世論の反発は当然。岸田迷走●●メガネ「厚生労働分野の重点事項案」の酷すぎる中身

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10月末にANNが行った世論調査で、発足以来最低の26.9%となった岸田内閣の支持率。突如口にしだした定額減税を巡る迷走ぶりについに国民も愛想を尽かした形となりましたが、首相のズレっぷりはそれだけに止まらないようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉さんが、「厚生労働分野の重点事項案」を取り上げ、その内容がどれだけ酷いものであるかを解説。世論が反発するのは当然との見解を示しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年10月31日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録の上、10月分のバックナンバーをお求め下さい。

増税減税だけではない。労働政策までズレまくる迷走●●メガネ

岸田政権は、増税かと思えば減税ということでかなり迷走しています。話の流れはこうです。「異次元の子育て対策をすると言っていた」のが最初で、その結果「財務省が財源がないというので増税を呑んだ」わけですが、そうすると「肝心の子育て世代は給付と増税が相殺されてかえって損になる」と批判され、ではということで「この際、臨時に税収増もあったので減税だ」となったわけです。改めて振り返ってみると、かなりヒドい迷走です。

迷走ということでは、厚生労働分野の重点事項案というのも、かなりひどい内容です。具体的には、非正規労働者が働きながらリスキリング(学び直し)を進める新たな職業訓練事業の導入という問題と、デジタル分野の職業訓練を受ける中高年層向けに、最長6カ月のインターンシップという案です。こうした政策も、迷走と言わざるを得ません。

まず、非正規労働者が「働きながらリスキリング(学び直し)を進める」というのが、よく分かりません。2つ意味不明な点があるからです。

1つは、本来のリスキリングというのは、産業内あるいは企業内における技術革新を受けて、現場の人材に実務研修を施し、システムも人も業務内容を改革してゆく際の「学び直し」のことです。例えばですが、航空会社の地上職員向けに予約管理システムのUIを大きく変えたとか、あるいは新世代の利用者が単独で操作できる自動チェックイン機を導入したので、それを支援する地上職員の動きも操作も全く変わるというような場合に、地上職員には研修が必要です。

また、金融機関がフィンテックを推し進めて窓口業務の内容が変化した場合には、相当にまとまった研修が必要になります。また、そのフィンテックのユーザーである企業の経理担当者も、オンラインでの出納業務を新しいUIで実行するには、相当の研修が必要です。また、企業内部の決済や帳簿付けのシステムも変わるわけで、とにかく学び直しが必要になります。

そういった本来のリスキリングというのは、企業が存続するには必要なことです。また全く何も知らない、つまり航空会社の地上職員に必要な知識がゼロだったり、銀行業務や企業の経理の仕事を全く知らない人ではダメなので、過去の経験をベースに研修して、新しい働き方を指せるわけです。これは必要な業務であり、そうした研修で人材のスキルをアップデートできなければ、企業は潰れます。

反対に企業が横並びで改革を拒んで、政治家を巻き込んで「ハンコと紙を維持しよう」などということをやれば、国際競争力を失って国は潰れます。ですから、人間が飯を食べなくては死んでしまうように、企業はリスキリングをしなければ死にます。それをどうして税金を使って補助するのか、意味が全く分かりません。

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