというのは、あまりにも時代錯誤でしょう。
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この法律の適用範囲を台湾にまで広げた意図は明らかです。「台湾統一」後に、同様の反日愛国教育を台湾にも行うことを宣言しているわけです。中国にとって、台湾の親日は非常に苛立たしいものです。台湾で反日気運を高め、なんとか日台を離間させたいと躍起になっています。
ただ、台湾では蒋介石時代にも反日教育が行なわれていましたが、それがほとんど台湾人の親日意識に変化をもたらしませんでした。学校でいくら「日本の非道」が教えられても、家に帰れば日本統治時代の体験者が、「本当の歴史」を語るからです。
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