受信料を巻き上げておいてこの有り様か、というのが多くの日本国民の本音ではないだろうか。NHK局員が作成した番組の企画案や、インタビューの取材メモが記された文書が外部に流出したとして、ネット上で大きな話題となっている。X(旧Twitter)で拡散しているのは、1日夕方に同局「首都圏ネットワーク」で放送予定と思われる、ネットにおける誹謗中傷問題を取り上げた企画概要や関係者へのインタビュー内容で、同文書の流出を明かしたのは、虐待や性暴力を受けた女性を支援する団体「Colabo」への批判を展開している「暇空茜」というXアカウント。つまり、中傷を行っていた側に、中傷問題を検証する番組の資料が渡ってしまったということになる。もしもNHK内部に潜む暇空氏の支持者によりこの文書が流出したとなれば、局長のクビが飛ぶレベルの不祥事であることは間違いないだけに、同局サイドのセキュリティ体制に疑問の声も上がっている。1万人を超える職員を抱える公共放送局内で、一体何が起きているのだろうか。
流出した文書に書かれていた内容
朝日新聞の報道によれば、流出したのは関東地方で平日の夕方6時から放送されている「首都圏ネットワーク」に関する文書。「なぜネット上で誹謗中傷を行なうのか~加害者に迫る~」とのタイトルと提案者の名前が記され、「リポートでは、加害者に迫り、なぜネット上のひぼう中傷がなくならないのかを考えたい(原文ママ)」と結ばれる概要や、「加害男性インタ 11月15日」等の構成要素に加え、「12月1日(金)『首都圏ネットワーク』で5分程度」という「放送希望」が書かれたものや、関係者インタビューの「文字起こし」が拡散している。
流出が発覚したのは11月28日。上述のとおり、女性支援団体「Colabo」を批判している暇空茜氏がX上に「タレコミがありました」と投稿したことで明らかになった。
NHK取材メモがネットに流出か 幹部ら「本物では」「重大事案だ」 https://t.co/z3HA3XSaEz
NHKの報道局員が作成した取材の企画案や関連の取材メモなどが記された文書が外部に流出した可能性があることが、複数のNHK関係者への取材でわかった。
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) December 1, 2023
ネット上で指摘される「TBSオウム真理教ビデオ問題」との類似点
この件を受け、ネット上には「TBSオウム真理教ビデオ問題」との類似性を指摘する声も多数上がっている。1989年、TBS『3時にあいましょう』のスタッフが、オウム真理教を批判する弁護士のインタビュー映像を放送前に教団幹部らに視聴させ、その後の弁護士一家殺害事件の引き金になったとして大きな批判を浴びた「事件」だ。
今回のNHKの文書流出事件の深刻さを、以下のような構図で説明するネットユーザーも存在する。
- 宗教団体Aに関する特集番組を制作する
- NHK内の宗教団体Aの信者が放送前に番組関係文書を教団にリークする
- 宗教団体Aが文書をネット上にアップし拡散させる
この短い説明を見るだけでも、事の重大さが理解できると言えよう。事実、朝日新聞の取材に対して複数のNHK関係者は、流出文書について「本物とみられる」と証言、「重大事案だとみて、流出の経路などを調べている」と話しているという。
暇空茜氏から誹謗中傷を受ける「Colabo」代表の反応
暇空茜氏からの中傷被害を訴えている女性支援団体「Colabo」の仁藤夢乃氏は、Xに以下のようにポストしている。
Colabo攻撃に加担し、その後和解した加害者がNHKの取材を受けて明日放送予定だったようですが、その放送の企画書、インタビューの書き起こしと思われるものがネットに一昨日拡散されました。
拡散したのはColaboに関するデマで攻撃を扇動し、1億円以上カンパを集めている暇空茜というアカウントの40代男性。
あってはならないことだと思います。
私も取材を受けることがありますが、こういう文書を見たことはなく、内部のものではないかと思います。公共放送、報道機関としての責任も問われるでしょう。オウム真理教のTBSビデオ問題とも重なる、非常に深刻な問題です。
NHKは徹底調査をし、局内にもし暇アノンがいたのなら(もし文書を(しかも加害者に)流出させたなら懲戒でしょうに、それでも暇空に流してしまう深刻さ)、そのこともしっかり取材して特集を組むべきです。
Colabo攻撃に加担し、その後和解した加害者がNHKの取材を受けて明日放送予定だったようですが、その放送の企画書、インタビューの書き起こしと思われるものがネットに一昨日拡散されました。
拡散したのはColaboに関するデマで攻撃を扇動し、1億円以上カンパを集めている暇空茜というアカウントの40代… pic.twitter.com/vy82ZwlDG3— 仁藤夢乃 Yumeno Nito (@colabo_yumeno) November 30, 2023
局内に潜伏する「暇アノン」の犯行なら、免れない「局長のクビ」
「暇空茜」とはこれまで煽動を繰り返してきたとされるXアカウント。「暇アノン」とは、その「暇空茜」を支持する人たちを揶揄する蔑称で、Qアノンに由来する。繰り返しになるが、仮にNHK局内に潜伏している「暇アノン」が情報を流していたとなれば、本人の懲戒解雇はもちろんのこと、局長の進退問題にまで発展する案件であることは疑いようにない。同局の今後の取材にも大きな悪影響を与えるのも必至だろう。国会で取り上げられることも十分考えられ、そうなった場合、局長の証人喚問も視野に入ってくる。
ネット上には「受信料とって暇アノンに給料出してんのか」「解約するわ」という投稿も多く見られる事態となっており、公共放送局の足元は崩れる寸前と言えよう。
大問題に発展しているNHKの番組文書流出問題。はたして本日の「首都圏ネットワーク」で、この資料に記されていた中傷加害者側のインタビュー内容は放送されるのだろうか?普段は地味な番組「首都圏ネットワーク」に大きな注目が集まっている。